東黒沢の遡行撤退記
群馬の名峰、日本百名山で有名な谷川岳の東に白毛門(しらがもん)という山があります。谷川岳の名前が有名だけに霞んでいますが標高1720mのとても綺麗な山です。
今回はその谷あいに流れる東黒沢、そしてウツボキ沢を遡行して白毛門経由で登山道を下るというルートにチャレンジしてきました。
結果としては東黒沢の途中で道迷いの遭難状態になってしまったので安全を考慮して戻るはめになりました。非常に残念です。
そんな撤退記ですが「山の安全」につながる様、記録としてご紹介します。
ご注意
暑い夏は冷たい沢水を浴びながら沢登りを楽しみたいところです。
沢登りは一般登山道と違って人の手が入っていないところが楽しいのですが、谷は元々崩れやすい地形であることから危険な場所になります。
ヘルメットはもちろん、十分な装備と使い方の修得が必要になりますのでご注意ください。
最初はガイドツアーなどに参加することをお勧めします。
時期
8月上旬
アクセス
東京から新幹線で高崎駅まで約1時間。
高崎駅から上越線で水上駅まで約1時間。
水上駅から土合駅までバスで約15分。
土合駅までは上越線のまま行けますが本数がが少ないのでこちらのアクセス方法を紹介しています。
バスは水上駅を経由していて上毛高原駅が始発です。新幹線で上毛高原駅に出ても行けます。
撤退ルート
https://www.google.com/maps/d/edit?mid=1JgFA6d91PrpFFUeMdnM82XAzEnGH_D4&usp=sharing
土合駅~入渓点~ハナゲの滝~道迷い地点~復帰地点~ビバーク地点~ハナゲの滝~入渓点~土合駅
距離:12.8km 登り:760m 下り:760m
土合駅~入渓点
実は入渓点に一番近いバス停は「土合橋」バス停ですが、そこには給水(自販機)やトイレがないことからひとつ前の土合駅で降りてしまうことをお勧めします。駅舎の中に自動販売機とトイレがあります。残念ながらコンビニなどは無いので食料などは高崎駅(水上駅前もお土産屋さんしかありません)で購入しておいた方が良いでしょう。
土合駅から次のバス停「土合橋」までは歩いて10分程の道のりです。土合橋のバス停で右の未舗装路に入っていくと駐車場があります。車で来た方はこちらの駐車場が利用可能です(無料)。
駐車場を突っ切って奥に登山口があるので、ここから入っていきます。入ってすぐ登山道は二又に分かれているので右へ。左に行くとそのまま登山道で白毛門に登ります。
少し行くと東黒沢の堰堤が左手に見え、河原に出て行き止まりになりますが、沢登りする場合はここがスタート地点。河原の狭いスペースで沢装備に着替得ます。もちろん更衣室などありません。
入渓点~ハナゲの滝
さて準備が出来たら沢に入って歩いて行きます。川底はゴロゴロとした石が転がっているので足を捻らない様に注意しましょう!
入渓直後から綺麗な水流と沢の景色にほれぼれします。この時点でもう「来てよかった~」と感じました。
所々巻きルートもありますが基本沢の中に入らなければならないので登山装備ではここを歩くことができません。
しばらくは小滝が所々に在りますが全体的には穏やかな流れで危ない場所はありません。とはいえアスレチックな場所ですので油断は禁物です。
暫く登っていくと赤いヘルメットの一団が楽しそうに嬌声を上げているのが見えます。この辺は一枚岩の綺麗なナメ滝が続いていて天然のウォータースライダーを楽しめる場所になっています。赤いヘルメットの一団はキャニオニングツアーのお客さん達で、ここで沢遊びを楽しんでいるようです。
場違いな重装備を背中に歩いているとちょっとなじめないので、邪魔にならない様パスします。
このウォータースライダーから奥に行くと、一段と大きな滝が目に入ります。この滝が「ハナゲの滝」と呼ばれる滝にになります。なんで”ハナゲ”にしたのかよくわかりませんが、とても綺麗な滝で一見の価値があります。
ハナゲの滝~ゴルジュ
キャニオニングツアーはこのハナゲの滝の下までの様です。ここから先は沢登の領域。気合を入れて登っていきましょう!
ハナゲの滝は垂直ではなく傾斜のある滝なのでクライマーでなくてもある程度まで登れます。左側の岩が階段状になっているのでここから登っていきますが、滝の上部までいくと苔で少しぬめっているので危険です。岩の傷などを使って慎重に登り、最後は左に抜ける巻き道があるのでそちらを通ってハナゲの滝の上にでます。
ここからはナメ、ナメ、ナメのオンパレード。一枚岩の上を綺麗な水が流れる沢を歩いて登っていきます。暫く感嘆の声が漏れだして止まりまん。
暫く歩くと左から太めの沢が合流します。ここが白毛門沢との出会の様です。腰の深さまである釜を歩いて出会の真ん中に立つとなかなか良いフォトスポットです。
白毛門沢出会いを右の本流に向かって登って行きます。次にみえるのが狭い渓谷のゴルジュです。そのまま進んでいくと泳げるくらい深くなります。奥からは大きな滝がある様で、ドドドドといった激しい水の音が響いています。
一旦ゴルジュの入り口まで戻り、右側に踏み跡を探します。薄いのでなかなか見つけづらいのですが、登ってみると沢の左岸(ゴルジュに向かって右側)のすぐ上の所に巻き道がありました。ここを歩いてゴルジュを越えます。
沢に戻る場所は最後苔で滑りやすそうだったので沢に向かってダイブしました。水深は腰高なのですぐ足が付きます。
ゴルジュ~階段状の連続滝
ゴルジュを抜けると左右に滝があります。本流は左なので左を登っていきます(右は登れない様な高い滝)。こちらも苔がぬめった場所があるので慎重に。
この後もナメが続く綺麗な沢を歩いて行きます。逆に落ち着けるような景色が無くて気分が上がりすぎて疲れてしまうくらいです。
3~5mくらいの滝はなん箇所かありますが1箇所だけちょっと高い滝(7mくらい?)があります。滝から離れたところを登ろうとすると苔で滑るので水流の右側を直登する方が良さそうです。ただこちらも一段落したところの岩が苔で滑るので上段は右側の草地に沿って登った方が安心です。
途中の分岐は左へ。小滝以外はナメ床をなだらかに登っていきます。
暫く行くと階段状に小滝が連なっている場所があります。遠目には危なそうですが、近づいてみると沢の横の岩場にちゃんと足がかりになりそうな場所があるので、それほど困難ではなく登りきるることができます。
登り切ったところで丁度お昼になったので、岩の上に腰を下ろしてランチにします。本日ま高崎駅で買ってきた「万かつサンド(カツサンド)」です。景色もご馳走なのでめちゃめちゃ美味しく感じられました。
階段状の連続滝~道迷い地点
あっという間にカツサンドを平らげたら早々に出発します。この辺からナメ床は薄い赤茶色のような岩が多くなったと感じます。またまた綺麗なナメが続くのでもうご馳走攻めの状態です。川底が一枚岩なので歩き易くとて足裏も痛くなりません。
この先にも1箇所だけ高い滝(5mくらい?)がありますが、全体的には難しいところのない小滝で順調に登っていきます。
そして問題の道迷い地点です。左に行くべきところを右の沢に進んでしまいました。確かに、入った途端左右から枝が張り出していて歩きづらいとは思ったのですが、そろそろ沢枯れの様相だったのでこんなものかな?と思い進んでしまいました。薄いながらも人の足跡はあったので、方向が外れていることに気づきませんでした。
道迷い中~復帰
そのままだと登りづらいこともありますが、上り詰めた稜線が目的地からかなり外れてしまいそうです。既に木々の間からは稜線が見えたのでトラバースしながら目的の稜線を目指してみます。危ないところを避け、藪を抜けやすい場所を選択しながらの歩きなので遅遅として距離を稼げません。
トラバースで歩いている場所に人の痕跡は全くなくなり、昔道迷い遭難して救助されたときのことを思い出しました。
暫く奮闘して歩いていたものの、15時くらいになっても稜線はまだ遠く、携帯電話が沢で濡れたせいか10秒毎に再起動を繰り返し始めてGPS地図が確認できなくなりました。ひょっとしてお盆だから悪い霊でも居るのかな?と不安になり、まだ明るいところですが撤退を決意しました。
頑張って稜線に出る選択肢もありますが、水も不足してきていたので来た沢を下ることにします。
下り気味に斜面をトラバースしていくと雨水の通り道のような谷に出ました。谷の両サイドは土面で高さは5mくらい。滑ると怖いのでザイルを出して懸垂下降で下ります。
その後、谷に沿って下っていくと次第に水の流れのある沢になり、無事に見覚えのある沢に合流しました。念のためGarminのGPS記録で歩いて来た軌跡と合流していることを確認し、間違いない様なので沢を下っていきます。
復帰~ビバーク
浄水フィルタを持ってきているので沢にいる限り水不足はありません。とはいえ沢水はなるべく避け、沢に流れ込んでくる枝沢からの流れ込みや石清水を選んで給水します。
この地点から入渓点まで明るいうちに降りるのは難しいですが、そもそも途中ビバーク予定で装備を持ってきているので、明るいうちにビバーク地を決めます。行動終了を16時くらいに設定して沢を下りながらビバーク可能場所を探していきます。
ここの沢は平らな場所がほとんど沢側の岩場ばかりです。増水時に危険そうで、なかなかビバーク地は決められませんでした。16時を過ぎ階段状の連続滝の上あたりまで来て、やっと大丈夫そうな場所を見つけてビバークに入ります。ちなみにここまで高めの滝を1箇所通過するので懸垂下降で下りました。
本日のビバークはタープ泊です。防炎マットを敷き、持ってきた焚火台をのせて火を焚きます。周囲にはあまり太い薪はありませんでしたが、十分な量の朽木があって苦労しませんでした。
沢装備を解除してサーマレストを敷いたら、あとは持ってきた食材を食べまくって明日に備えます。
ロングトレイルでビバークに慣れたせいか、たった独りで暗闇の森の中にいても悲壮感はありません。ただし虫除け。獣除けの為には火を絶やすことはできませんので2時間おきに目が覚めたら薪を追加します。太い薪が見つからなかったので燃え尽きるのが早く、結構大変でした。
ビバーク~土合駅
翌朝も良い天気でした。でも、ここで登り返そうとするとろくなことにならないと思うので素直に下っていきます。
下る行程は昨日把握できているので、ゆっくり撤収して7時頃スタートしました。ここからの下りでも1箇所懸垂下降で下りましたが、のこりは歩いて下ることができました。
下っていく最中、4組のパーティとすれ違いました。さすがに山の日を含む三連休初日、人気の沢だけあって登ってくる人も多い様です。
最後のハナゲの滝は右岸の巻き道が滝下まで続いていたので徒歩で安全に降りることができました。
ハナゲの滝下のウォータースライダーは未だ朝早く、キャニオニングツアーが来ていなかったので滑っていくことにしました。ずぶ濡れになりますがめちゃめちゃ気持ちよかったです(こちらの様子は動画で)。
入渓点まで戻って着替えている間にキャニオニングツアーがやってきてしまいあたふたしましたが無事土合駅まで戻ることができました。
電車が丁度出てしまった直後だったのでバスで水上駅経由で帰ります。土合駅の発着電車は少ないので注意が必要です。
下山飯
バスの時間が直ぐだったので下山飯は水上駅前のそば処「くぼ田」に立ち寄りました。
三色茸そば(冷)を頂きました。茸がどれも美味しく、特に舞茸天はめちゃめちゃ美味しかったです。
一緒に頼んだクラフトビール「オクトネ エール」もちょっとお高めですが飲んだ後の香がとても良くて頼んで正解でした。
バイトなのか若い子が接客していましたが、誠実な接客で好感を持て、電車がくるまで気分よく過ごせました。
動画
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?