見出し画像

明るい町 (磦田空)



またこの町に来ることができたので、あなたに手紙を書いています。
気がついたのですが、この町にはいつも白く小さい花がたくさん咲いています。道路の植え込み、誰かの家の軒先、普通なら雑草が群生しているような公園の隅、ポストの根元、立ち並ぶ家家のカーテンと窓ガラスのあいだ、思えば白い花が視界に入らないことがないような気がして、それにどうして今まで気がつかなかったのか不思議に思うくらいです。街はいつもとても静かなのに明るい気がするのはその白い花が咲いているせいかもしれません。
さきほど、何回か前にお話しした公園にまたたどり着くことができました。そこにも白い花が、前に乗ったブランコも埋まってしまうくらい、一面埋め尽くしてざわめいていました。

わたしがここにどうやって来たのかも、わたしがこれからどうやって帰るのかもわからないけれど、またここに来たら手紙を書きます。届いているのか確かめる術もないけれど、それまでどうぞ穏やかにお過ごしください。





企画: 03. 見知らぬ土地からの手紙

 SCOOLに宛てて、様々な遠い土地から手紙が投函され、ここに集いました。
 手紙とは不思議な連絡手段です。手紙は、それを受け取る人にとっては、遠く離れた場所で書かれ、何らかの具体的な運搬手段を通じて、ある時間経過を伴って、此処に辿り着きます。その手紙を通して、受け取る人は、自分がいる世界とは異なる世界を感じることができます。
 SCOOLに展示された手紙の総体は、いわば、どこか今よりも前に書かれた遠く離れた土地の物語の集積です。手紙の文章を読んでいただきながら、手紙が投函された、ある場所、ある過去に思いを馳せてみてください。

企画作品一覧



修了展示 『Archipelago ~群島語~』 について

佐々木敦が主任講師を務める、ことばと出会い直すための講座:言語表現コース「ことばの学校」の第二期の修了展が開催された。展示されるものは、ことば。第二期修了生の有志が主催し、講座内で執筆された修了作品だけでなく、「Archipelago ~群島語~」というコンセプトで三種類の企画をもうけ、本展のための新作も展示された。2023 年8 月10 日と11 日に東京都三鷹のSCOOL で開催。

『Archipelago ~群島語~』展示作品はこちらからご覧ください。



「群島語」について

言葉の共同性をテーマとし、言語表現の新しい在り方を試みる文芸誌『群島語』
2023年11月に創刊号を発表。

今後の発売に関しては、X(Twitter)Instagram で更新していくので、よければ是非フォローお願いいたします!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?