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ATP500テニス リオデジャネイロ大会の準決勝  アルカラス 対 ジャリー


 全体的には、1、2セットは面白い試合だったが、第3セットはニコラス・ジャリーが力尽きた感じだった。全豪オープンを足の怪我で出場できなかったカルロス・アルカラスの状態が知りたくてこのゲームを見た。

まず、相手のジャリーについては、全く知らなかった。チリ出身、27歳で198cmの長身、アルカラスが183cmだから、かなり違う。2019年にドーピング検査で陽性が判明して、しばらく公式戦に出られなかった。その前のランキングは30番台だったそうなので、それなりの力はあるのだろう。今回は予選からの勝ち上がり。強いサーブとボレー、フォアハンドやバックハンドストロークもそれなりに強く、正確なショットだ。特筆すべきは、ランキングトップ10との対戦成績は4勝5敗で、実力的には十位以内に入る力はあるのだろう。

一方のアルカラスは、言わずと知れた若手のホープ。全米オープンで優勝して世界ランキングトップになった。全豪オープンで欠場し、ジョコビッチが優勝して再び世界ランクでトップとなったため、2位に落ちた。

第1セットは、ジャリーのサーブで始まり、第2ゲームでアルカラスのサーブを破った。ジャリーのレシーブは鋭く、速く、アルカラスの足元を襲い、アルカラスは返球できないことが多かった。ストロークでも、ジャリーは、ボールをアルカラスのバックに集め、仕掛けが早いので、さすがのアルカラスも対応できなかった。

しかし、粘るアルカラスは、第9ゲームでスーパーショットを連続して、ブレークバックを果たしイーブンとなった。そのままタイブレークとなり、7−2でジャリーが第1セットを制した。ストロークで負けるアルカラスを初めて見たような気がするほど、ジャリーのショットはどれも速く、力強かった。両選手のボールのスピードが速く、とてもクレーの試合とは思えなかった。

第2セットも素晴らしい試合だった。立ち上がりのゲームでは、アルカラスが0-40となり追い詰められ、これで試合は決まったかと思ったが、アルカラスが挽回した。第2ゲームでは、ジャリーのローボレーが見事だった。ジャリーは、ローボレーがうまい。9ゲームが終わったところで、アルカラスが左足をトレーナーにマッサージしてもらっていた。これで、終わりかと思ったが、第12ゲームでジャリーのサーブを破り、アルカラスは第2セットを7−5で取り、イーブンとした。

第3セットは、第2ゲームでアルカラスはジャリーのゲームを破り、リズムに乗った。以後はアルカラスの一方的な試合となり、6−0でアルカラスが取り、決勝進出を決めた。第3セットは、全く面白くなかった。

最後に感じたのは、アルカラスの粘り強さ、ボデイバランスの良さ、フットワークの良さなど、チャンピオンとしての素質の高さを感じた。同時に、粘り強さが、筋肉等の無理な負担にならなければ良いがという心配だった。今はまだ若いからそのようなことは心配していないだろうが、長くチャンピオンでいるためにはいろいろと工夫がいる。ジョコビッチをよく研究してほしい。

また、ジャリーについてはいろいろ言いたいことが多かった。第1、2ゲームを見るがぎり、彼は十分トップ10以内に入る逸材だと思う。精神面の強化が第1だろう。それに加えてもう少し狡さというか、巧妙さが欲しい。テニスは3セット全体の勝負である。各セットは1ゲームだけ上回れば良い。極端なことを言えば、相手をブレークするゲームだけに、スーパーショットを見せれば良い。相手が良い選手になればなるほど、こちらのスーパーショットに対する対応もだんだん可能となってくる。したがって、本当に大切な時だけ見せて、他では隠しておくことが重要となる。フェデラーはキャリアーの後半で苦手のバックハンドショットを強力な武器に変えた。それでも多くの場合、バックのストレートを第1セットではほとんど見せていない。ぜひ、頑張って欲しい。




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