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【アルストロメリア】終わりの美学は悪魔に学んだ【聖飢魔Ⅱ】


終わりの予期


 「シャニマス、多分10年くらいで終わらせるつもりだよね」


 そんな話を友人達と初めてしたのは、確か3rdライブの直後のことだったか。アイドルマスターというコンテンツを10年以上追い続けている友人達の中で、シャニマスは着地点を見据えた展開をしている、というのが当時の共通認識だった。その感覚は今に至るまで変わらず、むしろ確信を覚えるまでになっている。

 友人達とその終わり・・・についての会話の糸口となったものは、今でもはっきり覚えている。GR@DATE WINGシリーズにて発表されたアルストロメリアの楽曲『Anniversary』だ。同シリーズにて発表された他楽曲を聴き比べればわかるが、3年目という発達途上の段階でリリースされるにはあまりにも異質すぎる楽曲、というのが当時の印象だった。
 当初は理解が及ばず、色々な解釈があるけど正解が分からない不思議な楽曲、という印象で3rdライブは終わってしまった。その理解の糸口となるユニットコミュ『アンカーボルトソング』は3rdライブツアーの直後に実装されたとはいえ、それが楽曲に対してのアンサーコミュだったかと言われると首を捻らざるを得ない。

 友人達とウンウン悩みながらも答えは出ず、「なんでアルストの曲なのに『ふたり』なの?」「あなたって誰? 多分ファンに対してなんだろうけど、一対一の描写あったっけ?」などと話を重ねたものだった。

 多分今後のコミュで分かるからいったん保留、と結論付けたその少し後。とある一人の友人が納得してくる答えを提示してきた。

終わりを迎えた悪魔達

 突然だが、皆さんは聖飢魔Ⅱというグループをご存知だろうか。音楽を媒介にして悪魔教を布教するために組織された「教団」であり、黒ミサ(人間界で言うところのライブ)を通じて信者を増やし、地球征服を目論見、活動していたグループだ。
 1999年12月31日に地球征服を完遂したことを宣言し、彼らは魔界に帰還した。本来ノストラダムスの大予言に則り7月に解散予定だったが、人間の従者(人間界で言うところのマネージャー)のうっかりにより仕事を入れ過ぎて12月まで延期した、なんてお茶目なエピソードを持っていたりもするのだが、そんな彼らのラストライブを見た友人が急にこんなLINEを送ってきた。

「聖飢魔Ⅱって、アルストロメリアの未来だ」

 こいつとち狂ったのか、というのが私の最初の感想だった。聖飢魔Ⅱを布教したのは私だったが、まさかそんな感想が返ってくるなど誰が予想出来るのか。

過去に一度として並べられたことがないだろう構図

 その後すぐにその友人と話をするということになり、さてオタクの妄言でも聞いてみるか、と軽く繋げた通話で、しかし私はとんでもない衝撃を受けることになった。

 聖飢魔IIについて『蝋人形の館』という楽曲をご存知の方は多くいることだと思う。しかし聖飢魔IIの主張はあの曲には多くは含まれていない。かの悪魔達は、様々な活動を通して「前を向け」「夢を見ろ」「自分であれ」うたい続けている。
 ラストライブにおいてもそれは変わることなく、むしろ最後に言葉を届ける機会だからこそ、深く胸を打つモノであった。それは特に、アンコール後の各構成員のMCに詰まっている。

「聖飢魔Ⅱは人と違うということ、個性的であるということがどれだけ孤独で辛いことか僕に教えてくれました。
また、人と違うということがどれほど大切なことか、それも教えてくれました」

ルーク篁参謀

「君たちに最後に贈る言葉は『Go Ahead!』だ。 前進あるのみ!」

ライデン湯沢殿下

「この聖飢魔Ⅱというバンドに在籍していたことを誇りに、君たち信者がいたことを誇りに生きていきます」

ゼノン石川和尚

「今日は別れの日じゃない。聖飢魔Ⅱが君たちの心の中で永遠に生き続けることが出来るその出発の日だ」

エース清水長官

「残念なことに聖飢魔IIには新しい年はやってこない。だが諸君達には必ず新しい年がやってくる。明日からは客席の諸君も、舞台の上にいる我々にとっても聖飢魔IIがライバルだ。聖飢魔IIに追いつき、追い越そうと思って生きていかなければ、聖飢魔IIに対して失礼じゃあないか?」

デーモン閣下

 友人に勧める前から長い間、穴が開くほど見返した最高のラストライブだ。特に最後のMCは、私が色々な活動をする上で大きな活力を与えてくれた言葉たちが詰まっている。1999年に終わりを迎えた悪魔達の足跡は、今も心の中に強い爪痕を残している。
 そしてこの言葉たちは、自分の中で不理解のまま滞っていた『Anniversary』に対して、大きく理解を深めてくれたのだ。

 そうか、この曲は終わりを迎えるための曲なのだ、と。

 シャイニーカラーズについて、薄々他アイマスシリーズとは違う何かを感じ取っていたが、そう気づいた瞬間に呆然としてしまったのを今でも覚えている。既に終わったものが、終わりに向かっていくコンテンツへのヒントになるというのは、なるほど道理だ。
 『アンカーボルトソング』を読んだ友人と、聖飢魔Ⅱからヒントを得たという連絡が来た後にしたやり取りが、これだ。

ほとんど暗号みたいなやり取り

 他数人、友人に聖飢魔Ⅱの映像を見せてみたが、皆同じような反応だった。アルストロメリアの理解が聖飢魔Ⅱで深まるなんて、とんでもない交通事故だ。

YOUR MY / Love Letterという答え合わせ

 そんなやり取りがあって1年弱。今も語り継がれる名作コミュ『YOUR MY/Love Letter』が実装された。このコミュがどういうものだったかはみなさんご存じだろうし、語り手も多く見受けられるので、私から言葉を発する必要もないだろう。
 私がこのコミュを反芻してしばらくして、やはり思い出したのは聖飢魔Ⅱのことだった。『すべての名もなき人たちへ』という文言、それは閣下が口にした「明日からは客席の諸君も、舞台の上にいる我々にとっても」という文言に他ならない。誰しもが誰かにとっての名もなき人であり、しかしアルストロメリアは、聖飢魔Ⅱは誰かにとって特別なものなのだ。例えそれが存在しない世の中になったとしても、胸を張って生きていかなければならない。


 アルストロメリアが、シャイニーカラーズがいつか終わる時、かの悪魔達と同じように、世界で一番優しい傷跡を、深く深く刻み込んでくれるのだろうと、私は想いを馳せずにはいられないのだ。


蛇足

 聖飢魔Ⅱラストライブのアンコール『EL.DORADO』を是非MC込みで聴いてほしいのはもちろんのことだが、個人的に聴いてみて欲しい曲を何曲かリストアップしてみる。
 THE ヘヴィメタル、というものよりも比較的聴きやすく、かつ歌詞の好きなものをチョイスしてみたので、興味があれば是非聴いてくれるととても嬉しい。


 ストレイライトでカバーしてくれ。マジで。上記の友人が初聴時に撃ち抜かれた、キャッチ―かつ実に聖飢魔Ⅱらしい一曲。
 落ちサビの美しすぎるハーモニーは必聴。

 開始3秒で心を掴めるポテンシャルを秘めている一曲。多くは語らないので、聴いてほしい。


 実は聖飢魔Ⅱ、ヘヴィメタルバンドにして紅白出場という快挙を成し得ている。『白い奇蹟』はその時に披露した一曲。閣下の悪魔的ボーカルの上手さが存分に発揮されている。


 「個性というものが苦しく、しかし大事なものである」とラストライブのMCで述べたルーク篁参謀の作詞作曲。
 歌詞が強い。本当に強い。

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