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一月三舟【イチゲツサンシュウ】私から見た夫

サイコロには6面ある。
じゃあ見え方は6通り?

もちろんそうでしょ!
そう答える人もいるかもしれない。

でも私はちがうと思った。ちがうことに気付いた。
頂点から見れば3面見えるし、少しずつ角度を変えればそれぞれの面の形が変わって見える。

私はいつも1面からしか見ていなかった。
動かせるものならそれを動かせばいいし、
動かせないなら自分が回り込んでみればいいんだ。

◆◆◆

ちょっとしたことで夫と口論になる。
今帰ってきたばかりで経過を見ていないのに、なんですぐそういう言い方をするのか。不満に思うことが多い。
まぁ疲れて帰ってきて、子どもたちのケンカや泣き声を聞いたらいい気分はしないのはわかるけどね。
でも夫は夫なりに物事を円滑に進めるために気を配り、動いている。

6才の娘が夫に手紙を書いた。

パパだいすき
むすめちゃんのひみつしってる?
おしえてあげる
むすめちゃんわね しなもろーる がすきなんだよ
しってた?

娘からパパへの手紙より

かわいっ。
「し」や「も」は裏返っているし、文字もあっちこっちに書いてあって、読み上げられないと解読は難しいけど。大きなハートに囲まれた拙い可愛らしい文章からは、パパとシナモロールへのすきが伝わってくる。


これがシナモロール。サンリオのキャラクター。砂糖がかかったパンではない。



娘は、忙しく夕食の支度をしている夫に手紙を読み上げ、
「ねーパパ、パパもむすめちゃんにおてがみかいてね」
と言っていた。

『あー、わかったよっ』

無礼者!なんだその返事は!
いつまでもそんな態度で子どもから愛され続けると思うなよ!

「ねー、もうちょっとちゃんと返事しなよ」

『もうさっきから何回も同じこと言われてるんだよ!』

あ、そうなのね。
お風呂上がりの私は、その一連の流れを知らなかった。
忙しいしね、何回も言われたら対応が雑になっちゃうよね。
「でもそのうちなんにも言われなくなるんだから、ちゃんと返事してあげな」

◆◆◆


夕食が終わり、寝床に行くまでのまったりタイム。
「パパに今お返事書いてもらったら?」
夫はどんな返事を書くんだろう。

同じ寝床についた娘と私は、小声で話した。

「パパからお手紙もらった?」

『うん」

「なんて書いてあった?」

『えっとねー、、、わすれちゃった。
おにいちゃんとけんかしないでね、って』

私はがっかりした。
【大好き】の手紙をもらっておきながら、自分の、子どもへの願望を書くなんて…!

「そのお手紙もらって嬉しかった?」

『うん』

そっかー、嬉しかったんならいいのかな。
めったに文字を書かないようなパパからお手紙もらったらそれだけで嬉しいか。

夫の隣で横になっていた8才の息子は寝息をたて始めた。
夫は大事な用事があったので、息子が起きないように静かに起き上がり、家を出て行った。

しばらくすると私の隣の娘も寝静まったので、私はのそのそと起きだし、残った家事をこなしていた。
テレビの前に、夫から娘への手紙が置いたままになっているのに気付いた。

むすめちゃんへ

おてがみありがとう。
いつもむすめちゃんのえがおを
いっぱいみせてね!!
おにいちゃんともなかよくあそんでね。
パパより!

パパから娘への手紙より


ちゃんと、書いてるじゃん、、!
ていうか、いいこと書いてあるじゃないか。
お手紙に対する感謝まで。
「へ」には2本線書いてあるし可愛いなぁ、最近こういうの見ないぞ。
うっかり感動してしまった。

でもそれよりなにより、私が1面どころか1mmも正しく受け取れていなかったことに驚いた。
娘から伝えられた1面だけを、”正しい”と思って見ようとしていたのだ。
”けんかしないでね”と”なかよくあそんでね”だって、似て非なるものじゃないか。

今日XのTLで流れてきたポストも私の胸に刺さった。
私は、どんな引用がしてあるのかと思いそのポストを開くと、スレッドに続きが書いてあった。そこには主さんを思う友人の愛ある言葉(と私は受け取った)が綴られていた。

しかし元の引用を表示すると、批判やダメ出しが並んでいた。
おそらく彼らは、続きとなるスレッドを読んでいない。
まぁ、Xだもんね。しかたないよね。
140文字じゃあその人の背景なんかわかるわけないし、その出来事の一瞬しかわからないしね。
でもその切り取ったそのごく一部だけを見ていろんな人がいろんな捉え方をするから、それが面白いこともあるんだけど。
考えさせられた。

私が身を置いて生活しているのはXの世界じゃないんだぞ。
毎日顔を合わせる、一番わかりあえなきゃいけない家族なんだぞ。

手紙を読む前にうっかりダメ出ししないでよかった。
これじゃあXの世界じゃないか。
一面しか見えていないのはいつも私だ。大反省。

どんな物事にも二面性がある。
いや、二面どころじゃない。立場が変われば見方が変わる。

一目置いて、一度立ち止まって、その人がどうしてそう言ったか。

行動や言動の側面を見る努力をしないといけないな、と思う出来事でした。




少し話は変わって、タイトルの【一月三舟-いちげつさんしゅう】
という言葉、ご存知でしたか?
仏教用語で

一つの月も、止まっている舟、北へ行く舟、南へ行く舟から見るとそれぞれ異なって見えるように、人はそれぞれの立場により仏の教えを異なって受け取るということ。

goo辞書より

だそうですよ。
今回のタイトルを決めるにあたり、AIに検索してもらったらでてきました。仏の教えの話ではないですが。
サイコロのたとえ話から月に変えようかと思ったけど、難しかったのでやめました。

”月”という文字が入る言葉は美しく見えます。昔は月を見上げて思いをはせることが多かったんだな、と大河ドラマ「光る君へ」を見ながら思います。月明りだけで作業したり、一人の時間を過ごしてみたい。
余談でした。

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