泣かないって決めたのに 〜18歩芽〜
チー厶やんじーは、炊き出しのプロ。
100食分を一度に作れるレスキューキッチンを2台持っていた。
できた食事をお皿によそう担当だった私にある女性が「私にも手伝わせてください。」
と言ってきた。
彼女は、被災者だった。
話を聞くと、彼女は怪我はしていない。そして、健康だ。作ってもらった食事をもらうだけの毎日が、嫌になってきた。自分も、誰かのために何かがしたい。
という。
私も、誰かのために何かしたかったけど、私は、いつでもできる環境にいる。
海を越えて、はるばる来たけど、私は彼女に私の仕事を譲ることにした。
彼女は、イキイキと食事をよそい始めた。
また、こんなこともあった。
はるばる被災者支援に来たグループは、食材はあるけど、それをつくるための道具が不十分。
やんじーは、レスキューキッチンを貸してあげることにした。
チームやんじーは、災害救援のプロ。
こういう状況の場合に必要なものをすべて揃えて、被災地に入る。
だけど、そのスキルやノウハウがないグループがきた場合、はるばるやってきても、支援に繋げられないことがある。
たくさんの団体が、南三陸に続々とやってきた。
毎日ボランティアチームの代表が集まって全体ミーティングを行うが、やんじーを中心にみんなが円滑に活動し、この地域の方のために繋がるよう引っ張っていった。
私は、チームやんじーの一員にほんの短い期間だけど、なれたことが嬉しかった。
炊き出しの時は、いろんな話を被災者の方から伺った。
仲良くなったある方が、炊き出しが終わったあと、「いつもありがとうございます。お礼をするものがないんだけど、地震で割れなかったワインが1本とだけあったんです。良かった飲んでください」と言われた。
涙が落ちそうだった。
あわてて、身体をつねった。
実は、被災者さんたちと話していて、何度も、何度も泣きそうになる場面があった。
絶対涙を見せないって、私は決めてこの地にやってきた。
私は、気持ちだけ頂きます。
と言って断ったが、どうしてももらってほしい。と、何度も何度も言われ、頂くことになった。
その話をやんじーに伝えて
やんじーに渡した。
やんじーは、にこっと笑って
受け取ってくれた。
そんな場面に、何度もあってきたんだなぁ。
と私はやんじーの笑顔をみて思った。
その夜私たちは移動をして、地震でクローズしていコンビニの駐車場で夜をあかすことになった。
そんな私達の車に一人のおばあちゃんが真っ暗な中訪ねてきた。
聞くと、情報がまったく入らず、何もなくて困っているとのこと。
おばあちゃんの身なりや、話を聞いて、私の心は崩壊した。
街灯なんてもちろんついていない真っ暗闇でよかった。
ポロポロ涙がこぼれ、おばあちゃんの話を聞くのはみんなに任せ、私は車の後ろに逃げた。
戦場のような場所に数日いて、みんなの話を聞くだけで、気持ちがいっぱいいっぱいになってしまう弱い自分が情けなかった。
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