「まいてつLust Run!!」プレイ記

「まいてつ」とは。今は無きエロゲ制作会社Lose(ルーズ)によって制作された18禁恋愛ADVである。発売は2016年で、ファンディスクである「まいてつLast Run!!(以下まいてつLR)」は2020年に発売されている。
あらすじとしては、主人公である右田双鉄が、ヒロイン達と共にとある事情で消滅しつつある鉄道を復活させようと奮闘する。そんな物語である。
そして何より、私が初めてプレイしたエロゲであり、人生最高レベルの号泣をしたシナリオを持つゲームでもある。

「まいてつ」に触れたきっかけは、1人のネッ友である。Twitterを始めた五年ほど前からの仲で、出会ったキッカケはとあるゲームのギルドだった。そんな彼は様々なエロゲをプレイしていて、以前まいてつLRが500円セールを行った際に「今めっちゃ安いからやれ!」とギルドのdiscordに流しており、存在は知っていた。
そして先日。まいてつLRがミストトレインガールズというソシャゲとコラボする記念で、DMMで100円、DLsiteで330円という狂気のセールを敢行したことを彼から知り、「買うだけ買って、面白ければやるか」くらいの気持ちで始めた。ちなみにまいてつLRは素で買うと1万円ちょいする。しかしその判断が、私がまいてつ、ひいてはエロゲの楽しさを知ってしまう要因となってしまったのである。

※以下、まいてつ及びまいてつLRのネタバレを含む内容となります。お気をつけ下さい。


 「まいてつ」全体を通しての感想は、ただひたすらに「ありがとう」だった。個別ルートの総まとめであるグランド√をクリアした際には、PCに向かって頭を下げた。冗談抜きで。そして仲国√をクリアし、もう届くか分からないGoogleフォームに長文の感想を書き記した後、もう一度頭を下げた。本当にそうしてしまうくらいに、私にとって最高の作品だったのだから仕方ないと思って欲しい。
 理由はおおよそ2つある。
 まず1つ目の理由は「不快感が一切なかった」だ。主人公達の目指す蒸気機関車8620や鉄道の復活は、それらによる経済振興の可能性を証明し、エアクラ工場の誘致を撤回させるというもの。そしてエアクラ工場誘致賛成派は、エアクラ工場による経済振興を目標としている。結局のところ、両者は互いに、御一夜のためを思って行動している。ただその手段が違うというだけ。つまるところ、立場や手段が違うというだけで目指すところは同じ。敵は敵でも排除しなければならない敵で無い。だから不快感が無かった。ああでも、ポーレット√のセクハラ議員だけは……うん。
 とまあ、不快感の無さは個人的に凄く好ましかった。ストーリーに感情移入しやすい私は、そういった不快感を持った敵を見続けるとストレスで胃痛がしたりする。だから、まいてつはかなり読みやすかった。
 2つ目の理由は「シナリオそのものの完成度」だ。ノベルゲーであるからには当たり前と言えば当たり前なんだけど、やっぱり良かった。
鉄道の復活とエアクラ工場誘致撤回という最終的な目標はどのヒロインの√でも同じ。けれどそこに辿り着くまでの手段や葛藤、ぶつかる問題が変わっていく。文字通りルートが違う。
 そして何より、主人公右田双鉄の、過去との向き合い方の違いに言葉にできない良さを感じた。ハチロク√では乗り越え、日々姫√では抜け出して、ポーレット√では向き合う。三者三様どころかヒロインが変わる事に、ほんの少しではあっても変わっていく。右田双鉄という存在は、過去に囚われた、機械のような人間であるから。それが段々と“人間”へと変わっていく過程の違いがそのままヒロインの人間性の違いにもなっていく。そうして各々の違いを噛み締めた先、最後に訪れるグランド√で路子は列車を降り、駅を出る。双鉄の「路子を終着駅に送り届ける」という願いが、そこでようやく叶う。
 もうね、ただただズルい。路子が列車を降りるまでも今まで見てきた√の要素が現れて、章のタイトルはみんなの名前で、そして最後の1枚絵で笑顔の双鉄自身が初めて映る。これをズルいと言わずしてなんと言えばいいんだ?書いている今も思い出して泣きそう。
 ここまでは全体の感想だったけれど、これからは私が人生最高レベルに泣いたハチロク√の、正確にはハチロク√afterの話をしたいと思う。
 機械みたいな生き方をしてきた双鉄と、機械そのもののハチロクの甘酸っぱい恋。そしてお互いに背負った過去を乗り越えて、1歩近づいた2人が出会う100年選手のレイルロオド、オリヴィ。私は彼女にとことん泣かされた。
 最初は見た目と駄々を捏ねて泣く姿に、双鉄やハチロクと同じように小さい子のように思った。れいなという言動に反して本質は賢いレイルロオドがいるというのに。そうして話が進むほどに明らかになっていくオリヴィの年季と、底にある苦しみとが明らかになっていくにつれ、救われて欲しいと切に願い始めた。
 そうして来る終盤で、私はボロ泣きした。画面が見えなかった。どれだけ苦しくてもレイルロオドとしての責務を果たし、欲を出さなかったオリヴィが、最後の最後に我儘を言う。あの「マスター」の一言で涙腺が緩んだ。あのシーンについて私はこれ以上多くを語れない。思い出すだけで言葉が吹き飛んでしまう。それだけあのシーンは私の心に突き刺さっている。
 しかもその後、あの2人が現れたことでまた泣いた。しかも名称不明のあの子が帰ってきたシーンのCG、“Hello New World!”の構図がオリヴィが初めて御一夜に来た時のCGと全く同じで涙腺の緩みに拍車がかかった。ズルい。演出が本当にずるかった。
 余談にはなってしまうが、ハチロク√はafter以前も好きだ。台風の橋越えも、炭鉱駅のワンシーンも、そして“すず”という名前を付ける場面も。どの√が1番好きか、と問われればハチロク√だと答えると思う。でもポーレット√afterの、他にないより未来を進んだ空気感や、日々姫√の日々姫の成長も好きで……正直決められはしない。
 それら以外にも、BGMや劇中歌は好きだ。特にレヱル・ロマネスクとリトルプリュム、On The Railsの3曲が好きだ。クリアし終えた今でも聞き返すことが多い。CGや立ち絵にキャラクターの声にと好きな部分は大量にある。まあ、要は全てが好きだと言える。それが私にとっての「まいてつ」という作品だ。

 今後はまだ聞ききれていないラジオ等の音声コンテンツを消化しながら、今年中には御一夜の元となった人吉に、そして叶うならばSL人吉に乗ろうと考えている。つい昨日ぬいハチも届いた。私の旅はまだまだ続きそうだ。


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