見出し画像

失踪旅行(あるいは、世を離る旅)

2022/12/27-2023/1/2

これはほんとうに完全なる素敵な思いつきで、卒論をウルトラ早く終わらせてわたしは失踪しようという計画を立てたんですね。
年明けすぐの提出ということもあって、年末年始はないものと換算していたけど、もしかしてもしかして早めに終わるんじゃね?なぜならわたしは〈客観的に見れば〉どう考えても進捗が良いから……
と思いつつ、模試でA判定取ってる受験生と同じで、自分ではずっとほんとに終わるのか?という不安が拭えなくて、進捗によってはひとの予定を左右する類の未来の計画を立てることができなかった。それにわたしはそのころなんだかほんとうに疲れていて、年内は卒論やって——年明けは演劇やって——年度明けは就職して——とどこで何してるかがひとしきり決まっていて、なにより逃亡不可!であることにものすごくげんなりしていた。しらんけどきっとマリッジブルーに近いと思う。
そんな時ある日わたしは思いついてしまって、年末年始は卒論やってて帰らんって親に言う、終わっても年末年始は帰省してるって友達に言う、そして実際卒論も帰省もせずにふらっとどこかへ出かけてしまったら、完全にもうこれ失踪できるんじゃね?だれにも迷惑かけずに世を離る旅に出られるんじゃね?と思ったらもうすっごいそれが魅力的な計画に思えて、だれにも言わずに卒論頑張って失踪旅行を実現するぞッ、ってその時その場で電話繋いでたひとに計画の全部をべらべら喋った。
だいたいこういうのは実現するかしないかに関わらず計画を妄想している間がいちばん楽しくて、ほかにもよく、仕事もうむり!ってなったら辞めてヨーロッパ浮遊してカフェ開こうとか、若いうちはばりばり働いて老いて独り身辛かったら同期で集まってセレブ老人ホーム建てようとか考えていつもわくわくしてる。おもえば小さい頃から家出の準備はよくしていたし(水色のプーさんのリュックにあるだけの小遣いと水筒とハンカチとティッシュと、料理はできないから食糧はとりあえず冷蔵庫にあるりんごをひとつ、とか)、頭の中だけで逃避の準備みたいなことをして、妄想を主食に日々生きてる。
だからこの失踪計画を思いついたいまがハイライトかな、なんだかんだ実際そんなことできないんだろうな、って思いながら、いやあ、できちゃったんだわ。

12/27,29にカテキョのバイトがあるから、行くなら早くて29の夜からかなと思っていたけど、なぜか26仕事納めに繰り上がったから、さっと準備すれば27の朝から出発できる。一週間の空白だけが手元にあって、一週間…?海外逃亡できる…?いやいや、年明けたら帰って卒論提出しなきゃいけないし、もし旅先でコロナになったりしたら最悪卒業失敗するぞ…?とかも考えて、一旦製本した卒論をポストに入れて、万一帰って来られなかったらだれかに代打で提出してもらおうとか保険をかけた。(ぜったい卒業したい。)
時間あるなら旅立つ前にやらなきゃいけないこととか会いたい人とかいくらでも出てきてしまうけど、全部、おいて、どっかいっちゃおう、ボーナスタイムだから、!これが失踪旅行の趣旨であり、実際そうしてすごくよかった。

青春18きっぷを買って日本の真ん中あたりをうろうろしようという計画で、ひとりでふらふらしたい気持ちもあるけど、ずっとひとりだと寂しいなって気持ちもあって、その日たまたま電話した先輩に話してみたら一緒に行こうって話が秒でまとまった。
先輩はまだ仕事があるから最初の3日はわたしだけ熱海や伊東で隠居生活みたいなことをして、30に合流して松本、伊勢、名古屋に行く。数えてみたらわたしは6泊7日の大旅で、海外旅行でもそんなに長く行ったことないかも。割勘計算できるページの名前入力で先輩がいぬを自称してて、いぬと世を離る旅か、だいぶいいなって思った。
だいたいの国内旅行ってせいぜい2泊3日程度のサイズだから完全にたのしいのは初日だけで、2日目の夜にはすでに俗世に帰る心づもりをしなきゃいけないけど、3日目でなお旅の前半!すごい浮遊感!いつも遊びに行く時はない時間をなんとかこじ開けて〈せっかくだから満喫しなきゃ〉って義務みたいな気持ちが少し混じるけど、とてつもなく贅沢な時間の使い方ができたと思う。けっこういろんなところを周って充実したけど詰め込んだかんじはなくて、空いた時間は本読んでたり、クリスマスに買った本がわりとしっかりはけてうれしい。

12/27

ほんまにこれで乗れるんか?って思いながら切符握りしめてるかんじが小学生ぶり
駅員さんに「はーい、いってらっしゃいませ」って言われてうれしい、ちゃんと目見て「ありがとうございます」って言えた

ホテルまでの道、うそだろ?みたいな坂と階段のぼってる
おじさんやさしい、ほぼ貸切なんでなんでも言ってくださいって言われた、だいじょうぶか
押入れに一枚だけ新しい布団入れてあるんでそれ使ってくださいって親切に教えてくれたけどどれかわからん、、
屋上テラス↗︎って書いてるから登っていったら、まじ学校の屋上みたいな、これ入っていいとこ?みたいな踊り場があって、ドアを開けたら、なんかテラスっぽく改築されてて、空間は変だけど景色が綺麗だった

ちょっと隣駅へ、と思って適当に電車に乗って、車内に電子掲示板がないからよく確認せずに座って本読んでたら、気づいたら真っ暗な中をものすごいスピードで走ってない?と思って、マップ開いたら圏外で、山越えたとこで降りた
夜にひとりで来宮神社は完全に肝試し

12/28

畳に布団、いいな…
実家で、小学生まではそれだったから
よく端っこに寝て、頭だけ畳の上に落としてたことにいま気づいた、身体に覚えのある形だった

劇団のLINEで年末年始に時間あったらセリフ合わせしようって話してる
これどう考えてもわたしが参加すべき会だけど{わたしは年末年始卒論やってるので}声かからずに免除です
なんか学校さぼってる気分だな

650円もしたのに目の前でレンチンして出てきたホタテ串
短歌になりそうでならない(詠む気がない)

静岡って風景が少し和歌山に似てる、海があって山があってみかん畑が斜面にあって、あたたかい
海岸まで歩いて20分なのだけど、こんなんでタクシーに1000円も払うやつはあほよ、めちゃめちゃ天気いい
すてきな庭のあるお家が多い、イギリスの郊外みたい
歩きもいいけど、こういう坂道原付でパパパパパーって走ったら気持ちいいだろな

あったかいってか暑い、13度、永遠にのぼり坂
カフェまでがんばろと思って来たのにソフトクリームのテイクアウトしかやってない
だれも客いないのに店番のおばちゃん3人もいて見た目似通っててなんか姉妹みたい
でもぐり茶ソフトうまい、水持っててよかった、暑い日でよかった

怪しい少年少女館、入り口からいきなり変やって…選書おかしいって…
「奥にお化け屋敷があるのでお見逃しなく」
「ここも撮影していいですか?」
「ああ、はい…」
(どう考えても入り口に置くべきじゃない本が並べられてる受付を撮る)
当たり前みたいにエロと呪いがひしめき合ってて、もうすでに十分お化け屋敷なんですがと思って、お化け屋敷の入り口がこわすぎて完全にびびってもーて、あとから来たおじさんの後ろをついてかせてもらった
さっきの展示を暗くして狭くして音おっきくしただけだって分かってきて、よく見たら外の光も漏れてるし、一周して終わりかなってコースの予想がついたらいけた、おじさんは愛知県の岡崎から来たらしい、人当たりはよかったけどあんまり談笑してくれなかった

『このあたりの人たち』とか『不思議の国のアリス』とか読んでるから引っ張られる、チェシャ猫みたいな三日月に、どっちへ行けばいいのかわからない道、へんてこなものが出てきても対等に言い返す心が大事とか思っちゃう、道に迷って立ち入り禁止のロープを5本くらいくぐって一般道に戻れた、こわかった

12/29

修善寺に行ってみる
願いかけながら渡れの看板、橋渡り終えてから見つけてわろた、悩んでないからいいけど
今日は昨日と違って乗り継ぎ・店選び・散歩コースなど完璧

昨日一昨日の宿を出てゲストハウスに来た、あなぐら、窓側上段の角部屋が取れた
ばり息荒いおっさん来た、やばい
しばらくしたら収まった、宿まで走ってきたのかな?
ちっちゃいカップ麺とスムージーをコンビニで買った、チャラにしようとしてる感すごい
いびきかく人って自分いびきかくって知らんとゲストハウス利用してるんだろうか
ゆうて慣れてしまえばBGMみたいな気持ちで寝れられた

12/30

ぐり茶漬けとゆで卵の朝食が美味しい
「昨日はよく眠れましたか」
「はい」
「4時くらいに見に行ったら昨日はいびきかく人がいなかったので、よかったです」
「……」
良いお年をって言ってもらえて嬉しかった

甲府ばか遠くて読書捗る
信玄像に顔認証反応してわろた
絶対ほうとう食べた方がいいしそっちの店のほうが空いてるけどどうしても腹減ってるのでとんかつ行く、お腹いっぱい
とてつもなく眠くて、寝て次起きたら信濃の国の境に来てて(「信濃の境」という駅だった)、また寝て起きたら雪が積もってた(越境した)

先輩と合流

12/31

この旅でいちばんぐっすり寝た
起きて支度しててなんなら先輩と喋ってるつもりだったのに、現実でわたしは起きてなくて、るな9時だよ!!って言われて起きた
いま流れてた音楽ちゃんと聞いてたしこんな歌詞だったんだ〜って思ってたって話をしたらいいから早くシャワー浴びろって言われた
その前に見てた夢は、4つぐらいあるヤクザ勢力のうちのひとつの頭が友だちで、別勢力の頭からモテてて話混み合ってるって夢
わたしはヤクザのパシリなのかコンビニでマシュマロ買ってた

開智学校見て「ラブホの外みたい」って言う先輩、国宝に対して…
松本神社、6神社のバリューパックらしい、神シェアハウスしてるねって罰当たりなこと言ってすぐお参りして謝っとく

おかんUFO見たらしい

先輩、うたたねしてさっきまですごい揺れてたのに動画回したら揺れない、動画止めると揺れる

紅白見たあととんでもない暗闇を歩いておかげ横丁へ、星が綺麗、田舎者でも都会人でも知らん土地に来たらけっきょく上見ちゃうのよね

DQNおおい、これひとりじゃ来られなかったな
イカぞめた!
たこ焼き6個1000円で一旦保留
ビデオ通話繋いでバーチャル彼女ごっこした、ギャルゲのものまね照れんとやったらもっとクオリティ高くいけたな

キャンプファイヤー(じゃないけど)すごい、火の粉が天に昇る、火に神いるって思うのわかるな

帰り寒すぎて心折れそう、味噌汁買って飲みながら歩く
流れ星みた!!!、北斗七星はじめて見た…
家族ラインで報告したら、流れ星ガン無視で、おかんが見たUFOの話が続いてた

1/1

伊勢外宮でベビーカステラ、映画館でポップコーンの気分

名古屋、桜咲いてる…
おしゃレストランの向かいにスギ薬局、カオス
横丁の入り口、なんかこわ!!
しゃちほこイルミ可愛い、1枚だけ電飾が目玉みたいになってるのがあった
旅をはじめたころには三日月だった月が着実に太ってきてるね
なごやめし、うまい
夜にホテルでお絵描き年賀状大会したけど先輩が寝てわたしも寝落ちしちゃった

1/2

路上で見かけたオブジェ、ベランダから通りを覗く3匹のいぬ、でか!!
ジェラート食ってる加藤清正
家康の食事が公開されてて、後世の老若男女に好き勝手評されてるのがじわじわおもろい
名古屋城の内装かっこいい、写真撮ってたら後ろの家族のお父さんに良い画角だねえって言われた

帰りの電車でまたDQN、先輩「海に近いところのDQNだわ」、全国DQN標本できますね
わたしが貸した本を先輩が読み終えたので感想大会をした、視点というか立場が違うのでおもしろかった、総じて犬のかたちの語り手はわがまま娘だという話、わたしはこの小説を近すぎる距離で読んじゃうことを改め知る、自分が言語化地獄にいるって話もした

新宿まで行ったら日付超えるから18きっぷが使えなくなることに気づいて23:55着の渋谷で降りる
名古屋の駅員さんが押したスタンプが汚すぎて、渋谷で出る時ハァ日付見えねえよみたいな顔されたけどわたしのせいじゃない
再びスイカで入る
同じ車両にマスクしてない人5人くらいいたよ、治安わる、暇すぎて数えた、26人中6人マスク外してる

無事帰宅、寝落ち

うまく使えなくて18きっぷが1日余ってしまった、トータルで元は取れてるからいいけど、なんか悔しくてどうするかしばらく悩んだ
結局帰省する時空いてる日にちょっとだけ遠くに遊びに行くことにして、高校同期を誘ったら釣れた、うれしー

あとは卒論提出失敗しなけりゃ完璧じゃぁね

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?