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「セレッソ大阪で現役を終えたい」~ 韓国代表GK守護神キム・ジンヒョン選手。

2009年にセレッソ大阪でプロデビューした韓国代表GK キム・ジンヒョン選手は、2021年で13年目のシーズンを迎えました。

他のリーグを経験したこともなければ、セレッソ大阪以外のクラブでプレーしたことがないのは誰もが知るところです。

これまでの Jリーグの歴史の中で、これほど長く同じチームに在籍した韓国人選手はキム・ジンヒョン選手しかいません。

2009年から2020年まで、J1では 285試合、J2では 113試合も出場し、セレッソ大阪のゴールマウスを守ってきました。
これだけの出場試合数に加え、2011年から2019年まで韓国代表にも呼ばれていたのだから、時が過ぎるのが早いと感じるのは当然かも知れません。 

守護神キム・ジンヒョン選手が語る セレッソ大阪で “やり残したこと”。

加入1年目からレギュラーとして活躍し、二度にわたるJ2降格の悔しさを味わいながらもゴールマウスを守り続けてきました。
そんな絶対的な守護神は、セレッソ大阪でキャリアを全うすることを願っているといいます。

そのためには、唯一 “やり残したこと” を実現したいと決意を口にし、支えてくれる恩師や家族への感謝を示しました。

キム・ジンヒョン選手には、セレッソ大阪でやり残したことが一つある。

もちろん、それはリーグ優勝。

「それを成し遂げられていないのが悔しいです。今年は4チームが J2に降格するので、本当に し烈な戦いになります。
去年はリーグ4位で終わりましたが、それよりも良い成績を出すために、スタジアムで選手とサポーターが一つになっていかなければいけないと思います。」

リーグ優勝は セレッソ大阪にとっても悲願であり、キム・ジンヒョン選手も現役を続けている間に有終の美を飾りたいと願っています。

そして、聞きたかったのはその先のこと。

5年後、10年後に見据えていることについて聞くと、「常に目の前のことだけにベストを尽くしながら、本当に余裕なく生きているので、先のことは自分でも深く考えていないんですよ。」と苦笑いしていた。

 しかし、次の言葉に強い覚悟が見え隠れする。

「セレッソ大阪で現役を終えたいというのが、私の願いです。」

これまでのクラブへの貢献度を考えると、クラブもサポーターもそう願っている部分はきっとあるに違いありません。
それでも、キム・ジンヒョンは謙遜しながらこう語る。

「自分の能力が低くなり、チームには必要ないとなることもあるでしょう。ずっとセレッソにいられるという保証はありませんから、そうなれば他のクラブでサッカーを続けることもあるかもしれない。
ただ、自分の力が残っている限りは、セレッソでこれからも続けていきたいという気持ちがあります。本当に先のことは誰も分からないので、目の前のことにベストを尽くしていきたいです。」

そして、試合に起用し続けてくれたチームへの感謝の気持ちも忘れていなかった。

「監督をはじめ、チームスタッフが私のことを信頼し、試合に起用してくれたことにはとても感謝しています。だから自分は、それに結果で応える。ピッチの上で結果を残すことは、選手として当然のこと。
人間性においても素晴らしい選手、人間になろうと思いながら行動してきましたから、周囲の人もそういう部分を見てくれていたのかなと思います。」

今季からレヴィー・クルピ監督が再び セレッソ大阪を率いることになったことは、キム・ジンヒョン選手にとっては朗報だろう。
互いを知る仲だけに、求められていることもよく理解しています。(レヴィー・クルピ監督は 2021シーズン途中で退任)

一方で、2019年から2年間、指導を受けたミゲル・アンヘル・ロティーナ監督(現・清水エスパルス監督)からも大きな影響を受けたと語る。
この期間にGKからのビルドアップが格段に向上したという。
フリーの選手へのロングフィードで攻撃の起点となるプレーも、ロティーナ監督の指導が大きいと語っています。

「ビルドアップという技術的な面もそうですが、もう一つは私がミスした時のアドバイスです。ロティーナ監督は私が落ち込んでいる時に、的確な言葉で背中を押してくれました。自信を持ってプレーできるような言葉のかけ方のタイミングと重みをすごく感じる監督でした。選手の背中を押して自信を持たせてくれる雰囲気作りがとても上手く、すごく学ぶことが多かったです。」

いずれ指導者への道を進むこともないとも言えない。
もし人に教える時が来るなら、「ロティーナ監督のような指導者になりたいと思う」とも語っていました。

余談だが、キム・ジンヒョンは、2017年に結婚した妻と息子2人(3歳と1歳)の4人で暮らしている。
日本で生活して4年が経ったが「独身時代と違い、温かく迎えてくれる家族がいるのですごくいい。」と生活にメリハリができたことに感謝していた。

ただ、息子には「サッカーをやりたければやるし、やりたくなければ無理にさせません」と笑う。
それに家では妻とサッカーの話はほとんどしないといいます。

「サッカーをしていると嬉しいこともあれば、負けてナーバスになったりすることもあるので、妻も優しい人で、自分に合わせてすごく気を使ってくれています。」

そうはいってもセレッソの守護神である。
「家族は毎週、ピッチでプレーする父親のプレーをずっと見ていたいと思っているのでは?」と聞くと、照れくさそうにこう答えました。

「(妻は)何も言いませんが、きっとそう思ってくれていると思います。」

最後に少しだけ親父の背中が見えた。

(2021年3月 football ZONE web より )

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