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関谷恭子句集「落人」

関谷恭子さんとは蒼海で句座をご一緒させていただきました
柔らかな言葉遣いで確かな描写をされる、端正でどこか遥かな句を詠まれる方です
恭子さんの句をとれば誇らしく、とっていただければ嬉しい、そのように過ごした四年間でした
あとがきによれば「武者修行」であったとのこと
さらには、ご自身落人の末裔でいらっしゃるとのこと
ああ、恭子さんって、恭子さんって、武者で落人、武者で?落人?
腑に落ちるような落ちないような…
けれども、ここに詠まれ、描かれた笹百合は確かに恭子さんその人です
素晴らしい句集をありがとうございます
ますますのご活躍をお祈り申し上げます

草朧(2010〜2014)
湖沿ひの家に灯ともり草朧
借景に有馬の灯り夏座敷
今朝秋の市に荷を解く古物商
狐火やしんじつ暗き塞の神

驟雨(2014〜2017)
春雨や身ほとりのものみな無音
幕間の騒めきの中豆の飯
根のものをあまた俎板始かな

無月(2018〜2019)
石置きの屋根の連なる佐渡のどか
これよりは一村もなし朴の花
放らるる朝刊の束霧の駅
甲斐犬の甘えてをりぬ春隣

初雪(2020〜2021)
落し文だいじに燐寸箱の中
古池ふつと八月の息を吐く
波音に震へて能登の白障子
着ぐるみの口から巷見る師走

人日(2022〜2023)
花は葉に橋くぐるとき舟しづか
ががんぼの沈みがちなるひとつがひ
風筋の黒く立ちたる秋の波
選ばれて牛は荷台へしづり雪

特に心に残った句をあげました
ここがいい、ここが好きと言いたいことはいっぱいあるのですが、長くなってしまうので、心残りですがあげるにとどめたいと思います

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