ロケットマン(ネタばれあり)

ロケットマン(2019年 デクスター・フレッチャー監督 主演:タロン・エガートン ジェイミー・ベル リチャード・マッデン等)

★ネタばれありますので気をつけてください!想いが溢れて書いてしまいました(汗)知りたくない方は観終わってから読んでください。

とある事情で会社を一週間休む事になった。今までは一週間も休みがあるなら海外旅行に行っていた。が、現在コロナ禍の為、遠出はできない。どっぷりハマってしまいそうで今まで避けていたamazon prime についに入会。気づけば深夜で、明日仕事なのに起きられるかしら?という心配はない。まず、観たのはこのロケットマンだった。

(予告と本編のセリフの翻訳が違うのが気になるが・・)

元々、エルトン・ジョンの曲は好きだし、音楽とストーリーの両方楽しめる音楽映画は基本ハズレはないだろう(ベースとなる音楽を知っているから安心して見れる)と、軽い気持ちで観たのだが、感想としては音楽家としてのエルトン・ジョンよりエルトン・ジョンという派手な人格を作り上げる事で成功と挫折を経験していくレジナルド・ドワイド(エルトンの本名)の人生に感情移入しまくりだった。

レジナルドは自分にも自分の才能にも興味を持たない両親の元で育つ。おしゃれな母に好かれるように、ファッション雑誌を見て、「お母さんは赤い服が似合うよ!」と共通の話題を探そうとしたり、ジャズ好きな父と話そうとしても、レコードすら触れられない。
極めつけは「ハグして」と言ったら「甘えるな」。

両親はどうしてレジナルドを産んだんだろうと不思議に思うくらい愛情が感じられない。仕方なく育てている、という感じで、両親は自分の事しか興味がない。


自分が内気だからいけないんだ
有名な学校に入って
母の好きなエルビス・プレスリーのようなロックンローラーになって
お金持ちになれば
もっと頑張れば もっと明るくなれば 両親は振り向いてくれるはず

ロックンロールは「自分は愛されない、価値のない人間だ」という乾いた心の土壌に水を与え、自分の好きな事、得意な音楽で評価されることでニョキニョキと自尊心の芽が出てきた。
ロケットのように勢いよく枝葉は伸びていく。名声、富、そして公私ともに信頼できるパートナーを得て、愛まであと一歩という時に花は枯れ、すぐに萎れてしまう。一番欲しい愛はいつも手が届かない。


決死の思いでゲイだと告白しても、興味も持たず「あなたはこれから誰にも愛されることはない」と言い放つ母親(そのくせ金だけはむしろうとする)
アルバムにサインをくれと父親に言われてやっと自分に興味を持ってくれたかと思ったら、自分の同僚の名前を書いてくれと言われ、父は自分の名声にしか興味がないんだと知って涙する場面とか
酷すぎる両親にそれでも好かれたくて頑張るのに冷たくされるエルトンの姿を見ていて、胸が苦しくなる。

私は、厳しい両親の元育てられた。ある一定の成績をとらないと、食事すら出なかった。それでも両親を憎めず、愛されたいと必死に頑張った。そのうちに自分の中で
「自分は結果を出さないと、生きていけない。愛されないんだ」と思うようになった。頑張って頑張って求められる自分になろうとする。周囲から褒められる。でも、どこか満たされない。そんな自分とかなり境遇の差はあれ、共感する部分があった。

(これ、タイトルの和訳が悲しみのバラード、で全然違う。)

満たされない心の穴を埋めようとエルトンはドラッグやアルコール、セックスに依存する。植物であれば常に栄養剤を撒いているようなものだ。そのうちに根腐れし(自殺を試みる)依存症治療を始め、気づく。「自分で自分を愛する」しかない、と。


両親から愛される事を求めるのをやめ、派手な衣装で着飾らなくてもそのままの自分をずっと求めてくれた相棒バーニーの愛に気づき、素面で書いた曲「アイム・スティル・スタンディング」で復活する。

この映画は音楽映画ではあるけれど、それより親子関係に苦しむある男が自分で自分を認められるようになるまでの心の葛藤の表現に重きを置いている気がした。

今、私もカウンセリングを受けて、他者からの評価(誰かに好かれる事)に依存せず自分で自分を愛せるように努力している自分にはとても響いた映画だった。

ちなみに。

この映画のタイトルは「ロケットマン」だけど、エルトンを指す言葉としてはロケットマンは合うけど、ストーリー的には「グッバイ・イエロー・ブリックロード」の方が重要な曲。

詳しくは以下のページにて。

あと、エルトンの曲としては初期のロックンロールな曲も好きですが

やっぱり一番好きなのは「アイム・スティル・スタンディング」かな。


色々あったけど、まだ俺は立っている。その姿に勇気をもらえる。

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