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【実施報告】「官民連携まちづくり事業視察ツアーin伊勢崎中心市街地」を振り返る

地域づくり協議会事務局の星野です。今回は、令和5年10月21日に伊勢崎中心市街地で開催した「官民連携まちづくり事業視察ツアー」について、レポートします。

近年、地域づくり分野においても「官民連携」がキーワードに挙げられていますが、具体的にどのように進めればよいのかが分からず、二の足を踏む行政、団体は少なくありません。
こうした背景を踏まえ、「まきばプロジェクト」の代表であり、本協議会の副会長を務めていただいている秋山副会長にご協力いただき、官民連携でまちの活性化に取り組んでいる「伊勢崎中心市街地」を舞台に視察ツアーを実施しましたので、その概要をお伝えします。


今回の視察ツアーのスタート地点は、伊勢崎駅南口。ここから2時間半かけて伊勢崎市の中心市街地を視察してきました。当日は駅前広場や駅前通りなどでイベントが開催されており、多くの方で賑わっていました。

伊勢崎駅南口からスタート。沼田会長(左)・秋山副会長(右)

住民、地域との距離感

視察ツアーをしていて、驚いたのは、行く先々で秋山副会長が多くの方々から声をかけられていることでした。今日のイベントの感想やプロジェクトの進捗報告、さらには今後の企画の相談など、気軽に話のできる関係性こそが「官民連携」を進める上で重要だと感じました。

これらの関係はすぐに構築できるものではなく、地域に入って住民の方々のお話をしっかりと聞き、対話を重ねる。こうした積み重ねで信頼関係が構築され、現在の関係性が成り立っているものだと思います。

まちなか活性化支援会議

伊勢崎市では、中心市街地における経済活力向上と地域課題の解決を支援するため、令和3年度に「まちなか活性化支援会議」を立ち上げました。
この会議は、官民のメンバーで構成されており、各メンバーの専門性を活かし、まちなかの活性化に資するさまざまな取り組みを自ら実施しているほか、こうした取り組みを行う団体などへの支援も行い、まちなかにおける新たな価値の創出を目指しています。

秋山副会長から「いまの伊勢崎市の取組があるのは、『まちなか活性化支援会議』がきっかけで、色々な団体や個人が活性化のために一緒に取り組むことができるようになってきたから。一緒にやることで、お互いの不足する部分を補うことができて、大きな成果が出るようになってきた。伊勢崎ではそういう環境が整ってきた。」とのお話がありました。
参加者からは、官民連携のためには、こうした土台づくりが大切だという感想が多くありました。

行政は通訳者であり、井戸を掘る役割

今回、秋山副会長と一緒に伊勢崎市商工労働課の石原さんが同行してくれました。参加者から「公共空間を使ったイベントはハードルが高い印象があるが、どうやったらこんなに公共空間を活用(開放)できるようになったのか?」という質問に対して、石原さんからは「我々は通訳者としての役割。運用ルールの中で、どうやったら民間団体のやりたいことができるのか。『その方法だと難しいかもしれないけれど、これだったらできるのでは?』を一緒に考え、市役所内の関係課と調整を行う。そんな通訳者としての役割を担っている。」との回答がありました。

秋山副会長からも、伊勢崎市役所のある方が「水を与えるのではなく、井戸を掘ることをやりたい(水は使ってしまったら終わりだけれども、そうでない支援を行いたい)という考えをお持ちで、その考えが市役所の内部でも浸透していって、公共空間の活用だったり、官民連携が進むようになった」というお話がありました。

参加者の皆さんからは、こうした伊勢崎市役所の官民連携に対する姿勢や考え方が、官民連携がうまくいっているポイントだという意見が多く聞かれました。

視察先

ここからは、今回の視察ツアーで回った箇所を紹介していきます。

1.伊勢崎駅

伊勢崎駅構内にストリート駅ピアノが設置されています。
古くから放置されていたピアノを改修し、伊勢崎らしさを出すため「いせさき銘仙」の図柄をラッピング。高校生がライブをしたり、いろいろな方がピアノを奏でて、人と人との交流につながっています。
各地様々なペイントを施しているピアノはありますが、銘仙柄のピアノは世界でこの1台のみ。音楽を通して、銘仙の素晴らしさも伝える唯一無二のピアノになっています。

世界で1台だけの「銘仙柄」ストリート駅ピアノ

この柄は、世界的にも評価されているロンドンにあるビクトリア&アルバート博物館に寄贈された銘仙と同じ柄で、アメリカの博物館でも同じ柄が展示・保存されることが決定しています。
「いせさき銘仙」は、今まで別の物に活用されたことがなかったので、ピアノをきっかけに広まっていけたらとお話されていました。

2.伊勢崎駅南口駅前広場

伊勢崎駅南口前の公共空間を舞台に「伊勢崎市まちなか活性化支援会議」が主催する「いせさき楽市」。
こちらのイベントでは、屋外マーケットだけではなく、様々な催しが同時開催されていました。

イセサキ駅マエ謎解きウォーク
LINEを使って、謎を解きながら駅周辺を回ってもらうイベントです。駅周辺のランドマークを題材にした謎を解き明かしていくことで、「伊勢崎駅を楽しく知っていただく」ことができます。
「いせさき楽市」という定期的に開催される催しがあるからこそ、同時開催をすることで相乗効果を生むことができ、また新しい企画ができるきっかけになっています。

「イセサキ駅マエ謎解きウォーク」開始地点

プレイヤーの導入について

まちなか活性化支援会議で「まちなかのプレイヤーが欲しい」と市に「提案」したことで、2名の地域おこし協力隊員が着任されました。ミッションはフリーで、所属で抱え込んでいる形式ではありません。「まちなかの活性化に特化した」活動で、まちなかにエリアを限定し様々な企画に取り組んでいます。今回の「イセサキ駅マエ謎解きウォーク」も協力隊のお二人が企画したものです。

駅前広場にて「まちなか高校生フェスタ」
駅前広場横には多くの「キッチンカー」が出店

いせさき骨董市銘仙市
関東三大骨董市「東京東郷神社」「川越骨董市」「天満宮古民具骨董市」。
その「天満宮古民具骨董市(桐生市)」を主催されている方が発起人となり、伊勢崎でもと始まったそうです。

骨董市の様子
骨董市銘仙市は「大手町パティオ」で開催

開催場所の大手町パティオは、伊勢崎駅周辺の賑わいを創出することを目的に、気軽に立ち寄りイベント等で交流できる多目的な広場機能を持った公園として整備されていて、骨董市銘仙市に最適な施設です。

3.いせさき明治館

明治45年、県で一番古いと言われている木造洋風医院建築。

いせさき明治館

館内では「いせさき銘仙」が展示されていました。銘仙は、伊勢崎・足利・桐生・八王子・秩父が5大産地といわれていて、絹で織った絣(かすり)のことを銘仙といいます。縦糸を染めて平織りにするのが一般的ですが、「いせさき銘仙」は、両糸に同じ柄を染め一本一本柄を合わせながら織っていくので、同じ色が重なり色鮮やかなのが特徴です。
織り上げるには15工程必要で、15人の職人がいないと作れません。現在では、「純伊勢崎」の銘仙は作ることができないと言われています。
8年前の復活プロジェクトでは3柄16パターンを織り上げ、そのうちの一反の着物が、ビクトリア&アルバート博物館に永久保存となっています。

東武伊勢崎線がありますが、なぜ「伊勢崎」なのか。それは、絹製品を運ぶためで、鉄道は産業のために引かれたからです。明治館も、明治時代に設計士・棟梁ほか全員が伊勢崎の方、「純伊勢崎市」で作られています。それくらい、いせさき銘仙で伊勢崎が栄えていました。

4.いせさき明治館前

いせさき軽トラ市
織物組合東側交差点から足利銀行伊勢崎支店交差点までの約250mのエリアでは、軽トラ市が開催中。明治館前の駐車場では、豚の鉄板焼きが配られていて、私も一皿いただきました。

伊勢崎商工会議所が主催する「いせさき軽トラ市」

5.伊勢崎まちなか新名所

昨年、伊勢崎市の「まち歩きのワークショップ」に参加した方が「まちの魅力」を再確認され、いせさき銘仙のショップを開業することになりました。プレイベントとして、楽市に合わせ銘仙の販売イベントを開催。銘仙を着られていたお客さまも多く、とても賑わっていました。

新たに「いせさき銘仙」のショップが誕生します

番外.OCHAVA茂木園本店

まちなか新名所から信号を挟んでお向かいに、お茶屋「OCHAVA茂木園」本店があり、急遽お邪魔することになりました。こちらでは、お茶を購入できるだけではく、店内でいただくこともできます。

「OCHAVA茂木園」本店駐車場の一角

6.伊勢崎神社

世界でもめずらしいプロペラを奉納している神社です。ぜひ訪れて見つけてみてください。

伊勢崎神社

振り返り

最後に伊勢崎神社にて会場をお借りして、参加者の皆さんで感想を述べたり、質問タイムを設けました。

参加者からの質問
これらの取組を行うにあたり、行政側の予算について教えてもらえないか。

【回答】秋山副会長(まきばプロジェクト)
伊勢崎駅前の広場は、整備はされたけど使われていないという実情があり、スペースがあるのなら使わないともったいないと、当時の経済部長にお話をしました。その後、使用できるとの連絡が来まして、夜のビアガーデン的な取組から始めました。そこから始まったので、市に予算をつけて欲しいという話は全くなかったです。行政には、使用許可・緩和をやって欲しい。お金はいらないから、自由に使わせてというところです。
今では、まちなか活性化支援会議が立ち上がり、チラシの作成やPRで予算を組んでいただいています。回覧版で周知などは民間ではできませんので、行政にバックアップいただいています。

【回答】伊勢崎市商工労働課
まちの資源を使って儲けていただき、まちに再投資していただければ。公共に再投資するための儲けを出す場所として伊勢崎を選んでもらうための支援や補助金等はもちろんやっています。まちづくり団体の方や事業者の方が活動の場として選んでいただくために、我々も投資しています。
その活動の収益で【市に再投資してもらう】という形が理想なので、まきばプロジェクトさんにも協力していただいています。市が営利活動をなるべく開放してあげることが一番大きな役割なのかなと思っています。

伊勢崎神社にて意見交換

アンケートから抜粋

参加者からの感想

・色々な団体が連携し合って、行政も仲介をしながら、一堂に会するのは、凄く時間を掛けて、理解し合いながらここまで来たのかなと。みんな自分の言い分だけになりがちですが、ここまで仕上げたのは凄い。

・活動を起こす人、事を起こす人がたくさんいれば、地域はより良くなると感じました。誰かが頑張るのではなく、同時多発的に色々な人が色々な形でやるのがとても大事だと思いました。また遊びに来るのが楽しみです。

・昨年、下仁田町では「街なか活性化基本計画」を策定し、今年度から具現化に向けて動き出してるところです。今回の実践講座に参加してみて、行政としては、プレイヤーが活躍できる土台づくりを進めること、プレイヤー同士を繋げてあげることの大切さを学んだので、今後に活かしたいと思いました。

伊勢崎市商工労働課の「ニーズは市役所の中にはない、持ってる方の意見を市役所のルールでどう形にするかです。」という言葉で、他の県市町村でも、このような形が広がっていけば、きっと地域はもっと良くなると感じました。

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