JASRACの包括契約の不正確な分配については、概ねご批判の通りと考えます

生意気な話をする、の28日目です。GWが終わって日々の業務に戻られる方、体の慣らし運転から始めてくださいませ。本日はJASRAC関係で包括契約等のお金の話をば。

批判として「正確な分配が行われていない」と「権利者に還元していない」の2点は非常に良く上がります。前者については少々込み入った話になりますので先に後者から片づけたいと思います。

JASRACが権利者にいくら還元しているかについては情報公開のページが有りますのでそちらを参照されてください。9割還元されています。会計監査を経たものの開示ですのでこれ以上の信頼性を求めるのは難しいかと思います。
https://www.jasrac.or.jp/profile/disclose/index.html

不透明と言う批判もありますが、会計報告をさらに詳細にとなるとそれぞれのアーティストの振込先まで開示することになります。銀行口座については個人情報保護法の対象ですのでこれ以上の透明さというものは無理です。

関連して社員や役員の給料が高いというお話ですが、知的財産を取り扱う職業としては平均です。加えて人から嫌われる仕事、やりたがらない仕事はお給料が高くて当たり前ですので需要と供給のバランスとしても妥当かと思います。

さてお金の流れが不透明なものと言えば包括契約ですが、お店等でBGMを使用した際、使用した楽曲のアーティストに還元されるのなら問題ないが、包括では申告が無いので正確な判断が出来ず、別のアーティストの元に流れるのは納得がいかないというご意見があります。

これは実際その通りです。利用楽曲の申告をしませんから当然正確な把握は出来ませんし、統計に依存した割合算出ですので実態との剥離はあります。批判としては妥当なもので、だからJASRACが嫌いというのも個人的には理解します。ただ、お店側がこれを理由に契約を結ばないのはまた筋が違います。

予備知識でもご紹介しましたが、JASRACの方針を決めているのは信託している作詞家、作曲家で統計による配分の漏れについて是としているのは彼ら信託者です。もちろん集団による意思決定ですので個々では不満を持たれている方もおられると思いますが、信託者と言う集団の意思としては統計の配分で漏れても構わないとして合意が成立しています。これに不満であれば信託者と言う集団の意思として否定の意見を集め、意思決定を覆す必要が有ります。
https://www.jasrac.or.jp/profile/outline/decision.html

JASRACと信託者の当事者間で合意が成立している「統計による配分」に対して、利用した側が「統計による配分」を理由に支払いを拒否する点については違和感を禁じえません。ファンキー末吉氏の裁判はこれに該当しますがこちらについてはまた後日。

JASRAC側も包括契約の不透明さについては改善の取り組みを行っていまして、サンプリング方式をやめ全曲報告に切り替える方針を発表しています。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190414-00009508-bengocom-soci

一応現在でもライブハウスでの演奏については報告を受け付けており、ライブハウスから報告の有った物は反映する仕組みになっています。丁度漏れた実例として初恋サイダーの作曲者しほりさんのものが挙げられます。
https://togetter.com/li/863356

一応この話は続きがありまして、2015年からライブハウス等からネットでの利用報告を受け付けています。ただ多くのライブハウスが利用楽曲の申請をしていないとのことですので、少なくとも2015年以降のライブハウスでの演奏が不正確な部分に関しては一定ライブハウス側にも責任を求める形になるかと思います。

店舗などでの包括契約については今後も統計による分配になりますので当面漏れは続くことになるかと思います。正確にやろうと思うとお店側の日々の工数が跳ね上がりますし、お店側の工数を今のままで正確にとなりますとなかなか難しく、現状の技術的には流れている楽曲がなんであるかを正確に判断できるAI等は、一応有りますが制度に難が有ります。となると人力しかなく、JASRAC側がどの曲を聞いても即座に何の曲かを答えられる社員を、日本全国すべての契約店舗に派遣する必要が出てきます。その人件費は利用者側に跳ね返りますから年間最低でも250万、教育費や予備人員などを考慮するとそれこそ青天井で現実的とは言えません。この工数の問題は、利用者側から申告してくださいという現状の仕組みについても同様の事が言えます。人を一人配置するよりは、利用者側から申告してもらった方がコストは下がりますので。

なお、実は一曲毎の契約も受け付けているので、どちらを結ぶかは店舗側の経営判断かと思います。もちろん、工数の都合で包括契約を結んだ上でこの問題点を指摘するのは正当な批判だと思いますので、それを否定するものではありません。

本日は以上です。前提知識についてはご説明できたと思うので、明日はファンキーさんとJASRACの裁判について取り組みたいと思います。ここまで全部前振りです。7/19にライブやったりします。もしよかったらtwitterのフォロー、noteのご支援等頂けましたら幸いです。有難うございました!



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