サウナと宝と反社
麻雀関係ない話。
普段大きめのスーパー銭湯的なところに行くんだけど、超場末の銭湯に初めて行ったのよ。
めっちゃ小さい銭湯でさ、ちょっと広い家族風呂って感じ。
でもちゃんとお一人用のサウナもあって、悪くなかったのよ。
(こりゃぁ個室サウナみたいなもんやんけ!)
ノリノリで1セット目のサウナを終えたのよ。
サウナ室出たら、既に先にいた客も出てて、見知らぬ新客のこどもが一人だけいたんよ。
(ん?一人か?あぁ、パパがおらんでママと娘とかが女湯に入ってるパターンやろなぁ)
こちとら大人。そして一応9段。
相手の状況を読んで察するのは朝飯前。
(お前はまだ9級くらいだな。ふふ。早く上卓くらいには行けよ。)
水風呂を終え、椅子に腰かけてリラックスタイムに入ってたら、
「サウナってどこにあるの?」
9級が9段様に話しかけてきた。
なんせ家族風呂程度のスペースに二人だけ。9級も当然のように話しかけてくる。人懐っこい子だ。
現段位で区別はしない派だし、何より子に過ぎたる宝なし。
よその子も宝。
うちの子はすんごい宝だけど。
「あるよ。ここだよ。」
入りたそうにする9級。
「ぼうや何年生?2年生かぁ。入りたいの?あまり小さい子には良くないらしいからすぐに出るんだよ。」
サウナに入ってすぐに出てくる9級。
「あっちぃ!」
(そりゃそやろ。お前にゃまだ早い。だって9級だもん。)
やたら話しかけてくるからなんかいろいろ話した。
どうやら予想どおりママが女湯にいてパパはいない様子。
9級と適当に話して、2セット目の個室サウナへ。
2セット目から出てくると、変わらず湯船に浸かっている9級。
変わっていたのは、もう一人新規の客、50歳手前くらい?が髪を洗っていたこと。
目を引くのは、その新規の背中全体にイレズミがあったこと。
(うひょー!久しぶりに見た!反社の一向聴みたいな人やんけ!)
言うても、そういう人が何もしてないカタギである私に危害を加えてくることなどないことはさすがに経験上分かっているので、特にビビらない。
一応9段だし。
(イレズミ入れてるとスーパー銭湯系には入れないんだろうから、この場末の銭湯が彼の唯一のやすらぎのお風呂なんだろう。ここはそっとしておこう。)
そっとしておく以外の選択肢はそもそも無いんだけど。
そんな反社一向聴がいても9級の方は変わらず無邪気。
なんか懐いちゃってやたらと私に話しかけてくる。
「水風呂は冷たい?サウナ楽しい?学校で○くんがなぁ・・・」などなど。
こどもは好き。仲良くおしゃべりに付き合う。
(こどもは宝。一向聴も、それは分かってるだろう。ちょっとやかましくて迷惑だけど、知らんこどもに付き合っている私にインネンつけてくることはさすがに無かろう。)
そう油断していたところに小さな変化。
「ん、うん!」
声の主は一向聴だ!
これは、
「ちょっと不愉快やで、アンちゃん。そんなもんにしときや!」
という感じを暗に示す咳払い的なヤツ!
(ん?なんでです?確かにコロナ禍。黙浴推奨。とは言え相手はこども。怒るのは大人げないんじゃないですか?【心の中でも一応敬語】)
異変があれば納得できるまで考える。終盤の不自然な手出しと同じように。9段だからね。
(は!そうか!一向聴は後から入ってきた!だから私と9級の「ぼうや何年生?」という他人感溢れるやりとりを聞いていない!一向聴から見れば私と9級は親子!そして私は「他に客がいるのにテメェのガキがキャッキャ喋ってるのを注意もしないクソ親」に見えているのだ!)
(・・・非常にマズイ。一向聴の怒りがこどもに向くわけがない。親子という誤解があるならば、私に怒りが向けられるのも当然。いつ一向聴から「おい!静かにせんかい!」というお言葉とともに暴力が飛んできてもおかしくない!)
「ママはなぁ、・・・」
変わらず無邪気に話しかけてくる9級。しかもタメ口。コイツはずっとそう。
(クソガキが!敬語も習ってねぇのか!口を閉じろ!まるで私がオメーのバカ親みたいじゃねぇか!)
(ん?そう言えばこの9級、私にはガンガン話しかけてくるクセに、一向聴には全く話しかけないな。くそっ!イレズミの危険度を肌で感じ取ってやがる!5万点持ちの親リーには逆らわず、700点持ちの私の仕掛けにはバンバンかぶせてくる!末恐ろしいクソガキだ!あなどれん・・・。)
こどもは宝、などと言っていたが、コイツはもはやただのクソガキである。
いや、クソガキどころではない。この9級は、私の身の安全を脅かす敵と言っても過言ではない。9級の分際で9段様を追い詰めるとは。
(マズイ!早急に私と9級が他人であることを一向聴にさりげなく伝えなくてはならない!私のステータスを「クソガキのバカ親」から「知らんこどもにも優しいおじさん」にランクアップさせる必要がある!)
「一向聴さん。実はコイツは知らん子なんですよぅ。懐かれちゃって困りましてねぇ。」
(いやいや。それはさりげなくない!意味不明だし!怒られる!)
(9級とのさりげない会話の中に他人感を入れるんだ!しかしもう年齢やら住まいの場所やら小学校やらひととおり9級の口から語られてしまっているので、重ねて「ぼうや何年生?」とかはもう聞けない!ホントによく喋るクソガキだ!いまいましい!)
「ん、うん!」
(一向聴さん!また咳払い的なヤツですか?(涙)ぼんやりしている時間は無い!今にも一向聴が聴牌する!そして私が刺さる!いや、刺される!
と言うかフルイレズミのあの方を反社一向聴と見積もったことがそもそも甘過ぎた!「ラス目の親リーに現物残してスジの3・7牌で放銃する」くらいに甘い!反社一向聴じゃないよ!反社そのものだよ!とにかくクソガキこと9級と私が他人であることを伝えなくては!考えろ!一撃で一向聴の誤解を解く魔法の言葉を!9段ならできるだろ!)
焦って混乱した頭がひねり出した言葉が、
「…おめぇ誰だ?(悟空風)」→9級
…酷い。あまりに酷い。
「オレ?(名字と名前)だよ!」
酷い言葉にも無邪気に返事する9級。
「ほぉん。そっかぁ。名字くんっていうのかぁ。(興味ない)」
一応だめ押しで他人感をアピっておく抜け目の無い9段。
(ごめんよ9級。悟空みたいなこと言って。)
9級自身が無邪気過ぎて気にとめてなさそうなのは不幸中の幸い。
なお、一向聴は浴場から出るときに「お先に失礼しまぁす。」と言って出ていった大変礼儀正しいナイスダンディ(場末の銭湯なので結構みんな挨拶する)で、咳払い的なヤツも純粋な咳払いだったみたいで、もちろん怒ってなどいなかったっぽい。
(ごめんよ一向聴。反社呼ばわりして。)
冷静になって考えてみれば、よその子であっても、
「みんなのお風呂だから静かにしようね」
くらいの注意をするなどはできたはずであり、これにより一向聴のお怒りを静めることもできたはずである(そもそも怒ってなかったけど)。
それが「おめぇ誰だ?」である。
今までさんざんおしゃべりしてきた相手(しかも子ども)にぶつける言葉ではない。酷い。
よくさ、Mリーグでプロが酷いミスしたときにさ、
「極限状況ゆえに起こるミスです!」
みたいなフォロー入るじゃない?松嶋さんとか多用するじゃん?
(んなアホな!)
って思ってたのよ。
でもわかったわ。
一向聴に襲われかねないという極限状況に置かれると、頭が正常に働かないのよ。情けないことになんも出てこないの。
だからね、極限状況に置かれると、とんでもないミスは起きちゃうんだなぁと実感できたんよ。
そういうヒューマンエラーはありうるからさ、カリカリしないで優しい目で見てもいいね、と思った話でした。
長かったね。
読んでくれた方、ありがとうございます!
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