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おもろいか、おもろくないか

先生ってすごいんですよ。
昨今、ブラックだ、長時間労働だ、残業代が出ないだなんだといろいろ言われていますが、本当にそうで。
加えて教師という職業のしんどさはその責任の重さにもあるのかなと思います。
学活、授業、給食、掃除、生徒指導、部活指導、行事の運営、成績処理、事務処理…などなど。
クラスの運営は担任が、その学年(音楽や美術などの実技教科は全学年)の教科指導は、大規模校でない限り1人が全てを担います。
これ、替えが効かないんですよね。
加えて相手は生き物で、その日その日によって、表情も気分も様子も変わる。

私がいた学校は、1クラス大体40人近く。
40人近くの人間を担任一人の目で、その表情や日々の変化を見逃さないでおくのは至難の業で。かなりの神経を使います。
前の日まで元気にしていたように見えたのに、急に学校に来なくなったり、ずっと仲が良かったグループの中で突然いざこざがあったり、毎日何があるか全く読めない。
授業の合間や放課後の時間、限られた自由な時間に授業準備や他の仕事をしようと思っても、急な指導で何時間も取られてしまうこともしばしばありました。

それを全部割り切って、切り替えてできればよかったんですが、私はそうはできなくて。一つ一つの出来事がどんどんどんどん蓄積されていって。

どうしてそうなったのか、自分は何か見逃していたんじゃないか、できることはなかったか、これからどうしていこうか、どんな声掛けをすればいいのか、しない方がいいのか、保護者にはどう説明しようか。

そんなことをずーっと考えていました。それが杞憂で終わることも多かったし、それを引きずったところでどうにもならないことも分かっていたけど、これはもう性分なのでどうしようもない。
まあ、そんなことしていて保てるはずもなく。どんどん心も体も擦り切れていきました。

でもここまでは想定内。教師という職に就き、担任を引き受けた時点で、ある程度覚悟していた未来でした。
問題はちゃんと生徒と向き合えるのか。そしてそこまでもつのか。

何度も、もう無理かも…と考えた時に、頭に過ったのは生徒の顔。
こんな私でも頼ってくれたり、面白がってくれていたりした生徒がいて。
いやでもみんながおるしな~…という思いでなんとか踏みとどまっていました。逆に生徒の顔が浮かばなくなったら終わりだな、と思っていました。

それがある日、プツンと切れた。
長期的に取り組んでいた問題が、一旦落ち着いたと思った1週間後に再浮上。職員室の真ん中でフリーズして動けなくなりました。
もちろん一人で取り組んでるわけではなかったし、周りの先生方はめちゃくちゃフォローしてくれていました。

それでも、これは無理だ、と悟った気持ちは戻らず、どんどん生徒と向き合うことが嫌になってしまいました。
生徒の顔が浮かばなくなったら終わりだ、と思っていたことが現実になって、退職の決意をしました。

でも私は教師という仕事が好きです。
そりゃあしんどいし、人の人生に関わるのであんまりいい加減なことはできない。
でも生徒はかわいいし、おもしろい。自分が思ってもみなかった感覚に触れて、生徒と共に私自身も成長しました。
理由は告げず、先生を辞めるといった私に、みんなは一生懸命手紙を書いてくれ、サプライズを企ててくれました。
泣いてくれたし、がんばれ!と応援してくれたし、なぜかサインを求められたりしました(これは本当になんで?)。
手紙には、紙いっぱいにみんなからの気持ちが綴られていました。
授業がおもしろかったこと、授業中に挟むしょうもない雑談やツッコミが楽しみだったこと、ずっと笑っているところが好きだったこと、来年は担任になってほしいと思っていたこと。
絶対に泣くだろうなと思っていたのにあまりに幸せで笑ってしまいました。

私の人生の軸は「おもろいか、おもろくないか。」
これはお笑い的なおもろいもそうだし、興味深いという意味でのおもろいもそう。
おもろいことをしていたいし、おもろい人に会いたいし、おもろい人間でありたい。

思えば、教師になろうと思ったきっかけは、歴史が好きで、これをもっと「おもろい!」と思ってもらえるような授業がしたいなあと思ったからでした。
教師として生きた3年間は間違いなくおもろかった。
負の感情を増殖させるのが得意な私は、その激烈な毎日に耐えることができなかったけど、子どもたちからもらった3年間で、自分自身も一緒に成長できました。みんな予想だにしない行動や発言をするから、ツッコミ力や対応力だって鍛えられました。
みんなからもらった、おもろくて幸せなこれまでがあればこの先も生きていけるなと思います。

しかし今、どんどん自分がおもろくなくなっていって、関西人としてこれはちょっと己のプライドが許さない。
ということで、みんなが好きでいてくれたおもろい自分であるために、ちょっくら次のおもろいこと探しの旅にでも出るとするかな。
おもろいがその辺に落ちてあるかは知らんけど。

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