推しの概念アイテムとマブ

※文中での扱いがあまりにひどいですが、私はドルガバのデザインは好きだしおしゃれであることは百も承知です。
あくまでセンスが死んでいるクソダサコーデの推しの概念としてご理解の上ご覧ください。



推しの概念アイテムが欲しい。
木曜の午後からそのことで頭がいっぱいになった。
よりにもよってドルガバのDEVOTIONバッグ。
なんでって言われても推し(主人公だが複数ある世界線のひとつの姿なのでアニメの話数にして一話分しか登場しない)がドルガバ着てるから。

新アイコンバッグとして登場してから時間も経っているから認知度は高いはず。
金色や銀色のハート型のモチーフがついている、とってもとってもキュートでグラマラスな印象のバッグ。
できればゴシック系ファッションしてたころに出会いたかった。
さらに言えば思想的にもちょっと悩んだ。
いくら私が見た目だけでプロダクトを選んでいると言っても、「日本人のデザイナーなんかにうちのブランドデザインされたくないから、うちら死んだらブランドも消滅!」(要約)って言ったと知っているブランドとヨウジを一緒に着るのは反骨精神爆発してない?
そこまで世間に対して多方面にキレていないのよ私。
煽り過ぎてて笑ってしまうわ。

でも私の性格上、気になったら試着には行きたいじゃないですか。
推し、十二年後の未来でドルガバ着てるんですよ?
可愛すぎません?
コーデのダサさが十二年ずっと友人たちから生ぬるく見守られてすくすく育った感じしかしない(限界オタクの妄言)。

そんなわけで、いつもの坂井大輔強火担当兼マイキーガチ課金勢マブと一緒に買い物へ。

ドルガバに行く前に、映画(お察し)を観てマブの友人(兼担当)がいるセレクトショップに立ち寄った。

そのショップはドルガバやヴァレンティノのような華やかで官能的なデザインとは対極の、洗練された都会的なシンプルさと細かな職人芸とがマッチした品を取り揃えている。
当然、ドルガバとは相性が悪い。
雑談中、このあとの予定を聞かれた私は検討中のバッグの画像をスマホで検索して、その担当さんに見せた。
これの試着に行くんですよ~とウキウキの気分で。

この店員、すでに何度も顔を合わせていて仲がいいのだが、バッグを見た次の瞬間、私のマブに対してこう言った。

「マブさん! うおとらさんがこのハートついたバッグ買おうとしたら絶対止めてくださいね!? 似合いませんって! いやこれ絶対半年後くらいにいらなくなるバッグですよ! 今テンション上がってるから欲しいって言ってるだけじゃないですか!? やめたほうがいい。それ買うくらいならうちでシェーヌダンクル買ってください(営業)」

私の知らない(知ってる)私のこと分かってる~~~~!笑

これに対する友人の答えも秀逸。

「絶対止めます。この子(私)ドルガバでクソダサコーデ(敢えてダサくする)しようとしてるんですよ!? 私は隣を歩きたくない。リック着てるうおとらが好きだから」

大笑い。

全力で止めにくるじゃん……
もうね、クソダサコーデしようとしてるのがバレててダメだった。
マブは私の推し知ってるから余計に嫌だろうなとは思うよ。
オールバック(推しの髪型)にしないだけマシだと思ってほしい。

しかしテンションが上がっている私、ただでは引き下がらない。

「違うんです聞いてください。私今、推しの相棒と同じ髪型(深めの刈上げツーブロショート)なんですよ。推しの服借りて推しのバッグ持たされている設定で歩きたいんです。だからダサくないとおかしいんですよマッチしてたら変でしょ!」

マッチしてないほうが変だろ。
ダサいコーデに幻想を抱きすぎているとしか思えない。
しかもお店に行く前にマブと二人で八回目の映画鑑賞をしていて、テンションはめちゃめちゃハイ。
お洒落なセレクトショップで泥仕合を繰り広げるのもはばかられる。

マブはさらに追い打ちをかける。
「うおとら、笑い猫の概念アイテム買ってたじゃん。履けなくてオブジェになってるだろ」
Vivienne Westwoodのパイレーツブーツのことだ。
作中のブーツの特徴から特定した品で、勢い購入したものの、履くと痛いのでオブジェになっている。
ちなみに手放す気持ちはない。
バッグはパイレーツブーツの約三倍の価格である。
ちょっと無駄遣いだったなではすまされないのは確かだ。


とりあえず試着してみようということになり、私とマブはドルガバへ。
セレショ店員さんは最後まで思いとどまるよう説得を試みてくれた。
何がお前をそこまでさせるんだ。

ドルガバの店頭にはオンラインにはなかったレースのディヴォーションと、レザーのマトラッセがあった。
どちらもクラッチのように持ちたかったので、ショルダー用のベルトは使わずに手で持たせてもらう。

するとどうだろう。

あれ、似合うな……



絶対に今日の服には合わないぞと思って来たにもかかわらず、なんとなく違和感がなくてうろたえる私。
なんだこれ、全然クソダサコーデにならないぞ……バッグ自体が可愛いのは分かるけど、服とのマッチング最悪のはずなのにそんなに変じゃない……デカいハートも言うほど目立たないしなんだろう、似合う……?

私も困惑したけど、マブが一番困惑していた。
「え、似合ってる……」
みたいな反応。
止めてくれよたのむよ。

私が冷静になるにつれて何故か制止がトーンダウンするマブ。
とりあえず即決するのは躊躇われたため品番を控えてもらい上階のカフェへ。
シャインマスカットのタルトをつつきながら、「予想以上に似合っていて戸惑う」というマブの話を聞いた。

マブは私のファッションもやりたいことも理解してくれているので、彼女の言葉に関しては私もわりあいと素直に聞くことにしている。
彼女の懸念点としては、
・華やかなデザインだけに、飽きそう。
・二次流通に乗せたときの価格が十万を切る。
この二点だった。
そうなんだよな、華やかなものは大好きだけど飽きるのも早い。
私自身の感情や情熱が豊か過ぎて、着てるものに同じテンションを求めていない。
サクレハートは祈りのシンボルだけど、私は特に祈らないし。

さすがの私も冷静になって考えた。
似合っていたよという友人に、「そうだよね、クソダサコーデにならなかったことが一番ショック……」と伝えた私に罪はないと思う。
ドルガバにも罪はない。
罪なのはあまりにも可愛くて人心を惑わしてくる推し……

かくして、私の推し概念アイテム購入検討劇は幕を閉じた。

ところで、私のマブは過去に坂井大輔の匂いと言ってトムフォードの香水二つを買っている。
そして「マイキー君が着てるみたいな白シャツ黒タンク黒サルエルないかな……」と言い出す手合いなので幻覚の濃度は私とどっこいだ。
サンローランの指輪も「サンロー蘭!!!!」くらいのノリでペアで買った(マブは本当に欲しかったものらしいが)。

そんな彼女は最近、劇場版東京リベンジャーズでマイキー役を務めた吉沢亮に心を奪われている。
どれくらいかというと、お亮が使っているからという理由で化粧品をDiorにするくらいである。

世間はこれを「類は友を呼ぶ」と言うのかもしれない。


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