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“歌系の趣味”から自己観察4〜誉められて育…

 “歌系の趣味”をなぜ続けているのか、と問われて、「生き方を考えるために続ける」と、答えたことをきっかけに、“歌系の趣味”にまつわるエピソードから自分観察してみようというテーマ4回目です。
 前回の最後、「なぜ、緊張するのだろう。なぜ、怖がるのだろう。それがわかれば、克服の仕方が見えてくるかもしれない。」。そのきっかけの一つとなったエピソードからの観察です。

おじとの再会で

 私の両親は離婚しているので、父方の親戚とは、両親の離婚以後は、ほとんど交流はなくなりました。従兄弟とはかろうじて、細々と連絡のやりとりはありましたが、それがきっかけで、おじ・おばと、10数年前に再会する機会がありました。
 そのときのおじの言葉が、前回、人前で一人で歌うことがなぜ怖いのか、考える中で、大きなヒントになった、というお話です。
 再会のときには、父は亡くなっていました。父は離婚後に、このおじ・おばや、祖父母の自宅の近くに住んで、ほそぼそと暮らしていたそうです。ほそぼそだけれども、大好きだった歌を活かして、カラオケの先生などもやって、人生はそれなりに楽しんでいたらしいことも聞きました。父の最晩年に近いころのカラオケの録音テープもいただいて、「おやじ、うまくごまかして歌っているな」と思いながら、そのテープを聞かせていただきました(「ごまかしている」は、高評価です。知る頃の声の美しさはなくなりましたが、それをカバーする技術と表現力がすごかった、という意味です)。
 さて、そんな風に、父の人生も「歌」は抜きでは語れないそれでしたから、おじとの会話もその方面に向かいます。そこで「のりゆきは、おやじには(文句を)言われ続けていたよな。見ていて、かわいそうなくらいだったよ」と、おじが私の幼少時代からの話を、ボソっと語ったのです。
 おじと再会、という場面ですから、人前で一人で歌う恐怖の克服のことなど、一つも思っていません。でも、このひと言で、ハッと気づいたのです。

 そういえば、父に歌を褒められた経験も記憶もない

褒められた記憶がない

 おじと分かれてから、子どもの頃の、父との歌に関する接し方を思い出してみました。

 褒められたことがない、というと、やや不正確で、「○○は良かったけれど、××はダメだな」みたいな助言が多かったといえます。そして、会話が「××はダメだな」で終わりますから、印象としては、ダメだしだけになっていきます。

 そして、いつの頃からか、

歌を歌うと、お父さんに注意される。お父さんに注意されないように、上手に歌わないといけないんだ。

そう思うようになっていたことに気づいたのです。

小学校の恩師のことば

 小学校3年生のときの、音楽の授業でだったと思います。「ドレミファソラシド」の音階を歌うだけの試験を、40人のクラス全員がやりました。順番が回ってきたとき、「歌」ではないものの、やはり緊張しました。だから、思いっきり力んで、ドレミ…と歌い出しました。すると、ファで声がひっくりがえり、そこからさきは、ニワトリが首を締められた状態の声になりました。あー、こんなものもまともに歌えない。そう思っていたら、音楽の先生は「小山くん、歌は上手に歌おうと思ったらうまく歌えませんよ」と助言してくださいました。でも、まったくその言葉の意味は分かりませんでした。

 しかし、今思うと、ここでも、「お父さんに注意されないように、上手に歌わなきゃ」という気持ちがあまりにも強く出てしまったのだと思います。

 ちなみに、この音楽の先生とは、生意気な小学生だったので、在学中ずっと対立しました。でも、卒業後に、一番記憶に残っている先生であり、(いずれ紹介すると思いますが)歌にまつわる大きなエピソードもあって、“歌系の趣味”の恩師だと、自分では思っています。

褒めて育てることの功罪

 子どもは褒めて育てる、なんて教育論もあります。

 父も、一往、1度は褒めて、そのあと、さらによくなるための助言をくれたのだと思います。でも、言われた本人(私)は、褒められた記憶がないと思うような印象でした。そして、褒められたことなく育つと、自信もなくなります。恐怖心も大きくなるのは、自然なことではないでしょうか。

 でも、一人で人前で歌う恐怖心を克服するのに、原因のひとつ、しかも、大きなひとつに気づくことができたのは大きな前進でした。すぐには解消はできない(いや、今も解消はしていません)ものの、対応策を工夫することにはつながったり、気持ちの持ち方、意識をかえるだけで、だいぶ状況は改善することになりました。

今回のまとめ

 “歌系の趣味”から自分観察。趣味である歌だけの話ではない、ということを最後に一往触れておきたいと思いました。褒められた経験のないものの恐怖、でも、それに気づくだけで、対策が考えられたり、糸口が見つかったときの、前向きな姿勢。そういうものは、すべての営みであると思うのです。

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写真は、「みんなのフォトギャラリー」から「ダメ出し行列」というタイトルのものを使わせていただきました。ダンスイベントの写真だそうですが、私は、ダンスはまったく苦手で、これだけはいまだに克服できておりません。


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