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読書 亡霊星域

紹介文

ついに内戦が始まった。かつて宇宙戦艦のAIであり、いまはただひとりの生体兵器“属躰”として生きるブレクは、宿敵アナーンダから艦隊司令官に任じられる。ブレクは復讐の誓いを胸に秘め、誰が敵か味方かもわからない状況下、正体を隠して新たな艦で出航する――大切な人の妹が住む星系を守るために。星雲賞、ヒューゴー賞、ネビュラ賞など計12冠制覇、本格宇宙SFのニュー・スタンダード《叛逆航路》シリーズ第2弾! 解説=大野万紀

東京創元社

感想

叛逆航路の続編となるシリーズ3部作の第2作目の作品。
主人公は前作と同様に、戦艦のAIの一部として存在していた、一人の人間に上書きされたAI。戦艦とAIを上書きされ群として情報を共有して存在していた多数の自分を失い一人の肉体に存在するようになった存在。

今回の話は、前作と違いとても読みやすい。登場人物の背景が推測できるので感情移入もしやすく前作のようなモヤモヤしたストレスはない。その分、物足りなさを覚えてしまうのは贅沢な欲求だとは思うのだけれど。

前作の最後で艦長となることが示唆されていた戦艦にのり「艦隊司令官」という高い地位を任命され「ある星系」に派遣される。そこでの数々の出来事が今回の物語となる。

前作とは全く違った作風の作品となっているので好き嫌いは出るだろうと思う。自分はかなり面白かった。

しかし、前作に引き続いた「個」と「群」のアイデンティティの問題は描かれ続けている。主人公は「分散した自己」を失った消失感から完全には立ち直れはしないし、戦艦ではない「一人の人間」として存在していることにもなじめないまま、正しいと自分が考えることをすすめていく。

アナーンダという支配者として存在しているAIの前作からの矛盾についても引き続き本人が存在しない状況でも描かれる。それに関しては、分散した「個」が時間をかけて「同期」することの難しさなども思い浮かんでしまって個人的にはとても面白い。

星域とタイトルにはあるが、実際は、ステーションの中でのAIと人間のさまざまな価値観や思惑や差別などが描かれる。アクションもあるがメインではない。人間(AIも含め)関係の話が主だと思って良いと思う。

次作への仕込みもたっぷりとあるが、話としては、完結していると思う。

続きを読むのが楽しみ。

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