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怪談 超ショート あっという間に読める恐怖の物語。

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実体験、体験者からの伝聞、創作など、様々な怪奇と不思議な短編をまとめました。 #ショートショート #短編 #怪談 #不思議 #恐怖
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2021年6月の記事一覧

「七回忌のザリガニ」・・・父と従兄と息子と私。

「ザリガニ釣りに行くぞ!」 その夏、3歳上の従兄のマサシが誘いに来ると、私の気分は落ち込んだ。 決して彼が嫌いだったわけではない。 生粋の運動オンチの私は、何度やってもザリガニを上手く釣れないからだ。 下手クソな私を笑うためだったのか、 逆に鍛えようとしていたのか、 翌月、マサシは交通事故で亡くなってしまったため、 今となっては確かめようもない。 ただ、父が私以上にマサシを可愛がっていたことは鮮明に覚えている。 × × × 父の七回忌で、久しぶりに故郷の生家に帰っ

「こごえ滝」・・・約束を守れなかった男は。

東北のほとんど人の入らない、人里離れた山の中に、こごえ滝という 小さな滝がある。 落ち武者が追っ手に見つからないように、小声で話したとか、 ここで話した悪口はなぜか下の村人たちに伝わってしまうので 小声で話せとか、いくつか名前の由来は伝わっているようだが、 どれも確かなものはない。 ある日、嘉助という男が、渓谷で魚釣りをしている時、 腰に挿していた小刀を、こごえ滝の滝つぼに落としてしまった。 小刀を拾うため、嘉助が滝つぼに飛び込むと そこにはこの世のものとは思えない美し

「正しき風の噂」・・・伝えたのは誰だ。

『正しき風の噂』   夕陽を背負うように港から続く長い道を歩いていくと、 古い風車の村にたどり着く。 その村の外れには、17世紀の面影を残す三連の巨大な風車が立ち並び、 休むことなく、ゆっくりと羽を動かしている。 「古ぼけた遺物と侮ってはいかんぞ。 この風車はな、子を育て、芸術を生み出し、村を救ったのじゃ」 と、村のの長老たちは語る。 何百年も前からこの土地に住む者たちは風車を利用していた。 風が風車を回し、その力が歯車に伝わり石臼を回す。 石臼は、穀物を砕いてパン

その後の「奇跡を実感した瞬間」・・・さらに不思議なことが。

先日、脳出血で倒れて長期入院していた先輩が、 意識不明ながらわずかに回復の兆しが見えたことを書きましたが、 その前後でちょっと不思議な出来事がありました。 私の友人に、やはりその先輩に世話になっていた人がいたのですが、 ある日、その人が生まれて初めてその先輩の夢を見たのです。 夢では、 いつものように会社に行くと、普段通りにその先輩が会社のデスクにいて 挨拶をしてくるのです。 「あれ? 入院してたんじゃないんですか?」 と聞くと、「何言ってんの?」とばかりに先輩は大き

「十六夜に銀時計が笑う(ラヂオつくば書き下ろし版)」・・・本日生放送で朗読されます。

本日、6月15日(火曜日)17時から生放送の、ラヂオつくば「つくば You've got 84.2(発信chu)!(つくば ゆうがたはっしんちゅう)」の中で、は私の短編が朗読されます。 朗読は、17時40分くらいからの予定です。 つくば以外にお住まいの方は、 PCなら「サイマル放送」で「ラヂオつくば」を選択して音声マークをクリック。 スマホなら「myTuner Radio」というアプリで、「ラヂオつくば」を選択すると聞けます。 お時間とご興味がある方は、是非。よろしくお願い

「斜めと歪み」・・・本当に怖いのはどっち?

『斜めと歪み』  作 夢乃玉堂 「又斜めになってるわよ!ちゃんと見てるの?             よそ見してると落ちるわよ」 脚立の上でバランスを取りながらポスターを貼っている翔太に、私は叫んだ。 「細かすぎるよユガミンは。 少し斜めになってるくらいの方が、カッコ良くないか。 斜めの危うさこそが人を惹きつけるって、 それがピサの斜塔の魅力だってこの前言ったろう」 「ピサはピサ、あなたはあなた、生徒会は生徒会。 生徒会のポスターは真っ直ぐじゃないとマズいでしょ!」

「本所七不思議」がなぜ本所なのか?」

今回の考察は、両国のシアターXで行われた 「ろびぃ寄席 『本所七不思議』について 『落語』」から、インスパイアされて記しています。 ろびぃ寄席は、シアターXで年に一度定期的に行われています。 興味のある方は、是非、両国のシアターXまで。 『「本所七不思議」がなぜ本所だけだったのか?』 置いてけ堀、足洗い屋敷、片葉の葦などで知られる本所七不思議。 江戸時代に伝えられた都市伝説の一つだ。 だが、私はこの七不思議がなぜ「本所」七不思議なのか、気になっていた。 麻布、千住、番