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クローンゲーム文化から12年をかけて生まれた伝説の怪物、『ドラゴンボールZ RPG』について語りたい


【!注意!】

①本記事は、『ドラゴンボールZ RPG』公式wiki(https://w.atwiki.jp/dbz_rpg/)に記載されている「【ゲームをご紹介いただける方へ】」の項目を確認した上で投稿しております。

②本記事は、商業作品の素材がぶっこ抜きされて用いられている二次創作、いわゆるクローンゲームについての記事になります。

当然ながらアンダーグラウンドなゲームであり、この件について、
「素材を盗用している時点で愛もクソも無い」
「何が文化だ」
「原作漫画及びゲームの関係者に対する冒涜でしかない」

という至極真っ当な感想を抱く方は、このページをそっと閉じてください

このような書き方をせざるを得ないことを本当に心苦しく思いますが、ここだけはハッキリさせておいたほうが双方にとって幸せになれると思い、始めに明記させて頂きました。

【概要】『ドラゴンボールZ RPG』誕生の経緯

・有志が製作したPV

公式wiki
https://w.atwiki.jp/dbz_rpg/

本作『ドラゴンボールZ RPG』を一言で説明すると「ファミコンで発売されていたドラゴンボールZ RPG3部作を1本に統合した上で、恐ろしい質と量の追加要素を加えたファンメイドゲーム(クローンゲーム)」となる。

始めに、まずはその原作となったファミコンのRPG3部作について解説しよう。

原作ストーリーを順番に追う形となっている、本家Z3部作。
ちなみにこれらのシリーズとはまた別のRPG作品も数本ある。

これら「強襲!サイヤ人」「激神フリーザ!!」「烈戦人造人間」、以上の3本のRPGがナンバリングのシリーズとなっている。
この時代のドラゴンボールRPG作品の大きな特徴として、キャラクターの行動が全てカードによって決定されるというものがある。

画像はらはえま Games様「ドラゴンボール ZⅢ 烈戦人造人間【FC】(ノーカット・ノーミス クリア)(裏技付)」(https://www.youtube.com/watch?v=wGKZ1lS05ck)より

キャラクターの行動選択時に画面下の手札からカードを選び、それによって攻撃力、防御力などのステータスや実際に取る行動が変化する
時代を鑑みなくても非常に珍しいシステムであり、当時のドラゴンボールのRPGと言えば、このカードバトル風の戦闘形式が代名詞となっていたと思う。

画像はらはえま Games様「ドラゴンボール ZⅢ 烈戦人造人間【FC】(ノーカット・ノーミス クリア)(裏技付)」(https://www.youtube.com/watch?v=wGKZ1lS05ck)より

コマンド入力が終わると始まるサイドビュー風の画面でキャラクターが画面上を動き回りながら戦う演出も、当時としては非常に珍しい。
中でも必殺技に関してはファミコンのRPGの中でも屈指のド派手さを誇り、まさしくドラゴンボールのスケール感を、限られたスペックの中で最大限に表現することに成功している。

総じて単独で見ても極めて個性的な演出が光るRPG、キャラゲーとして見れば更に申し分の無いクォリティだった本家3部作だが、一点、今なおネタにされるほどの致命的な欠点があった
サイヤ人編を描いた「1」、フリーザ編が展開される「2」と来て、「3」がセル編の前半部分、つまり人造人間編だけで終わってしまうのだ。
サブタイトルが「烈戦人造人間」なのはそのためであり、当然ながら時期的に主人公である悟空の出番も殆どない。

そんな彼の「こんどは オラが やる!」の言葉と共に「3」は衝撃のエンディングを迎え、そしてその勇姿がカードバトルRPGで描かれることはついぞ無かったのである。

画像はらはえま Games様「ドラゴンボール ZⅢ 烈戦人造人間【FC】(ノーカット・ノーミス クリア)(裏技付)」(https://www.youtube.com/watch?v=wGKZ1lS05ck)より

「4」が出ることはなく、スーパーファミコン作品「超サイヤ伝説」においても繰り広げられた物語はサイヤ人編からフリーザ編まで、すなわちファミコン3部作で言うところの「1」と「2」の内容であった。
要するに従来のカードバトルRPG作品でセル編が描かれることはなかったのである。
(追記:かなりシステムは異なるものの、カードを用いたバトルシステムを採用しているゲームボーイカラー用ソフト「伝説の超戦士たち」という作品にセル編があるらしいです。
情報提供、ありがとうございました)

そんな中、「こんどはオラがやる」の先を描いてやろうという人物が、2009年にクローンゲーム公開サイトの大御所たるクローンゲームパーティ、通称クロゲパに現れる。
本家をRPGツクールVXで再現した本作『ドラゴンボールZ RPG』、その体験版が公開されたのである。

体験版は公開されてから間もなく何度か更新され、自分の手元に残っている最古のバージョンの体験版だと2011年のものしか無いのだが、この時点で既に本家の操作感が完全に再現されており、様々なオリジナルの追加要素を加えた上で、フリーザ編までが完成していた
端的に言って、恐ろしかった。

本家の「1」にあたるサイヤ人編のラストバトル
既に様々なアレンジが加えられており、フリーザ編では条件を満たすと本家では影も形も無かったはずのバーダックが加入する
バトルシーンの再現度の高さも既に完成されていた……が…

しかし、この期間が長かった。
体験版の更新がぱったりと途絶えたのである。

確か時折製作者の方がクロゲパの掲示板に書き込みしていた記憶はあるものの、正直なところこの当時、完成を本気で信じられた人は少ないんじゃないだろうか。
フリーゲームを追っていれば無数に味わうことになる、ああ…またなのだろうか、という感情。

しかし2016年、約5年後に行われた体験版のアップデートによってその疑念は一旦は払拭されることになった。
システム的には様々な追加要素があったもののシナリオの追加は少なかったが、それでもアップデートが数年越しに来たことで、そろそろ完成するのではと期待に胸を膨らませた。
しかし、ここで再び本作は長い水面下での活動に戻った

その後再浮上したのは2021年、2度目の5年越しの更新の際、ついに本作はセル編を含んだVer1.00として奇跡の完成を果たしたのであった。

本家3部作で描かれることは無かった「4」が、ここにある

通算12年以上の開発期間の果てに、ついに具現化した夢の先。
少なくとも10年以上毎週のようにクロゲパ掲示板を確認していた自分としても、感無量なんて言葉では言い表せない、現実感の無さすらある心境だったことはよく覚えている。
ダウンロード中の心情を有り体に言えば、「え、本当に完成したの?」だった。

こうした経緯で完成を迎えた『ドラゴンボールZ RPG』。
それは単に本家3部作にセル編を加えた以上の、もはや本気で何故これがプレイできるのか分からないと思わせられるレベルの何かであった。

『ドラゴンボールZ RPG』はただの移植ゲームでは終わらなかった。
本家をリスペクトしつつ、そこにどのような要素が追加されていったのか。
いよいよ本作の紹介に移りたい。

有志によって製作されたカセットデザイン。
このギザギザがついているフォルムの懐かしさに、涙が止まらない。

【追加要素①】RPGとしての完成度を高めた独自システムの数々

本家はキャラゲーとしては非常に秀逸なものの、RPGとしての戦略性やキャラ育成を楽しむ余地は少なかった。
もともと当時のRPGの多くはレベルを上げて殴る、ないしそれに毛が生えた程度のものが多い時期だったと思われるが、その中でもとりわけシンプルさが際立っていたのはある意味ではドラゴンボールらしいと言えるかもしれない。

しかし令和の時代に完成した本作は、様々な追加要素によりRPGとしてより楽しめるようになっている

本作独自の味付け、その1つ目は『パッシブスキル』の採用だ。

キャラクターの固有スキル3枠、汎用スキル枠3枠、合計6つのスキルを習得・強化していつでも自由にカスタマイズができる
本家に比べると育成の幅がかなり広がっており、どのスキルを伸ばしていくのか考えていくのが面白い。

そして2つ目、こちらが本命であり、同時に『ドラゴンボールZ RPG』の目玉のひとつと言ってもいい。
『スパーキングコンボ』の存在である。

本作でも本家同様にキャラの行動決定時に特定のカードを選択することで必殺技を放つことができるが、この際に特定の組み合わせの必殺技を同時に放つことで特殊な連携攻撃が発生する
この連携攻撃、『スパーキングコンボ』がRPGとしてもキャラゲーとしても本当によく出来ている、素晴らしいシステムとなっている

本家では誰でも必殺技が撃てる「必」属性カードが非常に強力だったが、スパーキングコンボの発動にはキャラ毎に設定されている固有の属性を持つカードが必要となる
例えばクリリンは本作では「亀」属性「必」属性の2つで必殺技が撃てるが、強力なスパーキングコンボの発動には「亀」属性カードが必要なため、他のキャラの必殺技カードが揃うまで「亀」カードを手札に温存しておく、といった戦略性が生まれている。
手札の状況次第ではそもそもクリリンで攻撃することを諦めて他のキャラのスパーキングコンボを狙うのも手である。
攻撃と回復を機械的に繰り返すやり取りが多かった本家に、スパーキングコンボシステムひとつでパズルゲーム的な楽しさを付与しているのは見事と言う他ない。

原作や劇場版、ゲーム作品などのシーンを元ネタとしているものも多く、出典元を知っていれば知っているほどニヤリとできるだろう。



他にもお気に入りのキャラクターを優遇して育てられるようになっているなど魅力的な追加システムは非常に多く、とても紹介しきれない。
総じて言えるのは、RPGとしてもキャラゲーとしても、よりドラゴンボールの世界観を楽しめるように、最高に理想の形でブラッシュアップされているのが本作ということだ。

通常のRPGのアイテムにあたるお助けカードの種類も大きく増加している

【追加要素②】伝説のその先へ、幻だったはずのセル編の存在

スパーキングコンボと並ぶ本作の目玉は、やはりセル編の存在であろう。
「もし本家3部作に続きがあったらこんな感じになっていたかもしれない」という夢にも見たプレイ感がこれ以上なく再現されている。

セル編最大の名シーンである天津飯、決死の新気功砲

本家では描かれなかったストーリーであるため当然と言えば当然だが、このあたりから特に自作のグラフィックが多く組み込まれている。
それでいて違和感が一切無い仕上がりになっているのも特筆すべき点だろう。

迷シーンもほぼ完全再現。本作では、ちゃんと「やって」くれる!

あえて多くは語らないが、このゲームをプレイできて本当に良かったと、ありがとうという気持ちで胸がいっぱいになった。
望んでいたものが、望んでいた以上の形で現実となっていた
陳腐極まりない表現だが、セル編をプレイした感想はこのようにしか言い表すことができない。

世界チャンピオンももちろん登場!

【追加要素③】セル編だけに留まらない、多数の追加ストーリー

追加ストーリーはセル編だけではなく、劇場版や本家3部作以外のゲーム作品、アニメオリジナル回など、様々なところからエピソードがかき集められている

劇場版「極限バトル!!三大超サイヤ人」から人造人間13号
もしバーダックが生きていたらというIFを描いた「エピソードオブバーダック」も再現
片腕を失った大人悟飯。それが意味するものは……

原作を忠実に再現するだけだとゲームとしてボリュームが足りないというのはおそらく本家から存在していたであろう課題であり、「1」でも劇場版のエピソードを取り入れることで本編の内容を補っていた。
その究極系とでも言うべき形態が本作と言える。
結果として、本作のボリュームはプレイ時間が数十時間にも登る大作RPGクラスになっており、思う存分に「あの頃のドラゴンボールRPG」の世界に浸ることができるのも大きな魅力だ

そしてそれならば、あいつが出ないはずもなく……!

【追加要素④】本家にはいなかった仲間キャラクターたち

ストーリーの追加と少し重なる形になるが、本作独自の仲間キャラも存在する。

画面から確認できるのは亀仙人に人造人間16号、そしてまさかのチチの姿も

彼らのバトルグラフィックももちろん新規に書き起こされており、ファンには嬉しいところだ。

【追加要素⑤】出典はゲームからアニメまで、多数の8bitアレンジBGM

本作オリジナルのアレンジBGMも非常に多い。
これもやはりアニメや他ゲーム作品から取り入れられており、本作で流れても違和感が無いようにすべてファミコン風アレンジが施されている

こちらのBGMには聞き覚えのある人も多いのではないだろうか。

オプションからザコ戦のBGMを自由に設定することもできるので、お気に入りの作品のお気に入りのBGMを流すのも一興だ。

【後書き】本作が生まれる要因となった全てに感謝

本作『ドラゴンボールZ RPG』の紹介は以上だ。

RPGツクールVX製であるというのも、人によっては驚愕の事実である

改めて強調するが、本作はあくまでもクローンゲームである
多くの素材が本作のために作られた自作のものであるとは言え、そうでないものももちろん多い。
そもそも世の中の大半のゲーム製作者はクリーンな素材を使って、あるいは作って、血と汗と涙を流しながら作品を作り上げているのである。
そのことは絶対に忘れていけないと同時に、『ドラゴンボールZ RPG』が極めて完成度の高い作品であることもまた疑いの余地が無い。
その要因を推察するにあたって愛や執念といった精神論を持ち出してよいのかはジャンルを考えると非常に難しいところだが、少なくとも自分個人としては、それらが無ければ決して完成することは無かったであろうと考えている。

この作品を安易に他人にオススメしていいのかどうかも心底悩むところではあるのだが、少なくとも本家3部作の経験者には絶対にプレイしてみて欲しいというのが個人的な本音だ。
それだけの魅力と夢が、本作には詰まっている。

国内、海外を問わず、こうした怪物が時折出現するのがクローンゲームの面白いところであり、好きなところでもある。
この記事の反響次第では他の名作クローンゲームについても書いてみたいと思っているけども、予定は未定。

最後に改めて、原作者である鳥山明先生、本家ドラゴンボールRPG3部作及びそのスタッフ、本作を告知&体験版を公開する場となったクローンゲームパーティとその管理人氏、本作の開発に携わった人々、そしてドラゴンボールという作品と世界観、それら全てに心から感謝したい。

本家ではお馴染みのミニゲームも完備
ファミコン時代を思わせるレトロなゲーム外マニュアルまでも。
細部に至るまで、凄まじい作りこみのゲームだった

【当記事の告知ポスト】


↓はこの記事とは何も関係のない同人ゲームの紹介ツイートですが、もしよかったらついでに見てくださると嬉しいです。


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