雲の上のお茶会

 頭がぼーっとした。
 脳がひどく酸化した自転車みたいに、キイキイと変な音を出しながら動いているようだった。そうやって動かない頭を動かしながら、ふらついた足取りで私は一段一段と階段を登っていった。進むごとに、何かに心臓をギュッと掴まれているような気がして痛かった。それでも私は歩き続けた。ふと、お茶会を開こうと思った。雲の上で、お茶会を。それを想像するとぐうとお腹が鳴った。
 やがて私はたどり着いた。
 まず初めに雲が見えた。真っ青な空を優雅に漂う雲。空はこの世界をどこまでも続いている。私はあそこでお茶会を開くのだ。
 しかし吹き付ける風があんまりにも冷たいから、私の脳は少し目を覚ましてしまう。身体が震え、その場に崩れ落ち、目からは涙がこぼれた。
 苦しい。苦しい。苦しい。
 暫く私は泣き続けた。けれども段々とそれにも疲れてしまったし、何よりも寒さが私の脳を凍らせた。結局の所、動かなければどうということではなかった。電源を切られて止まってしまった機械と同じ。アンドロイドも電源を切られてしまえば電気羊の夢を見ることはかなわないのだから。
 それから段々と私はうきうきしてきた。素晴らしいお茶会!
 さあ! と私は張り切った声を出した。それはやけに辺りに響いて、それがまた私の脳を起こしてしまう前に、私は飛んだ。

-目を覚ますと、そこは雲の上だった。甘い匂いが鼻腔を擽り、私を突き動かした。白い丸テーブルの上にはいくつもの装飾の施された美しい銀皿が、そしてその上にはクッキー、チョコレート、チーズケーキ、様々なお菓子が置かれている。もちろん暖かい紅茶も。
 雲で出来たイスに座りながらそれを食べていると、雲で出来たテレビがいきなり付いてある映像を映し出した。ここでは全てのものが雲から出来ているのだ。テレビが写した映像は、惨めな少女が主人公のお話だった。それがあんまりにも「おかしな」話なので、思わず私は笑ってしまった。全部食べてしまった私は段々と睡魔に襲われた。瞼が少しずつ閉じていき、意識が薄れていく。それで、すっかり眠ってしまった私は、どうやら微笑んでいたらしかった。

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