「ベストアルバム」なるものが如何にクソかを説明していく

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ベストアルバム」ってご存じかね?音楽好きならずとも、聞いたことはあると思う。簡単に説明すると収録曲の殆どが既発シングル曲(特にA面)で占められたアルバムの事だ。新曲が大半を占めるものはベストアルバムとは言わず「オリジナルアルバム」などと言うんだ。つまりベストと通常のアルバムの違いは「収録曲の新曲の比率」と言って差支えない。
さて、説明が済んだので早速ベストアルバムのクソさについて語らせてもらう。

通常のファンには不要、または失礼
まず大前提として、ベストアルバムってのは新曲が殆ど入っていない。殆どだ。これは何を意味するかというと通常のファンには全く持って不要って事だ。ファンであれば「新曲」というのはオリジナルアルバムかシングルかは分からんけど、発表された時に買うかレンタルするかで既に散々聴いてるからね。そんな散々聴いた過去の曲で9割以上を占めているアルバムなんて全く持って不要なわけだ。というわけで新曲ゼロのベストアルバムは買わなくて良いだけなので大した問題じゃない。問題は新曲が1、2曲だけ収録されている形態のベストアルバムだ。この形態の悪辣さがお分かりいただけるだろうか?ファンは全ての曲を聴きたいのでその1、2曲の為にベストアルバムを購入するハメになるのだ!こりゃひどい!まぁ最近では配信/ストリーミングで聴く人も多いのでこういう被害は昔ほどでは無いが…CDで聴く環境しか無い人には辛いものがある。とにかく何が言いたいかというとベストってのはファンにとっては意味の無いアイテムという事だ。熱心なファンであればあるほど不要だ。

偏った選曲の為に誤解を生む
日本では何故か入門編としてベストが推奨される事が多いがそれはクソな風習である。ベストから入門させるというのはJ-POPをより早い消費のサイクルに追い込み、長い目で見れば新規ファンを減らし、寿命を縮めている。例えばB'zの初ベスト。有名な金銀2枚組だ。2枚合わせて1000万枚以上売れたという恐ろしい記録を持つ。幼少の頃我が家にも当然のようにあったが特にB'z好きがいるわけでもなく、なんとなく聴いていた。興味の無い人間からするとB'zの音楽性はあのベストが全てだと思ってしまうだろう。アルバムを聴くと結構幅広くトライしている印象だが、ベストを聴くと分からない・・・どころか「この人達はこういう感じ」と決めつけられ、変なイメージがついてむしろ新規ファンがつかないのでは?と思ったな。サザンのベストなども分かりやすい。夏!エロ!みたいなのばかりと勘違いされる選曲が殆どのようだ。実際はテクノ、ニューウェイブ、AOR、シテイポップなど今人気の80s!って感じの曲も多いがそういう側面などないかのように誤解されるだろうな。

シングル、ポップ寄りの曲だけを網羅している為、飽きやすい
ベストアルバムはその性質上、ポップな曲に偏りがちだ。ポップというと定義が難しい上に広い意味を持つのでここでは「良さがすぐに分かりやすい曲」とさせてもらう。ポップな曲のリスナーにとってのデメリットとしては聞き飽きるのが早いという事にある。聞き飽きるのが早いというのは覚え易いという事と言える。シングル曲の役割は色々あるが、売れるモノを作るというのは一つ役割としてあると思う。売れるものとは即ち覚えやすく、ポップで、キャッチーなものだ。しかしシングル曲は良さを理解するのに時間がかからない半面、飽きも早いものだ。そういうシングル曲や覚えやすいキャッチーなアルバム曲で構成されているベストアルバムは、オリジナルアルバムに比べて飽きるのが早いというのは確実にあると個人的に思う。飽きるのが早いだけならまだ良いが、飽きた後オリジナルアルバムに手を出す意欲も同時に無くなっている事が往々にしてあるというのは、作り手にとっては明らかにマイナス。やっぱベストはクソだ。

オリジナルアルバムを心底楽しめなくなる可能性がある
これは少々説明が難しいので実体験を元に語ろうと思う。
自分はミスチルが好きでアルバムのレビューも書いてるぐらいだが、最初にミスチルに触れたのはベストアルバムだった。インパクト大のそのジャケットから「肉と骨」とも呼ばれるミスチル初のベストだ。2枚組の大ボリュームで「1992-1995」と「1996-2000」に分けられている。友達から今は亡きMDを借りて聴いたのが人生初ミスチルだ。購入、レンタル、更にはCDを借りる以下の「MDを借りる」というジャンク且つグレーな出会いであった(笑)。一部曲が入って無かったりしてかなり適当なMDだったが結構ハマった。シンプルに切ないメロディーが好みだった。しかし何度も繰り返し聴くうちに最初は入ってこなかった歌詞も、アレンジも段々馴染んでくる。そして「1992-1995」と「1996-2000」では曲の雰囲気がまるで違う事に気付いた。
どういう経緯でこうなったのか興味を持った自分はオリジナルアルバムを一枚目から順に聴き、そこでようやくミスチルの真の魅力に気が付く。ベストに入ってない曲も良いのが大量にあるという事を知るのだ。そこからはしっかりハマって今に至るわけだが、正直今となっては例のベストアルバムを聴かなければよかったと本気で後悔している。なぜかと言うとベストアルバムを聴き過ぎたが為に、オリジナルアルバムを聴く際に妙な感覚に陥ってしまうからだ。
これはズバリ聴いた回数によるものだった。オリジナルアルバム「深海」を例にとる。所謂コンセプトアルバムで全体の流れで聴いてまた別の価値が発生するタイプのアルバムで自分はかなり好きなのだが、例のベストアルバムにこの「深海」から3曲収録されている。「深海」を流れで聴いた時、初めて聴く曲とイントロクイズで即答できるレベルで聴きまくった「名もなき詩」「花」「Mirror」の3曲が入り乱れているのだ。この悲しみ、伝わるか(笑)!飽きる程聴いた曲とほぼ聴いた事の無い曲が交互にくるギャップ!コンセプトアルバムの趣旨がズレてしまい、集中力が下がる!それでも自分は「深海」が相当好きだ。好きなだけに「もし全部知らない状態で聴けていたら・・・」と悔やんでも悔やみきれん!好きなだけに尚更じゃ!「名もなき詩」「花」の2曲は大ヒットシングルだから仕方ない、というかバンドもそれ(聴かれまくった事)を想定してアルバム内に配置したと思うんだけど、アルバム曲である「Mirror」をベストに収録したのはマジで許せねえ!深海から「Mirror」をセレクトするセンスも意味も分からんぞ!ポップだからか?
「深海」以外だと「Q」というアルバムからのベスト収録曲のチョイスも意味不明だ。よりによってミスチル史上一番ユニークな「Q」というアルバムから「つよがり」と「Hallelujah」を収録するとはね。これだけ抜き取ったら勘違いされるぞ!

長くなったけど、とにかくベストは初心者に変な誤解を与えて本気でハマれる可能性を削いでる事があるシロモノだと言いたい。

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