がっかり映画、Jimi:栄光への軌跡

2015年6月。有給を取り、こっそりとレイトショーで映画を二本見に行きました。
いやはや、内容が内容だからか、元ギターキッズな団塊世代から、バンドマン風の男性、サイケな麻の服をいたすっぴんの女性などお客さんは個性派だらけ。ミニシアターには心なしかお香っぽい匂いがふわーんと漂いました。

さて、紹介するJimi:栄光の軌跡は、ジミ・ヘンドリックスのブレイク前の二年間を描いた作品で、ジミヘンを演じるのは、アウトキャストのアンドレ3000ことアンドレ・ベンジャミンというので期待してみたら…………。

なんじゃこりゃ!

版権の都合上とはいえ、ジミヘンの曲が使えないとはいえ、演奏してれば幸せな家族運のない若くはにかみやな黒人青年が、キース・リチャーズの当時の彼女であるリンダを筆頭に三人の楽屋女とすったもんだする内輪話になってしまったのはあまりにもあんまりです。

リンダはモデル上がりで美しいものの、キースのギターをがめてジミに持ってくるわでかなりアグレッシブ。ファム・ファタルと才能を持て余す青年のつかの間の恋かと思いきや、赤毛のグルーピー、キャシーにジミをとられてしまう。
このキャシーが鬱陶しい楽屋女のテンプレートみたいな女のように描かれ、キャシー本人がこの映画を見たら大暴れしてもしょうがないくらいです。
なんせ、劇中のキャシーは、バンドにぎゃあぎゃあと口出しして、マネージャーである元アニマルズのチャス・チャンドラーにスッポン女と罵倒される厚かましさ。
中盤のほとんどはジミとキャシーの痴話喧嘩ばかりなので、何度眠りに誘われたことか。
三人目の楽屋女はイダという妖艶な黒人女性。キャシーの理解者を装い、ちゃっかりジミを寝とり、挙げ句にジミを政治運動に誘うしたたかなビッチ。
ジミに殴られて泣きじゃくるキャシーを優しく宥めた直後に、キャシーが一部屋越しにいるのに玄関先でジミと愛を交わすえげつなさはこの映画の数えるほどの名シーンの一つです。

ラストシーンも、モンタレーポップフェスへの旅路へ向かうジミヘンドリックス&エクスペリエンスの三人という、これなんてジャンプの打ち切り漫画のラストシーン?なしょっぱいラストですが、ジミヘンブレイク前日譚での、時にはクスっと、時には無茶にもほどがあるだろ!なトリビア満載なのと、アンドレがヴァル・キルマーがオリバー・ストーンのドアーズで演じたジム・モリソン級にはまり役なのが拾い物な映画ですが、版権の複雑さや関係者とのいさかいから、見切り発車で製作された背景を差し引いても映画全般としては粗だらけで、所々に挿入された60年代のファッショングラビアやジミの幼い頃の写真がチンケなサイケ感を助長していて、私個人としてはこの映画、お金返してと吠えたくなりました。残念です。

文責・コサイミキ

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