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「小学生なりの爆買い」の話
小学校のころ、僕には青田くん(通称あおちゃん)という友達がいて、彼の家は周辺の土地を所有する大地主だったことから、いわゆるボンボンの家の子でした。
そんなあおちゃんと僕は家が同じ学区だったこともあり週に8日会う大親友でした。
(ちなみに仲良くなったきっかけは、初登校日の帰り道、「傘を杖にしたおじいさん」という謎のくだりで意気投合したのがきっかけです)
2年生の夏休み、あおちゃんは通っているスイミングスクールのテストに合格したお祝いでおじいちゃんから貰った1万円を握りしめ僕の家にやってきて開口一番「カメクラ行くぞ!」と宣言、僕と近所に住んでいた「ほーちん」こと保科くん、二人を連れ立って一路カメレオンクラブ(カードショップ)へ向かうのでした。
当時、小学生たちの間では『月刊コロコロコミック』という漫画雑誌をきっかけに一大ブームを巻き起こしたデュエルマスターズというカードゲームが全盛期で、あおちゃんには自身の戦利品「おじいちゃんからもらった一万円」という小学生にとっての大金を、すべてそれにつぎ込もうという算段がありました。
そんな大金を持ったこともない僕たちは、夏の猛暑のせいか、それとも背徳的に感じられるほどのカードを購入せんとすることへの高揚感のせいか、汗をダラダラ流しながら、死んだような目の店員さんからデュエルマスターズの拡張パック(1パック158円でカードが5枚ランダムで入った商品)を1万円で買えるだけ買い、店から一番近かった僕の家へと帰還、いよいよ大開封大会を高らかに宣言したのでした。
(ちなみにあおちゃんはめちゃめちゃケチなので、僕とほーちんの「1パックくらいおごってくれるんじゃないか」という淡い期待はしっかりと撃ち滅ぼされました。)
取り巻きの僕とほーちんが(無賃で)開封の手伝いをし、あおちゃんはひとつひとつのパックをかみしめるように開けていきます。
「うぉ!」
あおちゃんが感嘆の声を上げたのは全員で10パックほどを開封し終わった時でした。
レアカードが出たのです。
『暗黒道士ブラックルシファー』
いかにも悪そうな顔をした異形を見つめニンマリするあおちゃん。ただただ(無賃だから)羨ましい(恨めしい)僕とほーちん。
しかしながら、この時内心「レアカードなんて出るな出るな」と思っていた僕(なんて奴だ)の思いはこのあと現実となりました。
数十ものパックを開けていくうち、あおちゃんの表情は少しずつ曇り始めました。
レアカードが全く出ないのです。
n回目の暗黒道士を除いて。
そう、開けても開けても何故か出てくるレアカードは『暗黒道士ブラックルシファー』『暗黒道士ブラックルシファー』『暗黒道士ブラックルシファー』。
最終的に50パック近い数を開封して出たのは5人の暗黒道士。
あおちゃん事実を飲み込むと同時に、プリプリ怒りながら帰っていきました。
僕は同情と面白さが半々くらいの気持ちで呆然とその場に立ち尽くしていましたが、横のほーちんがニンマリしているのを見て、感情の「おもろ」スイッチをフル稼働させ、この出来事のことを「ブラックルシファーの呪い」と呼ぶことに決めたのでした。
でも、そんなケチで怒りっぽいあおちゃんも、みんなで開けたパックのゴミをちゃんと家に持ち帰るので憎めない奴です。
画像出典:デュエマ販売カーナベル
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