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社会的処方とリンクワーカー

イギリスでは、人々の健康やウェルビーイング(身体的、精神的、社会的に良好な状態)の向上などを目的に、「社会的処方」と呼ばれる取組みが増えてきているそうです。
一般的な医学的処方は、例えば不眠症の場合、服薬によってそれを解決しようとします。(もう一歩踏み込んで、日中の運動や生活習慣の改善を指導する場合もありますが。)
一方、社会的処方は、その患者さんを地域活動やサークル、サービスなどに「つなげ」ます。
その患者さんの好きなことや興味のある分野についての地域資源、仲間、サークルなどにつなげるんですね。
つまり、「人や社会とのつながり」を「処方」するわけです。
このような「つながり」が健康に好影響を及ぼすことは、実験でも明らかになり始めています。
しかし、その医師が様々な社会資源やつながりの情報をすべて持っているとは限りません。
そこに介在するのがリンクワーカー(Link Worker)と呼ばれる人材です。
リンクワーカーは地域の活動やサービスに関する情報や人脈を持っています。
「あなた花が好きなの?だったら花壇を整備するボランティア団体知っているよ。ぜひ手伝ってもらえない?」
「学校の先生してたんですか?よかったら児童クラブで子どもに教えてもらえませんか?」
とかいう感じですね。
ここで大切なのは、人とのつながりを作るのと同時に「役割」が生じるということだと思います。

このリンクワーカーを特定の職業や資格として捉えることも可能ですが、『社会的処方』の著者である西智弘先生は「誰でもリンクワーカー」になれる、と言います。
カフェの店主、食堂のおばさん、サークルに参加している人、スナックのママ、ボランティアに参加している人、自治会の役員さん、などなど。
西先生いわく「コミュニティ・ソーシャル・ワーカー」です。
リンクワーカーを資格制度とかにしてしまうと、やはりそこに障壁ができてしまい、「医療関係者」の一部となってしまいます。
地域の人々が誰しもリンクワーカーだという仕組みは、その障壁を溶かし、自然な人のつながりを実現できるのだと思います。
「制度」よりも「文化」にしていくことで、破綻せず、形骸化せず、特別な財源を必要とせず、じんわりと広げていくことができそうです。

堀田聰子さんを代表世話人としてイギリスの社会的処方について調査した報告書もあるようです。
「英国社会的処方現地調査報告書」
https://www.orangecross.or.jp/project/socialprescribing/pdf/socialprescribing_2018_03.pdf

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