【MTG】ドレッジのすゝめ ~ドローとミルとドレッジ~


Q.人はなぜ発掘するのか―――

A.そこに山札があるから

こんにちは、ぎゃり粉です。
2019年8月にモダンにおいて《信仰なき物あさり》が禁止されて以来モダンでのドレッジ勢力に一時のような隆盛は見られなくなった。かくいう筆者もドレッジをやめナヤZooやエルフをまわしていた。ちなみにモダンの大会には2017年ごろにナヤZooで参加したのが最後だった。

今年の初め、コロナが話題になるギリギリ前ぐらいだったと思う。
友人に頼まれて久々にドレッジ…と言っても《信仰なき物あさり》を使っていたタイプではなく《面晶体のカニ》や《不可視の一瞥》を使ったセルフミルから《復讐蔦》や《這い寄る恐怖》でライフを削る、いわゆるカニヴァインタイプのドレッジを組んでみた。非常にピーキーな出来映えだったが小技が多くあり楽しいデッキだと思った。

さて、以前に筆者自身の記事で「ドレッジには2種類ある」ということを書いた。

ドレッジの戦略については過去に解説したが、その戦略を支える「墓地にカードを置く行動の違い」によって、デッキタイプを便宜上2種類に分けたい。

・ドロードレッジ
「発掘」能力を使った最もポピュラーなもの
・ミルドレッジ
ライブラリー破壊系のカードを使うもの

ドロードレッジとミルドレッジ、この2つの概念について当該の記事の中では掘り下げなかったので、今回の記事ではこれを言語化していこうと思う。

ところで、最近不意にモダンのドレッジについて相談を受ける機会があった。筆者の記事を気に入ってくださったとのことで大変嬉しく思う。

その方も現在ドレッジの構築について記事を作成されているのでここで紹介したい。

この記事を作成されたのは、うりさんという方でドレッジでは筆者も未経験の《銀打ちのグール》を搭載した型から調整を開始しておられる。また、デッキソリティアをするためのアプリ開発もされているのでそちらも一見をおすすめする。


■ドレッジのおさらい

まずはドレッジについて確認しよう。
ドレッジはライブラリーや手札からカードをどんどん墓地に送り墓地から戦場に戻るクリーチャーや《這い寄る恐怖》などで高速にライフを削りきるコンボに近いビートダウンデッキで、いわゆるアンフェアに分類される。

呪文を経由せずにゲームを展開する特異な構成から繰り出される盤面の展開力やその高い速度や安定性から、メインボードでは最強と言われる反面、サイドボードでは多種多様な対策カードによって厳しいゲームを強いられることが多い。


■アンフェアさの理由

ドレッジがアンフェアであることはアクションの少なさに対してリソースの多さに理由があると筆者は考えている。
例えば、《臭い草のインプ》には [発掘5] がついているが、この発掘によって墓地に置かれる5枚のカードが、
・《ナルコメーバ》
・《秘蔵の縫合体》
・《這い寄る恐怖》
・《銀打ちのグール》
・《燃焼》
だったとするとどうだろう。
解説すると、この1回の [発掘5] によって、1/1飛行と3/1と3/3が戦場に現れ、3点ドレインをし、フィニッシュになりうるX点火力が予約できている。ちょっと強すぎるがあり得ない訳ではない。

そして、これらのためにドレッジ側はリソース(マナやライフやカード、テンポなどあらゆるもの)を支払っていない。
強いてデメリットを挙げるならば、(インプの場合)相討ち要員のブロッカーが必ず手札に来てしまうリスクがあり、また、引きたいカードを引ける機会を喪失している。

しかし、たった1回のドローがカード5枚分の効果を発揮するかも知れないのだ。そんなもの発掘するしかないではないか。



ここからが本題だ。ドロードレッジとミルドレッジの特徴と差違について考えていこう。

■ドロードレッジ

ドロードレッジは文字通りカードをドローすることを重点したドレッジである。ドローすることで墓地にカード送り込むため、 [発掘] 能力を持つカードを採用し、そのお膳立てのために [手札を捨てるカード] も多く採用される。
ドローと発掘だけではゲームにならないので、《ナルコメーバ》や《秘蔵の縫合体》のようなクリーチャー戦力や、《這い寄る恐怖》や《燃焼》のような直接火力などが必要になる。レガシーやヴィンテージではさらに妨害手段として《陰謀団式療法》やフィニッシャーを釣り上げる《戦慄の復活》、それらとシナジーする《黄泉からの橋》などが採用される。

つまり、ドロードレッジの概ねのデッキは、
・カードを引くカード
・カードを捨てるカード
・[発掘] を持つカード
・墓地から唱えられるカード
・墓地から戦場に出られるカード
・墓地で効果を及ぼすその他のカード
で構成されていると言える。
まずはこれらのカード同士が十分にシナジーする状態がドロードレッジとして望ましい。

そして、手順としては逆になるのだが、ドロードレッジは手札を捨てることから始まる。
具体的には、
・[発掘] をもつカードを捨てる
・ドローを発掘に置換する
・発掘の過程で新しい発掘もちカードが落ちる
この3ステップを繰り返せることでデッキのギミックや勝利へのプランを実現している。
ドローはゲームのルールによって毎ターン行えるが、手札を捨てることと発掘もちカードが連鎖することは約束されていない。

ドロードレッジの戦略を成就するには、あらやるカードを墓地に置く必要があり、そのために [発掘] をもつカードが置かれ続けていることが重要になる。だからこそドロードレッジには強力な手札入れ替え手段であるルーティングが欠かせない。

■ミルドレッジ

ミルドレッジもその字の如くデッキを [mill/切削] する呪文や能力を主軸にしたドレッジである。カードを墓地に置く手段として主に《面晶体のカニ》や《不可視の一瞥》、《縫い師への供給者》などのライブラリーを直接墓地に置く(ミル)カードを採用し、[発掘] もちカードが採用されることはそう多くない。発掘カードが減るということは「カードを引く回数」はドロードレッジほど重視されない。手札を捨てる手段についてもルーティングよりも共鳴者(手札を捨てることをコストとする能力や呪文)が多く採用される。

ミル型はドロー型に比べて呪文をプレイする回数が多い。その大抵が2マナ以下のクリーチャーであるためターン内の複数回のキャストが比較的容易でリアニメイト条件がよく合致する《復讐蔦》もよく採用される。

それを踏まえミルドレッジの概ねの構成は、
・ライブラリーをミルするカード
・共鳴者クリーチャー
・《復讐蔦》と《墓所這い》
・墓地から戦場に出られるカード
・墓地で効果を及ぼすその他カード
となる。
ミルドレッジはドロードレッジよりも能動的なデッキであるため、ドロー型よりシナジーの構成が実際のプレイングに依存する。このあたりの差は後述する。

モダンでは禁止カードを含むため実現できないが、《甦る死滅都市、ホガーク》、《黄泉からの橋》、《狂気の祭壇》によって高速にライブラリーを削りきるライブラリーアウトコンボとしての機能も持っている。


■ドレッジの違い

ドロードレッジとミルドレッジの構成の差はそのまま戦術の差となっているが、そもそもそれぞれの強みとはどういう部分なのか。

ドロードレッジについてはドレッジのアンフェアさでも触れたが、[発掘] することが多くのリソースを生んでおり、そのためのアクションがディスカードとドローという呪文や能力に頼らずともゲームの進行のみで可能であり、その多くが誘発型能力であるために打ち消しでは対処が難しいものになっている点が強みといえる。
いわば、ドロードレッジは受動的に強いのである。

具体的には、《ナルコメーバ》や《這い寄る恐怖》は [発掘] の過程で誘発し、それはさらに《秘蔵の縫合体》を誘発させ、《燃焼》や《アゴナスの雄牛》などは手札からよりも墓地から唱えるほうが容易である。これらをカードを引く(発掘する)なかで用意できるのだ。

逆にミルドレッジはまさにミルするためや《復讐蔦》や《墓所這い》の条件を満たすためにスペルを積極的に唱える。ミルスペルは発掘のための下準備(カードを捨てること)が不要で、一度に墓地に置ける枚数も大抵の発掘よりも多い。《ナルコメーバ》や《秘蔵の縫合体》、《這い寄る恐怖》はミルドレッジでも採用されるが、発掘よりも多く墓地にカードを置ける分積極的に機会を狙える。
また、よく採用される《屍肉喰らい》や《狂気の祭壇》などの能力も頻繁に使用するため、ミルドレッジは能動的に強いと言える。

[ゼンディカーの夜明け] 現在のモダンでは禁止されているため不可能だが、かつてのブリッジヴァインやホガークヴァインはこのミルドレッジの能動性を極めたデッキだったと言えるだろう。

レガシー以下の環境では、《陰謀団式療法》や《黄泉からの橋》、《戦慄の復活》がより能動的なカードとして使用でき、ルーティングやディスカード手段に関しても《打開》や《ライオンの瞳のダイアモンド》、そして《Bazaar of Baghdad》がある。
これらを使うことでドロードレッジは能動的な強さを獲得しメイン最強を冠するデッキとなるのだ。


■まとめ

ドレッジの強みはアンフェアさにある。
アンフェアさはドレッジのタイプによって変わるが、誘発型能力を中心にしたリソースの増加速度によるところが大きい。
ドロードレッジは墓地から使用あるいは墓地を経由することを前提としたカードが多いため、発掘しないときのドローが弱くなりやすい。
ミルドレッジは手札から唱えるカードが多いためドローがゲーム中において一定の質を保ちやすい。

ドロー型とミル型のどちらのほうが優れている、というのは判然としないし、同居が不可能だとも思わない。しかし、それぞれの戦略や戦術によってカードやプレイングの選択は確かに変わる。


■あとがき

ドレッジは意外とデッキ構築の幅があると思う。特に差違になりやすいのが《復讐蔦》と《信仰無き物あさり》の有無で、これによってデッキの方向性は決まると思う。
個人的にはドレッジはコンボデッキとして能動的なほうが強いと思っている。しかし、ドレッジには弱点も多いため、一辺倒では勝ちきれなくなってしまう。
この能動性と受動性をうまく使い分けたり選択できることがドレッジ上達に必要だと思う。
ドレッジは禁止カードを多く排出してしまったデッキタイプだが、そもそも色々なカードの組み合わせで真価を発揮するデッキなので、まだ見つけられていない可能性はきっとあると思う。
今回の記事がドレッジの新たな展望につながれば幸いである。

それではよいドレッジライフを。
ぎゃ٩( 'ω' )و



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