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2022年 9月 副住職だより 【この世で一番恐ろしいもの】

【この世で一番恐ろしいもの】

 先日とある門徒様のお宅にお参りした時の事です。門徒様が「世の中で1番恐ろしいのは人間ですよね」とお話下さいました。確かに、と思うと同時に「その人間の中でも一番恐ろしいのはこの私なのでは」と思いました。

 浄土真宗ではお念仏のおみのりを味わわれた方を、妙好人と呼びます。その妙好人に、浅原才市(あさはら・さいち)さんという方がいらっしゃいます。四月法話会の法話でもお話した方です。

 才市さんのこんな話があります。ある日地元の画家が才市さんの肖像画を描いたところ、才市さんは「これはわしじゃない!」と言って、鬼を表す角を描き加えさせたといいます。画を見て「鬼の心をもった才市のありのままの姿」と言われ、「鬼のこの私をこそ救わずにはおかない」という阿弥陀様のおはたらきを有難く喜ばれたそうです。

 正直この才市さんの話を聞いても、自分自身が鬼であると思えません。それが人間の中で自分が一番恐ろしい鬼だと思うゆえんです。他人には「あの人は性格が悪い」とか「許せない」と思っても、自分に対してそう思う事はないからです。いつだって他人に対して毒を吐く自分に気づく事が出来ず、知らないうちに他人を傷つけているのが私の本性なのです。

 そんな何をしでかすか分からない私の恐ろしい本性が現れ、自分が嫌気が差す事もありますが、そんな私を仏様は見抜かれ、だからこそこの私を「救わずにはおれない」とはたらき続けて下さっておられます。そのご恩に感謝し南無阿弥陀仏とお念仏申す人生を歩んでいきたいです。

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