盛るのは嘘のはじまり~その3(嘘にしない覚悟で盛るならば)

 私の仕事の中では、お客さまの良いところを見つけるお手伝いをすることがあります。

 そして、見つけたならば、それを発信しないと。いや、その前に、ほとんどの場合、社内にそれを認識させることも重要な事項となってきます。一所懸命働いている従業員さんたちは、自分たちがどれだけ魅力的なこと、人様に役だっていることをしているのか、という実感をもっていないことが多いからです。まずは、それを認識していただいて、明日への活力、モチベーションアップが、外部への発信の前に、大切なことだと私は思っています。



 実は、この仕事、「盛るのは嘘のはじまり」と、密接に関係しているのです。



 「見つける」のとおり、気づいていないことが多い、良いところを見つけます。気づいていないと、それを維持することも出来ません。積極的な場面では、新規事業展開をするときの武器を見つけることもできない訳です。だから、気づくのは大事。



 ここで、「あ、こんなすごいことを我々はしていたんだ」と気づいて、やる気が出て、自信をもってお客さま、将来の顧客にアピールすることは、もちろん良いことだと思います。でも、そこに「盛り過ぎ」があったらどうでしょう。

 それは、このテーマのとおり、嘘の始まりです。



 それでも、それがすべて悪いとは言いません。少し盛って、それに現実が追いつくように努力する。そういう、士気を高める手段として、ということもあるからです。ただし、それは、責任が伴います。士気を高めて、現実をきちんと追いつかせてこそ、お客さまに嘘をついていない、と言えるわけです。



 そういう考え方なので、私は「盛る」依頼はきっぱりとお断りします。断り方はいろいろですが、「できません」と、あえてひと言のことが多い。そうすると、「あんたはできないといったけれど、○○というコンサルタントはやったぞ(だからあんたはダメなんだ)」みたいな後日談を頂くことがあります。たしかに、そうやって、上記のとおり、それを社内の士気を高めることに活かして、現実にそのステージにあがったならば、私の見立てが悪く、その○○という方が優れていた、ということになるでしょう。

 でも、これは経験的に、そういう依頼をする方は、たいていは、ステージはあがらず、お客さまに嘘をつくことになります。



 ここで一つ言えることは、上記のように、依頼をきっぱりお断りするのは、私自身が私を盛ることを避ける手段になっているということです。



 盛るのが悪いということではありません。盛ったからには、現実にそうなる。その覚悟があるかどうか、ではないでしょうか。

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