マガジンのカバー画像

怪談 超ショート あっという間に読める恐怖の物語。

483
実体験、体験者からの伝聞、創作など、様々な怪奇と不思議な短編をまとめました。 #ショートショート #短編 #怪談 #不思議 #恐怖
運営しているクリエイター

2022年7月の記事一覧

「緑の髪」・・・ショート怪談。ぞっとしてほっこりして、馬鹿馬鹿しく。

「昔昔のことだ。奥州の国境に、留吉という正直者のお百姓さんが住んでいた。 ある日、留吉は蕨採りの帰り道に迷ってしまった。 どうやっても帰り道が分からず、日も傾いてくる。 歩き疲れてしまった留吉は、杉林の中にある小さなお堂で朝まで過ごす事にした。お堂の中には、古びて形もよく分からなくなり床から生えたツタが絡みついている石像がたった一つ置かれているだけだった。 『これは宿賃という訳ではございませんが、ほんの気持ちでごぜえます』 留吉はそう言って、採ったばかりの蕨を一束、その石

R怪談「便利なレシピサイト」・・・超ショートホラー。選択を後悔した時必要になるレシピとは。

あるレシピサイトでエイプリルフールに発表された調理法は 料理の方法を一行も書いていないのに、世界各地で大人気になった。 現在、元のサイトは閉鎖されているが、そのコピーは今もネット上に存在しているという。 タイトルは、「選択を後悔した時、必要になるレシピ」 内容は、こんな感じだ。 「選択を後悔した時、必要になるレシピ」 ①まず自分の体力で運べる重さを知りましょう。 あなたは、お米の5キロ袋を何袋まで持てますか? ②次は、相手の体重を確認しましょう。 さりげなく最近痩せた

じっくりと言葉の向こう側を考えると・・・13

「あの新聞」・・・超ショート怪談。読むと不幸になる新聞。改訂版。 いつも明るい先輩が、暗い顔をして出社してきた。 「どうしたんですか? 朝から疲れてるみたいですよ」 「ああ。今朝、恐ろしい新聞を読んでしまったんだ」 「恐ろしい新聞? 何か怖い記事でも載っていたんですか」 「そうだ。恐ろしすぎる。あんなもの見なければ良かった。 このままでは皆が不幸になるのに、誰もそれを止めようとしない、 そして結局は何もかも奪われてしまう、という記事だ」 「それって、強盗とか事故と

「働けよ!」・・・あっという間に読めるショート怪談。R。

『働けよ』 いつもふんぞり返って 偉そうに顎で人を使う課長が 「サボってないで働けよ!」 と言ったきり、真っ青になり、 机に突っ伏して、仕事に没頭し始めた。 どうしたんだろうと思っていたら・・・ 霊感があるという同僚が 「彼女まだ働きたいんだな・・・」 と呟いた。 先月過労で亡くなった女子社員が 天井から逆さづりにぶら下がり、 長い髪を操り人形の糸のように垂らして 課長の体を動かしているらしい。    おわり #オフィス #天井 #過労死 #怪談 #ショー

「百年峠」 ラヂオつくばバージョン  方言編

久しぶりに、不思議な話をアップします。 この物語は、ラヂオつくばの朗読コーナーで昨日放送されたものに 一部修正したものです。どうぞお楽しみください。 『百年峠』 こりゃあもう、はっきりとは分かんねえけど、 明治のご一新の100年も前ぇの話だぁ。 夏前だっつうに、ひっでえ日照り続きで たんぼもはだけも、からっからに乾いちまってよお。 いっつもなら、カエルや芋虫を狙って飛んでくるトンビや鷹たちもよぉ、 木の陰から一歩も出ようとしねえ。 そんなのに、働きもんの平助のやつぁあ

「待ち合わせはダメよ」・・・超ショート怪談。カフェで待ち合わせている女の子が。

彼氏と初めての旅行。 荷物を揃えてオープンテラスのカフェで彼を待っていたら、 季節外れの黒いケープを着た白髪の老人が話しかけてきた。 「待ち合わせかい」 「ええ」 「悪いことは言わない。待つのはおよしなさい」 「変な事言わないでください」 少し語気を荒げて行ったが、老人は引き下がらなかった。 「私は霊能者だ。あなたには、危険な影が近寄っている。 待ち合わせはやめなさい」 アタシはちょっとドキッとした。 確かに彼は時々手が出る。出るけど、その後は優しいし、危険な影