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モニターを理解するためにモニターじゃないヘッドホンを使う

noteでモニターヘッドホン探訪記というマガジンを勝手に書いています。

そこでひとつ疑問が生まれると思うのです。

「モニターって普通のヘッドホンと何が違うのか?」

その疑問のためにうちにある「モニターじゃないヘッドホン」のレビューをしてみようというのが今回の趣旨です。
それで、うちにある唯一のモニターじゃないヘッドホンがこれ。

比較記事を書くにしては価格も安いしドライバーの口径も小さいのですが、まあそれは横に置いておきたいと思います。

視聴環境は一貫してこの記事と同じです。

装着感にも一応触れておくと、ドライバーが小さいので耳たぶが圧迫されることもなく、そんなに耳は痛くならないです。
ただ、日常使いできるかと言われると、これは半開放型なので音漏れがガンガンします。例えば職場で完全に外音を遮断して音楽は聴けない。なんていう方であればお勧めです。

肝心の音質と、モニターヘッドホンとの違いについて個人的に感じたことを述べていきたいと思います。
音質の違いで感じるのは大きく2点。それは、「解像度」と「帯域」の違いです。

まず解像度ですが、これはヘッドホンのレビューで必ず書かれている項目だと思います。そんなにスピーカーとかヘッドホンとかに凝ってないし詳しくないという方に例えて説明すると、こんな感じだと思います。
「ここにリンゴとオレンジとバナナとスイカからできたスムージーがあります。このスムージーからリンゴの味だけを感じ取れますか?」
これは果物がどれだけ砕けているかに影響すると思いますが、果物の味を別々に感じ取りやすい(果物が荒く砕けている感じですかね)ものを解像度が高い。反対に果物の違いが分かりにくく全体的にまとまって感じる。これを解像度が低いと表現されると思います。
ヘッドホンやスピーカーにおける「解像度」とは、先の例の果物が各楽器やボーカルに相当します。つまり、ロックバンドのベースだけを聞き取りたいとか、オーケストラのファゴットだけを聞き取りたい。といった用途にはモニターヘッドホンの方が適しているといえるのと思うのです。
それも、各楽器を別撮りしたトラックからミックス作業を行うために開発されたモニターヘッドホンだと、それぞれの音がどれぐらいのレベルで鳴っているかの再現性が正確でなければ、完成した曲はバランスの崩れたものになるでしょう。

それでは実際にPortaProとモニターヘッドホンは解像度が違うのか?
これはパッと聞いただけで全然違うとわかるレベルです。同じ曲をPortaProで聴くと、モニターヘッドホンでは聞き分けられる楽器の違いが他の音に埋もれて聞き分けが難しいと感じます。気持ちよく音楽を聴くという用途であれば気にならないでしょう。しかし、音楽制作という用途であれば、いろいろな音がぐちゃっと鳴っているヘッドホンで調整するより、それぞれの音が聞き取れるヘッドホンで調整するほうが簡単ではないでしょうか。

これが私の考えるモニターヘッドホンと普通のヘッドホンの解像度の違いです。

次に帯域ですが、これも上記のスムージーで例えてみましょう。解像度では、スムージーに使われている果物を「楽器」としましたが、今回は果物を音の高低(周波数)に置き換えてみます。(今回はラウドネスみたいな人の聴覚特性は無視して考えます。)例えばリンゴを低音、オレンジを中音、バナナを高音として考えてみましょう。それらの果物からできたスムージーがあります。飲んでみると「バナナジュースじゃね?」って思うぐらいバナナの味しかわからなかったらどうでしょうか?バランスが悪いと感じますよね。
これは音についてもいえることです。よくレビューで書かれる「ドンシャリ」というのもこの帯域のことを言っています。じゃあバナナ=高音が強いヘッドホンでミックス作業をすると、完成した楽曲はどうなるでしょうか?
「このヘッドホンは高音が中低音に比べてこれぐらい強く出る。」という前提を知らなければ「高音がうるさい」と感じて「高音のレベルを下げる」可能性がありますよね?そうして完成した楽曲をすべての帯域バランスがフラットなヘッドホンで聴くとこう思うはずです。
「なんか中低音がドンドン鳴ってて高音に響きがないな。」とか。

それではPortaProとモニターヘッドホンで帯域バランスは違うのか?
これも違って感じます。
PortaProでは、中低音が強めに感じるため、高音が埋もれて聞こえます。これでは正確に音のバランスを聞き取るのは難しいです。

最後に、ドンシャリやモニターじゃないヘッドホンが悪いというわけではありません。PortaProは小型軽量でサイズと価格の割には音はいい部類です。そして、一般に「音楽を楽しく聴く」という用途に、モニターヘッドホンは過剰かもしれません。これは音楽の楽しみ方によって、向いているヘッドホンが違うというだけの話です。決して正解がある話ではないのです。
現に私はPortaProを職場のBGM再生用として使っています。そういったながら作業にピッタリの機種だからです。外音を遮断する密閉型は使いにくいし、かといって半開放のK240 Studioではサイズ大きくて感度が悪いからスマホから鳴らしにくい。といった用途だとPortaProは小さくて感度も高くスマホで鳴らせて開放型と用途にベストマッチしているのです。

自分に取っての音楽の楽しみ方を知るためにも、コロナが収まったら街の電器屋さんなどにいって、いろいろヘッドホンを視聴して、自分に取ってベストな一台を見つけてみてください。
音楽制作をしている方も、ぜひ視聴してみることをお勧めします。音は写真や映像と違って家で再現しにくい要素です。最近はYouTubeでバイノーラル録音したヘッドホン音源を公開してくれているレビュアーもいて、以前よりは簡単に比較できるようになりました。しかし、それらを聞いてもやはり実際に自分の耳で聞いた音とは異なった印象を受けます。

大切なのは自分に取ってのベストであって、他人が評価するベストではないということです。

この記事があなたのヘッドホン選びの参考に1ミリでも役に立てればと思います。いいヘッドホンでいい音楽ライフを。

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