【MTG】ドレッジのすゝめ ~ドレッジの「ジ」、実践篇~

Magic : the Gathering(以下マジック)の『ドレッジ』というデッキについての記事で、第五回です。
前回の記事では、ドレッジデッキに採用されるテーマや能力について紹介した。


今回はこれまでの記事の締め括りとして実際にドレッジを使う上でのプレイング(判断や小技)について話したい。
なお、この記事はドレッジ初心者にもわかりやすいように心がけて書いているが、もし不明瞭であったり不親切な記述があればご指摘いただきたい。

※以下、特筆しない限り「ドレッジ」は「ドレッジデッキ」を指す


■ドレッジの仕方について

もともと「ドレッジ」は「発掘」能力を使ったデッキを指していたが、昨今は「発掘」を用いないデッキでもそう呼ばれることがある。
恐らくこれは、発掘の無い環境の墓地活用デッキが「ドレッジ」の名を冠し、そして活躍してきた結果、ドレッジが戦略として認識されるようになったからだと言える。

そんなドレッジの戦略については過去に解説したが、その戦略を支える「墓地にカードを置く行動の違い」によって、デッキタイプを便宜上2種類に分けたい。

ドロードレッジ
「発掘」能力を使った最もポピュラーなもの
ミルドレッジ
ライブラリー破壊系のカードを使うもの

今回の記事ではドロードレッジを中心に扱う。ミルドレッジは《復讐蔦》を採用するデッキになりやすく、ドロードレッジとは戦略も採用カードもかなり異なるため、この記事ではあまり触れない。

また、ドロードレッジのマナ型、マナレス型については区別せずに扱い、《暗黒の深部》型へのアグレッシブサイドボードでの変形などは考慮しない。


■マリガン基準

ドレッジの戦略において《Bazaar of Baghdad(以下バザール)》は必須の存在である。これが無い初手は余程のことが無い限りキープしない。筆者は二度だけバザール無しハンドをキープしたことがあるが、その時の初手枚数は0枚と1枚だった。余程運がなかったのだ
これは以前のマリガンルール(いわゆるバンクーバーマリガン)での話だが、これぐらいのことが無いとバザール無しではキープしない。

なお、現在のマリガンルール下での初手バザールの確率についてはArrow氏が詳細に計算した記事をあげられているのでそちらを参照あれ。

□メイン戦

・先手
メインの先手ではバザールがあれば大抵キープする。だが、マリガンを検討する手札はよくある。
具体的には、《ナルコメーバ》が3枚以上あるときや、墓地に置きたいカードが1枚も無いとき、「発掘」カードが1枚もない、それ以外の戦略もないときだ。

マリガンを検討する手札とは言ったが、実際にマリガンすることはほぼ無い。結局のところバザールのドローによって必要なカードを見つけられるからだ。
ただ、例のようにナルコメーバが3枚以上ある手札の場合はプレイングの難度(後述)が上がることと勝率が下がることは間違いない。これは筆者の経験則だが、ナルコメーバがめくれるからドレッジは強い。仮にナルコメーバも《イチョリッド》も出ないまま2ターンをバザールの発掘なし起動だけで終えたとするならデッキの持つテンポアドバンテージを大きく失うことになるので、ブン回らないドレッジに慣れていないならマリガンしたほうがいいだろう。

※「それ以外の戦略」とは、発掘以外の戦略のことで、ほぼ《虚ろな者》単体を指す。

・後手
後手の場合もバザールは必須なので、これが無い初手はまずマリガンである。
また、ヴィンテージ環境は高速かつ凶悪なカードやコンボが多数存在するので、先手の場合よりも《意志の力》や《否定の力》、《精神的つまずき》の価値が上がる。それ以外は先手の場合とほぼ変わらない。
他に注意すべきは、最初のドローでナルコメーバを引かないように祈ること。


□サイド戦

ドレッジは『メイン最強』であるがゆえに、他のデッキはサイドボードに8枚程度のドレッジ対策を用意している。つまり、サイド戦のドレッジはブン回りの初手をキープしても封殺されうるため、必然的にドレッジのキープ基準も厳しくなる。
なお、この項では対戦相手のデッキタイプを限定しない。

・最低ライン
サイド戦も先手後手に関わらずバザールは必須である。
次にサイドボードから投入した対策カードへの対策カードがあるか、あるいは打ち消し呪文が打てるか。
ドレッジの戦略について、「ドレッジは2-1でのマッチ勝利を目指している」と説明したが、サイド戦の1本目か2本目かでもマリガン基準が変わる。そのため、サイド1本目では、相手の採用しているドレッジ対策カードの種類を見る必要がある。

・サイド戦1本目
メイン戦を取っているなら多少は緩くキープできる。具体的には、対策カードはあるがピッチコストが無かったり、対策カードが多くドレッジの動きが弱い場合など。メイン戦を落としているなら対策と強い動きが揃うことを祈る
繰り返すが、サイド戦1本目は相手の対策カードや対ドレッジの練度を確認することがマッチ上の戦略であるため、ゲームに勝利できなくともそこまで問題はなく、勝利できないことも多い。
ゲームに勝利できない事情として、サイド戦1本目は後手になりやすいうえに、相手の対策カードへの対策を外している場合がある。例えば、《封じ込める僧侶》対策に《不快な群れ》をサイドイン(またはキープ)したが、相手の採用している対策カードが《虚空の力線》と《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》だった場合などだ。

以上を踏まえ、サイド1本目のキープ価値の高いカードは以下のようになる。

《Bazaar of Baghdad》
《意志の力》or《精神的つまずき》or《否定の力》
《虚ろな者》
《活性の力》or《不快な群れ》
ブルーカウント
《よろめく殻》
相手のデッキ対策となるカード

もし先手なら、打ち消しの部分がイチョリッドや墓トロールなどのブン回りが期待できるものでもよい。

・サイド戦2本目
サイド戦2本目は1本目とは逆に先手になりやすい。キープについては、サイド戦1本目で相手のドレッジ対策が判明しているなら、当然だがその対策カードへの対策ができるカードの価値が高い。まずはドレッジ対策カードのうち頻出するカードを順にピックし、それぞれへ有効な対策カードを紹介する。
・《虚空の力線》
端的に最も強力な墓地対策になりうるカード。唱えられることはおよそ無くゲーム開始時に設置されるため、《活性の力》や《自然の要求》、《薄れ馬》などの破壊によって対策する。
・《封じ込める僧侶》
イチョリッドやナルコメーバを無力化するクリーチャー。《意志の力》による打ち消しか、《不快な群れ》《闇の旋動》《Contagion》による除去で対策する。また、イチョリッドやナルコメーバを戦場に出すことは任意なため、僧侶がいる場合は墓地に残す。
・《墓掘りの檻》
こちらも僧侶と同じくセルフリアニメイトを制限し、さらに呪文のフラッシュバックをも禁じてくる。アーティファクトの置物なので《活性の力》、《自然の要求》、《古えの遺恨》、《鋳塊かじり》など対策できるカードが多い。また、点数で見たマナコストが1なため《精神的つまずき》で打ち消せる。
・《貪欲な罠》
墓地に3枚以上カードを置いたターンに0マナで唱えられるインスタント。バザールを起動するとほぼ確実に3枚以上置かれるため、非常に打たれやすい。《陰謀団式療法》や《暴露》などで捨てさせるか、《意志の力》などで打ち消す、または《神聖の力線》によって対象に取らせないようにする。
・《トーモッドの墓所》
0マナのアーティファクト。戦場にあるだけでは何もしないが、タップと生け贄のコストで墓地のカードを全て追放する。《墓掘りの檻》同様破壊可能だが、その際に能力を起動される。
・《The Tabernacle at Pendrell Vale》
クリーチャーの維持にタキシングする土地。
《不毛の大地》や《露天鉱床》で破壊する。 
・《ボジューカの沼》
ETB能力で墓地のカード追放する土地。能力を回避することは不可能なので、併用される《輪作》は打ち消す。
・《アゾリウスの造反者、ラヴィニア》
ピッチスペル全てが封じられるが墓地対策ではない。クリーチャーである《甦る死滅都市、ホガーク》や0マナで唱えた《虚ろな者》も打ち消される。ドレッジにはマナを使うカードがほとんど採用されないため、打ち消すか捨てさせる以外では対処できない。
・《死儀礼のシャーマン》
《精神的つまずき》かクリーチャー除去で対処する。能力では1ターンに1枚ずつしか対策されないため、強力ではあるが脅威度は低い。複数登場する場合は除去する。
・《漁る軟泥》
死儀礼と違い、カードタイプを問わず追放してくる。イチョリッドやナルコメーバなどクリーチャーが追放されるとサイズもあがるためマイナス修正除去では対処が難しくなる。クリーチャーなため、《否定の力》では打ち消せない。
・《夢を引き裂く者、アショク》
遭遇率は低いが対処しづらいプレインズウォーカー。ゲーム中はクリーチャーによる攻撃以外で対処は難しく、その能力からイチョリッドなどにも強い。1ターン目に出されるとかなり厳しい。
・《露天鉱床》《不毛の大地》
バザールを破壊してくる土地。ドレッジにとってバザールは墓地を増やすエンジンであるだけでなく、対策カードを探すための命綱でもある。土地であるため対策は特になく、2枚目以降のバザールを引くか《石化した原野》などで回収するしかない。
・《真髄の針》
バザールを起動できなくするアーティファクト。1マナなので《精神的つまずき》をあてられる。

これら以外にも《異端聖戦士、サリア》や《スレイベンの守護者、サリア》、《イクスリッドの看守》、《魔術遠眼鏡》、《抵抗の宝球》、《歩行バリスタ》などドレッジ対策として有効なカードは多い。これらを踏まえ、サイド2戦目においてキープ価値の高いカードは以下のようになる。

《Bazaar of Baghdad》
《意志の力》or《精神的つまずき》or《否定の力》
《虚ろな者》
ブルーカウント
対策対策となるカード
相手のデッキ対策となるカード

見ての通りサイド戦のドレッジのキープは非常に難しい。バザールさえあればあと2枚のカードを見られるので大抵はバザールとテキトーな組み合わせで妥協するが、相手がコンボデッキの場合や不利なデッキの場合はダブルマリガンまで厳しく追ったほうがいい。

・まとめ
サイド戦において打ち消しや除去は重要であるが、それ以上に《虚ろな者》が重要になりやすい。サイド戦では必然的に多数の対策カードを乗り越える必要があり、かつ勝利手段が必要なのである。
以前にも述べた通り、ドレッジの勝利手段はビートダウンである。
ドレッジ対策への対策だけでは勝てず、ドレッジ対策にもっともひっかかりづらいのが《虚ろな者》なのである。
サイド戦のキープに慣れないうちは《虚ろな者》をキープ基準にするといいだろう。


■《血清の粉末》

ドレッジに採用される特徴的なカードとして、《血清の粉末》が挙げられる。これは、ゲーム開始前のマリガンチェック中に機能する能力を持っているが、ときどき挙動を知らないプレイヤーがいるので解説しておく。

簡単に説明すると、マリガン決定前に手札からこのカードを公開し手札全てを追放することで、同じ枚数を新たにライブラリーから引き直しゲーム開始時の手札にできるカードである。
エルドレインの王権現在のマリガンルールではマリガン回数に関わらず常に7枚引き、そのうちマリガン回数分のカードをライブラリーの下に戻してゲーム開始時の手札とするので、1回目のマリガンで粉末を引き効果を使用する場合はまずカードを1枚ライブラリーに戻し、その後手札から粉末を公開し手札を追放後にライブラリーの上から6枚のカードを引く。粉末の効果で引き直した手札にまた粉末がある場合もその粉末の効果を使用できる。

使用時に注意することとして、追放領域は公開情報であるため何を追放したかが対戦相手にも確認できる。そのため、例えばナルコメーバが3枚追放されたりするとデッキの脅威度が下がっていることも伝わるので、ドレッジのデッキとしての強度に関わるような粉マリガンや、サイドカードを多数追放するような場合は粉に頼らず通常のマリガンを選択するほうがいい。


■プレイングにおける小技

・想起
ドレッジは能力の誘発が多いため、スタックの積み方が重要である。例えば《虚空の力線》を《薄れ馬》で破壊する場合、
・《薄れ馬》を想起コストで唱える
・能力を「生け贄」→「破壊」の順に積む
・破壊の解決後、バザールを起動する
・バザールの能力で手札から《黄泉からの橋》を捨てる
・生け贄を解決し、橋の能力でゾンビトークンを出す
こうすればゾンビトークン1体を無駄なく生成できる。これは《真髄の針》を《鋳塊かじり》で破壊する場合も同様である。
・上陸
《恐血鬼》の上陸能力が誘発した場合、アンタップ状態のバザールがあるならその能力を起動したほうがよい。それは《恐血鬼》の復帰に《秘蔵の縫合体》を合わせるためである。
また、土地にも発掘を持つ《ダクムーアの回収場》があるので、《恐血鬼》の復活タイミングは比較的任意に決められる。
・発掘
発掘はドローを置換する能力である。本来の目的(おそらく開発時の想定)としては同じカードを何度も再利用できるという点にあるはずであり、ドレッジにおいてその用途も十分役に立つ。
例えば手札に《活性の力》や《不快な群れ》がありそのピッチコストとなるカードが無い場合、《よろめく殻》や《臭い草のインプ》、《ゴルガリの墓トロール》を手札に戻すことでコストを確保できる。特に殻は黒でもあり緑でもあるので、例の2種類どちらのコストにも充てられる。
他にも《ダクムーアの回収場》は発掘数が「2」なため《貪欲な罠》のコスト低減条件を達成しない。
・ブルーカウント
ドレッジに採用される打ち消し呪文はヴィンテージ環境の中では比較的多い。そのため、相応のブルーカウントが求められるが、「発掘」を持つ青いカードは(まだ)存在しない。
ブルーカウントのコストとなるカードは《秘蔵の縫合体》や《ナルコメーバ》である。これらはバザールを起動した際に無闇に捨てず手札に抱えるほうがよい。特にナルコメーバはデッキから減っていること自体が情報的ディスアドバンテージなため極力知られないようにしたい。
・《黄泉からの橋》
バザールがドレッジの心臓なら《黄泉からの橋》はドレッジにとってである。ドレッジの弱点である《歩行バリスタ》などがこちらの《イチョリッド》や《ナルコメーバ》を打ち落としつつ墓地の橋を追放したなら、そこでバザールの起動によって橋を墓地に置くことでゾンビトークンを生成できる。
これは相手の破壊除去に対応して行ったり、クリーチャー戦闘においてもそれなりに効果を発揮するので、橋も無闇に捨てず手札に1枚は持つようにしたい。
・《Bazaar of Baghdad》
ドレッジの心臓だが、実は能力を起動するたびに手札が減ってしまう。そのため手札をコストとするピッチスペルは相性が悪い。
メイン戦では自ターンのアップキープに起動することがほとんどだが、サイド戦では「起動しないターン」や「メインフェイズに起動」、「起動するが発掘しない」など冷静に判断する必要がある。ちなみに、手札を消費しない場合のバザール起動下の手札枚数の遷移は、7→6→(8→)5→(7→)4→5→(7→)4→5…となる。つまりバザールを起動している間にピッチスペルを打てる回数は2回程度だということである。
・ピッチスペル
ドレッジにはピッチドレッジと言われる型があるほどにピッチスペルが多く採用される。主に《意志の力》、《否定の力》、《活性の力》、《不快な群れ》を使うが、それぞれコストとして手札の同色カードを要求する。しかし先述の通りバザールは起動するごとに手札が減ることと青い発掘カードは無いことは注意が必要である。サイド後は特にバザールを起動しないターンや発掘しないターンなどを意識して作って手札を整える必要がある。
・《イチョリッド》
イチョリッドは速攻を持っているが、対戦相手が青を含む2マナ以上を立てている場合は無理に攻撃をしなくてもよい。特に、墓地に《黄泉からの橋》が複数ある状態の第2ターンでイチョリッド1体でしか攻撃できない場合、対戦相手は《瞬唱の魔道士》や《ヴェンディリオン三人衆》などで積極的に相討ちをしてくるので、戦闘前に《陰謀団式療法》を唱えたり何もせずにターン終了時に生け贄に捧げてゾンビトークンに変えてもよい。
・《ナルコメーバ》
デッキの屋台骨(見た目はクラゲ)。セルフリアニする機会は一度しかないが、実はイチョリッドよりも重要度が高い。何故なら、墓地に置かれたターンに戦場に出るからである。そのターンの間に戦場に出るということは、《陰謀団式療法》や《戦慄の復活》の使用機会が増えるのである。
そのため、ナルコメーバがライブラリーに残っていることがそのまま脅威度
の高さ
つながるうえピッチスペルのコストとしても使用できるため、手札に来てしまっても可能な限り捨てずに見せないほうがいい。


■ドレッジ:ザ・ギャザリング

ドレッジは相互作用のデッキであるため、あらゆる対策カードの影響を受けてしまう。しかし、逆に言えば、全てを一括で対策されることは無いということでもある。
メインではマジック:ザ・ギャザリングを無視したゲームを行い、サイドでは対策をかわしつつマジック:ザ・ギャザリングをするのである。
ドレッジの戦い方は慣れればリミテッド的なビートダウンをピッチスペルでサポートするクロックパーミッション的なものだとわかってくるだろう。


■あとがき

ドレッジの基本解説記事は今回で5本目となった。
一応これで終わりのつもりである。ドレッジ初心者やドレッジを倒したい人にとって意義のあるものになっていれば幸いである。

しかし、ここまで解説・紹介したことはいずれも基本中の基本のようなものなので、相手のデッキタイプやシチュエーションごとの動きについては今後改めて文章を起こしたいと思う。

また、筆者自身が使っているマナドレッジについての解説(というか紹介)も書きたいと思うし、次に書くのは恐らくそれである。個人的にはかなり独特な構築のドレッジになったと考えているので、ドレッジの可能性を広めるものになってほしいと思っている。

それでは閲読ありがとうございました。
ぎゃ٩( 'ω' )و


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