日々3
やっと、地元に戻り、会社に辿り着く。特に違和感もなく、会社の扉を開く。この時から、違和感を感じるようになった。電気をつけていないので、暗くて当たり前なのだが、暗さが違う。薄くなく、濃いくろ。感覚でしか伝えられないが。黒が違うのだ。嫌な感覚の中、電気をつけ、〇〇のいる部屋に入ると、布団の上にあぐら姿の〇〇がいた。
「大丈夫か」と声をかけると、〇〇は振り返りこっちを見る。ぎょろっとした目が印象的だった。こんなに、痩せていたか。こんなに目が出ていたか。すごい違和感を感じた。と同時に、電気をつけているのに、なぜこの部屋は暗いのかと言う感覚もあった。
「なあ、どうしてん。死ぬってなんや。ほんまは、明日まで会議やで。無理言って帰らしてもうたんや」と、明るく声をかけた。
〇〇は、「電話 最後の電話のつもりで」と呟く。
表情と声で、これはあかんやつやな、マジな奴やなと咄嗟に感じた。僕も表情や態度を変え、同じ布団の上に腰をかけ、
「なあ、何があってん」と声をかける。
「最後でした。もう無理です。何をしていいかわかりません。」仕事に行き詰まったように感じた。〇〇とは15年の付き合いだ。何に悩み、何ができないか、よく知っているつもりだ。家族のように付き合ってきた。もともと、おかしなやつだった。周りからも、なぜあの人を可愛がるのかなど言われることも多々あった。でも、僕の考え付かないようなことをいつも考え実行する。周りからは、馬鹿げた発想で、危険な行動であって、幼稚だと言われ、仕事のできないやつと思われていた。周りの連携の会社の人たちからも、よくあんな子雇い続けるよねと言われてきた。でも、〇〇は、とても良い子で、新しい発想を僕に与えてくれる。僕にとっては、必要な人材だった。だから2年前に、一つの部署を任せた。好きなようにしてもいい。出勤時間も自分の決めた時間でいいし、休みも好きにしたらいい。国の鳥の目では見えない、虫の目の世界の苦しみや残虐な日々を少しでも変えることのできる活動ならば、〇〇のやりたいようにやれば良い。と、話していた時の目の輝きを思い出す。部署にも顔を日々出して、悩みを聞いたり、声もかけていた。叱咤激励もしてきた。
ただ、そう言えば、半年前から、雰囲気が変わったと感じたことがあった。なぜか、僕に誰々さんが悪口を言ってます。芳秋さんのことを、周りは理解していない。こんなに社会のために頑張っているのに、陰口ばかり言っている奴らがいる。それも、仲間の人たちで、すごく腹が立ちますなどのことを伝えるようになっていた。僕は、言いたい奴は言っておけばいい。あと、飲み会とかで、芳秋はなーブラックやでとか言ってても、それは酒の席とかやから、気にせんでもいい。仲間のやつが、ほんまに文句あれば、俺に直接言ってくるから、俺のいない時の話を、気にして伝えんでもいいで。と言うことが多くなった。そんなことが多いとたまに僕自身も仲間に
「お前、俺の悪口言うてるらしいな」と冗談ぽく言うこともあって、仲間が
「言うてへんわ。言うならお前に直接いうわ」と返されることもある。言霊とは、とても怖いものだ。何もなくても、その言葉が人生に入り込んでくることがある。気にしなくても、無意識に気にしてしまっていく。そんな中、いつも来ていた仲間数人が、うちの会社に来ないようになっていく。まあ、忙しくなったんだろうと思い、その時は全く気にしていなかったが。
仕事以外で、多くの孤独・孤立の若者達のサポートをしています。みんないい子なのに、社会では・・・。でも、笑顔が少しでもでる場所をと家を貸したりしてます。僕の不思議な話は、みんなには言えないので、ここで消化してみようかと思いました。