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北アルプス縦走(1/4) 薬師岳に登る

 北アルプスの中でも槍ヶ岳・奥穂高岳や白馬岳・五竜岳の稜線は、未だ関東からアクセスし易いので何とか行けますが。その裏側の富山県から登る北アルプスの縦走コースは遠くて行くだけでもなかなかハードルが高い。ずっと前から行きたいと焦がれていた薬師岳・黒部五郎岳・鷲羽岳・水晶岳の縦走コースは計画を立てたまま数年が経ってしまいました。
 今回遂に、憧れの場所を歩く機会を得ることができたので、早速あこがれの地へと向かいました。天気にも恵まれ、想像していた以上の素晴らしい景色の稜線を歩くことができた。
 ということで、今回縦走してきたコースをご紹介します。
 本レポートは1日目、薬師岳に登って薬師峠でテント泊するまでです。


時期

 8月

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アクセス

行き

 東京駅から北陸新幹線で富山駅まで約2時間(富山で前泊)
 富山駅から富山地方鉄道バス(富山-有峰線)で折立まで約2時間
 ※バスは要予約です!

紹介ルート

 総距離:62.7km 登り:5,477m 下り:5,386m

★1日目

 折立バス停~太郎平小屋~薬師峠~~薬師岳山荘~薬師岳~薬師岳山荘~薬師峠(テント泊)
 総距離:14.3km 登り:1,720m 下り:782m
2日目
 薬師峠~太郎平小屋~太郎山~北ノ俣岳~赤木岳~黒部五郎岳~黒部五郎小屋~三俣蓮華岳~三俣山荘(テント泊)
 総距離:17.9km 登り:1,4857m 下り:1,250m
3日目
 三俣山荘~鷲羽岳~水晶小屋~水晶岳~温泉沢ノ頭~赤牛岳~奥黒部ヒュッテ(テント泊)
 総距離:15.6km 登り:1,052m 下り:2,113m
4日目
 奥黒部ヒュッテ~平ノ渡場~ロッジくろよん~黒部ダム駅
 総距離:14.6km 登り:1,203m 下り:1,240m

折立バス停まで

 バスで折立に行く場合は夏季のみの運行で、朝と昼の2本だけなので注意です。席は自由席ですが座席数分の事前予約制で、乗れない人が居ても臨時便は出ませんので必ず予約しましょう(「発車オーライネット」が使えます)。その代わり全員座れます。
 途中、コンビニでトイレ休憩が1回あります。トイレの数には限りがあって並びますので、一緒に買い物がしたい方は早めにトイレに向かいましょう。

折立バス停

 折立にはトイレあり。自販機もありますがリサイクルボックスは置いてないので買ったらペットボトルや缶はそのまま持っていく必要があります。
 トイレは表側に男子トイレがあるせいか、女性が男子トイレの個室を使っていましたが、裏側に女子トイレがちゃんとありますのでそちらを使ってください。男子トイレの個室は1つだけなのではっきり言って迷惑です。
 トイレの前に避難小屋があり蛇口付の水場が併設していますが「生水飲用不可」の表示でした。一応浄水フィルタをかけて2L汲んでいきました。そのまま飲みましたが、昭和世代の私には大丈夫でした。

水場は生水飲用禁止

折立バス停~三角点

 登山口から登り始めるとすぐに13人の遭難者の慰霊碑が建っています。冬にこの山域に入って遭難した様なので夏山とは違いますが、気を引き締めて登っていきましょう。

13名の遭難者の慰霊碑 安全登山を心がけましょう!

 山道は雨の浸食が強く結構えぐれていますが次第に普通の山道になります。傾斜は強めでなかなか大変なのでゆっくり登っていきましょう。夏は日差しが強いものの、暫くは樹林帯が続くので日差しを遮ってくれます。登山口の折立で既に1,350mくらいの標高がありますので、下界よりは涼しく歩けるでしょう。
 約1時間ほど登ったところにDr.スランプ・アラレちゃんの看板があります。なぜアラレちゃんなのか不明ですが、ちょっとだけ平らなのでここで最初の休憩をとる人が多い様です。ただし、私が通り過ぎた後の11:30頃に熊が出没したとの情報あり。3日前にはこの先の三角点で熊が登山者のザックを奪って行ったとの情報もありますので、熊が学習してしまったかもしれません。休憩の際はザックを降ろしても持っていかれない様に注意しましょう。

なんでアラレちゃん?


 更に30分程登ると三角点に到着です。ここで樹林帯から出て景色が開けます。ベンチが沢山あり休憩に最適ですが日陰が無いので休憩には暑いかもしれません。
 残念ながら薬師岳の方向は雲が立ち込めていて何も見えませんでした。

三角点

三角点~太郎平小屋

 三角点で休憩したらリスタートします。ここからは若干登り若干下りますが、基本的にはなだらかです。周囲はお花畑で色々な花を眺めながら歩くことができます。
 残念ながら私が登った日はこの後ガスが立ちこめ、レインを着るほどではありませんでしたが少し雨もポツポツ来てしまいました。おそらく雲が無ければもっと絶景が見られたことでしょう。

お花畑が続きます

 暫く登って三角点から見えていた丘の上までたどり着きます。ここが「五光岩」と呼ばれる場所の様です。三角点から約1時間。太郎平小屋までも約40分くらいの場所です。ベンチもあるので休憩にお勧めです。

みかさ山(富山ブラック味)で休憩

 ここからはなだらかなアップダウンが続きます。両サイドにはチングルマの綿毛バージョンが多数あり御花畑になっているようです。
 ガスの向こうを目を凝らしながら歩いて行くと、やがてうっすらと建物の影が見えてきました。太郎平小屋到着です。建屋は広く、かなりの人が泊れそうです。到着したのがお昼過ぎだったので食事場所は賑わっていました。生ビールを飲んでいる人も居て羨ましかったですが、今日はもう少し歩くので我慢して進みます。

太郎平小屋

 本来ここからは水晶岳・鷲羽岳・槍ヶ岳・黒部五郎岳等展望できるはずですが、残念ながらこの日は山頂が雲に隠れていました(翌朝綺麗に見れました)。

太郎平小屋~薬師峠

 太郎平小屋から太郎平の木道を歩いて行きます。この道はほぼフラットです。太郎平もお花畑なので気持ちよく歩くことができます。
 本来は薬師岳を正面に見ながら歩けるようですが、この日は真っ白で残念でした。
 約20分程歩くと下りになります。見下ろすと下りきったところにテントが見えました。ここが薬師峠のテン場「太郎平キャンプ場」になります。お盆時期を外した平日のせいか、まだ十分にスペースに空きがありました。

薬師峠のテン場が見えました

 早速受付小屋でテント泊の手続きを済ませます。テント泊1張1,500円、あわせて小屋前で沢水を使って冷やしているコーラのペットボトルを買います。800円でした。飲み終わったペットボトルは回収していただけます。
 テン場は30~40張りくらいできそうですが、やや傾斜しているところが多く、フラットな場所は限られています。ちょっと離れたところや、変なところにスペースが在ったりするので、慌てず設営場所を選択しましょう。

薬師峠~~薬師岳山荘

 テントを設営したらトイレと給水をして本日中に薬師岳(南峰)に向かいます。 水場とトイレは受付小屋の太郎平側、テン場と逆方向の小道の先に在ります。結構近いです。水量は潤沢でした。フィルタをかけている人も居ましたが、私はとりあえずそのまま飲んで大丈夫でした。
 テン場を離れると先ずは沢沿いのガレた急登を登っていきます。結構大変です。途中で沢から離れたり戻ったりするのでピンクテープなどを参考に間違えない様登っていきましょう。
 暫く登れば沢は枯れ、なだらかになります。ここで、沢の右側(左岸)の方に道が分かれて登っていきますので、沢沿いに登っていかない様注意してください。ガレた涸れ沢から離れると直ぐ薬師平があり、ニッコウキスゲが綺麗に咲いていました。

ニッコウキスゲ

 薬師平を過ぎるとそれほど急登ではなくゆっくり登っていきます。ハイマツ帯を抜けると目の前に薬師岳のカールが姿を現しました。とても綺麗です。そして、ここからは植物が豊富。薬師岳の圏谷群は国指定の天然記念物になっています。この高山植物の豊富さや見慣れない蝶は確かに天然記念物になる価値ありです!

雲は多いが薬師岳のカールが見えました

 新しい花を見つけるたびに写真や動画を撮っていたので、なかなか足が進みません。
 やや傾斜が強くなり、稜線に乗ると草花とは一旦お別れです。雷鳥が居そうな砂地の稜線をなだらかに登っていけば、丘の向こうに薬師岳山荘が姿を現します。

薬師岳山荘~薬師岳

 薬師岳山荘からは再び勾配がきつくはなりますが、急登というほどではありません。岩を含むややザレた斜面を九十九折に登っていきます。道は途中不明瞭な箇所もありますが、基本的に一番高いところへ向かって登っていけば間違えません。
 登り切った一番上には石室が建っていて薬師岳山荘からも見ることができますが、何故かこの日は登って行く度に景色が真っ白に・・・。ゴールが見えないとイマイチモチベーションがあがらず、若干修行のような様相になってきます。

薬師岳の石室とケルン

 やっとのことで石室まで到着。屋根はありますが扉もなく、ここでのビバークは中々厳しそうです。ここからはなだらかな道が続きますが岩の多いトラバースルートで足を捻らない様に慎重に進んでいきます。
 やっとのことで山頂のお頭が見えると、なぜか薬師岳山頂の空だけぽっかり青空が見えました。周囲の山の景色は見えませんが、真っ白じゃなくて良かったです。

薬師岳山頂だけ青空

 お堂の中には薬師如来様がいらっしゃいますのでお参りしていきます。鐘もあるので突きましたが、あまり遠くまでは響かない様子。

薬師岳~薬師岳山荘

 薬師岳からは同じ道で下ります。登って来た時よりも時々ガスの晴れ場が見えてなかなか良い景色です。ガスが無ければ本当に絶景なんだろうなと思います。
 登りで大変だった薬師岳山荘からの坂もくだりだと歩き易く結構快調なペースで下ることができました。
 一応、下りではだちどまって耳を澄ましたり、目を凝らしたりして雷鳥探しをしましたが、残念ながら雷鳥さんに会うことはできず。

薬師岳山荘~薬師峠(テント泊)

 薬師岳山荘には立ち寄らず、スルーして薬師峠を目指します。なぜ下りを急ぐかというと、薬師峠の受付小屋が開いているのは17時までだから。小屋の前で冷えている缶ビールを買うためには、早めに下りなければいけません。

天然記念物の碑

 登って来た時より良い景色になっていましたが、写真もそこそこ淡々と下りて行った結果、無事17時前に薬師峠に到着!缶ビール350ml(800円)を買うことができました!
 コースタイムで4時間想定でしたが、テント設営して大半の荷物をデポしていったこともあり、3時間15分くらいで戻ってこれました。
 薬師峠からは南側の展望が開けていますが、夕日は太郎平の向こうに沈む様で残念ながらテン場から夕日を望むことはできません。

夕日は見えませんが良い天気になりました

 富山で買ってきた干しホタルイカを肴に、缶ビールを飲めば、もう歩く気力は無く、そのままテン場で夜まで過ごすことにしました。
 明日も早いので早めに就寝します。
 お疲れ山でした!

動画


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