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もう頬杖はつかない

もう頬杖はつかない(1979年 東陽一監督 出演:桃井かおり 奥田瑛二 森本レオ等)

白いカーテンから指す光はやんわりと重い。女はずっと窓の外に意識が向いている。隣には好きな男がいるはずなのに。


本作は1978 年、早稲田大学文学部の学生だった見延典子が卒業制作で書いた小説が原作です。発表されるやいなや「これは私の事だ」と同世代の女性から多くの共感を得て、50万部のベストセラーになりました。

主人公のまり子は売れないルポライター恒夫と将来有望な同級生橋本君の間で揺れる女子大生。自分は何がしたいからわからないから、夢を追いかける人に憧れ、冷たくされても別れられない。自分を好きでいてくれる人がいると、自分の事を考えなくていいから楽で、好きでもないのに会ってしまう。二人との関係をずるずると続けてしまう。そんな女性の話今でもよく聞きませんか?だから39年前の作品なのに今でも共感をもって観ていられるのです。

まり子はある事がきっかけで自分は彼らの理想を満たすための手段でしかない事に気づき、一人で生きる事を決めます。その決意は言葉としては表現されていませんが、映像として上手く表現しているのがセロリを食べるシーンです。がらんとした部屋で冷蔵庫からセロリを取り出してぽりっとつまんだらじわっと泣けてきて、悔しくてがぶりと噛みついて流し込む。痛みを、苦みを飲み込む。私にとってセロリは苦くて美味しくないのですが、このシーンでは恋の苦みがセロリの固さ、苦さで表現されていて、なんだかおいしそうなんです。辛くなったらセロリを食べたくなる。冷蔵庫にセロリを常備したくなる。苦みが美味しいと思うようになった大人の女性にお勧めの映画です。




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