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”Social Mirai Design”「激変する時代の未来デザイン」(第9回)

今回の講義は、まちビジネス事業家の木下 斉さんでした。
大学在学中に全国商店街合同出資会社の社長に就任、熊本城東マネジメント株式会社を皮切りに、全国各地でまち会社へ投資、設立支援をしたり、一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスの代表理事として、全国のまち会社による事業連携・政策立案をされています。内閣官房地域活性化伝道師や各種政府委員も務め、最近ではN高等学校の講師もされているのだとか。
一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス
https://www.areaia.jp/
N高等学校
https://nnn.ed.jp/


1)小さくても自分たちで回し続ける
地域再生事業が続かない例として、国の補助金やモデル事業などの支援(毒まんじゅう!?)を受けて最初は盛り上がったけど、その後続かないよね、というものが多いそうです。
地域における商売のプログラムやシステムがうまく設計されていないと、どれだけお金を投入しても、必要なアウトプットが生まれず、持続できないんですね。
地方創生総合戦略は、国が東京のコンサルタントに依頼(丸投げ?)するような事態が横行し、地方の実情の知らない計画が多いようです。
地域事業は利回りを生み出す事業であるべきで、エリア再生はあくまでその積み上げでしかありません。
また、木下さんは「まちづくりはパブリックなものではない。」といいます。
そのまちやエリアが活性化することによって利益を受けるのは、あくまでそこに住む限られた人達であるから、行政の仕事じゃないということです。
だからこそ、当事者意識を持つべきはその地域の「土地のオーナー」であり、そうでないとうまくいかないのだそうです。
つまり、民間主導で事業を構築し、自ら稼ぎ続けることが必要となります。
どうやるの?ということについて、木下さんの一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスでは、都市経営の高度教育を行う「都市経営プロフェッショナルスクール」という事業もやっていて、すでに300名を超える卒業生がいるそうです。
都市経営プロフェッショナルスクール
https://www.ppp-ps.net/

2)地域内でお金を回す
木下さんのまちづくりの基本コンセプトは、「まちをひとつの会社に見立てて経営する」だそうです。
地域が活性化し、それが持続していくためには、地域内でお金が循環するしくみが必要なんですね。
まちをひとつの会社と捉えると、社員同士で給料を奪い合うのではなく、会社の業績が上がって、社員みんなの給料が上がればいいよね、ということになります。
このためには、経済循環の原則である
「増やす」(商圏内需要や外貨獲得などの流入増加)
「回す」(地域内取引の拡大や提供商品・サービスの拡大などの循環促進)
「絞る」(経費削減などの流出減少)
を意識して活性化に取り組むことが必要です。

大規模な商業施設を建設し、そこに地域外のチェーン店やブランドなどがテナントとして入っても地域内にお金を落とすことにはなりません。いかにして地域内でお金を回すか、地域外から稼ぐか、を目的とするということですね。

例として紹介いただいたのは、空き店舗を異業種がシェアするTANEYAです。(愛知県春日井市・勝川)
https://kam.localinfo.jp/pages/990973/blog
リノベーションは工務店とDIYベースで行うことで、投資回収は1.5年。補助金ゼロで小規模でありながら高い利回りで運営できているそうです。早い回収率を出すことで融資も借り入れやすくなるそうで、次には「ままま勝川」という新規プロジェクトとなり、第三の事業として再開発施設も予定されているそうです。

3)売上から逆算する
売上、利益、経費を試算する上で、間違った式と正しい式があります。
誤った式:売上-経費=利益
正しい式:売上(実数×0.8)-利益(確保したい利益)=経費(想定×1.2)
つまり、見込める売上から逆算してかけられる経費を計算するという方法です。この考え方であれば、投資額が回収できなくなるという事態を防ぐことができます。
また、営業から逆算する、という話もありました。
投資する前に営業を終える、とのことで、スタート段階で客付け100%の状態にできないものは所詮運営できないといいます。

空き家をリノベーションして貸し出す、という例でも同じことがいえます。
先に投資してリノベーションしてしまい、割り返した家賃で入居者が確保できない、という事態になるよりは、入ってほしい入居者の支払い可能家賃から開発予算を逆算する方が良いということですね。入居した人が成功しないと事業も継続できず、オーナーとしても家賃がもらえなくなります。

また、地域における事業で失敗する要因としては、固定収入・変動収入、固定費・変動費を意識した計画になっていないことが挙げられるそうです。
固定収入の範囲で固定費を設定し、変動収入に応じて変動費を組み立てるということがポイントになります。
公民合築施設のオガールプラザ(岩手県紫波郡紫波町)の中の販売店舗は、産直店舗部分(変動費)とテナント部分(固定費)に分かれており、テナント収入が固定費となっているそうです。
オガールプラザ
https://ogal.info/information/ogal-plaza

まちづくりは、そこに住む人や働く人たちが自分たちの力で、自分事として考えて取り組んでいく必要があります。
こう書くとあたりまえのことのように思えますが、往々にして失敗する例があります。
小さく続ける、そこから展開する、そのための具体的な方策を学ぶことができました。


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