狩人

通信制大学生へ贈るレポートの書き方(12)

レポート作成例

前回は引用と参考文献の表記について説明しました。今回からレポートの作成例を出して、レポート作成のイメージを具体化していきます。あくまでも1例です。参考になれば幸いです。


1.課題要件の把握

2.課題要件を満たすために必要な資料を探し、資料を調べ、内容をまとめる

3.レポートのおおまかな内容を決める

4.レポートを実際に作成する

5.完成したレポートを提出する


レポートの作成例の課題要件

課題要件:農耕社会と現代文明の関係について調べてまとめなさい

レポートは1400〜1600字


参考文献(1部)とノート例

【その1】


【その2】


アウトライン例


以上の内容を基にして作成したレポートは次のとおりです。




レポートの実例

■ はじめに

 狩猟漁撈採集社会から農耕社会への変化から、文明が産み出された。キーワードは 定住化と大量生産による報酬と都市化と戦争の誕生である。これらのキーワードをもとに、食生活の変化によって文明が産み出されたことを以下内容で説明する。

■ 狩猟漁労採集時代

  1万1000年前に農耕を始めるまで、約700万年ほどの間、全ての人類は狩猟漁撈採集によって食糧を得ていた。獲物となるナウマン象やマンモス、鹿や猪など追って移動し、または海や川で魚を捕り、山菜や木の実を採集して生活をしていた。狩猟漁撈採集の時代は、ひとつの土地に定住化することはほとんどなかったと考えられている。現代にも残る狩猟民族の例としてアフリカのサン(ブッシュマン)やムブディ・ピグミーは定住するのではなく、移動しながら獲物を狩って生活をしていた。また狩猟漁撈採集社会には報酬という概念が薄く、むしろ平等に分配する傾向が強い。例えば、サンとムブディ・ピグミーには獲物を狩った者が肉を多くとるが、その後集落の者達全員に行き渡るように分配する。独占ではなく分け合うのである。

■ 最初の文明

  メソポタミア文明が興ったチグリス川、ユーフラテス川のあたりは土地の塩分が強かったが、川の力を借りて大麦の栽培が行われた。「1粒の麦は、生育条件が良ければ、60〜70倍もの麦を生み出す」(高平・愛甲・銅・草根・天宮2012,p.14)と言われる。農耕の発展は人類の定住化と人口増加を促した。 大量生産ができる大麦は、その生産と管理のため、定住化を人類に促し、定住化は出産サイクルを短期化させ人口を増やした。移動を伴う狩猟漁労採集社会では 子どもが移動に耐えるようになるまでは、次の子どもをうめなかったのだ。つまり、農耕による定住化が最初の文明を産んだのである。

■報酬の発生

 農耕の発展による人間関係の変化が報酬が産んだ。小規模集団が基本となる狩猟採集社会では、養える者が親戚含め養うという傾向が見られ、また食料は基本的に平等に分配される。農耕による人口増加は、さらなる食料増産が求められ、耕地開拓とともに大規模感慨施設が必要となった。すると仕事が多岐にわたり、労働と分配の割合に不公平性を感じる人が出現したと考えられる。特に優れた技術者たちは、労働の対価を求めるようになり、報酬が生まれたと考えられる。当初報酬として支払われたのは大麦や土地ではないだろうか。例えばエジプトのピラミッド建設時、労働者へ大麦や玉ね ぎ、ビールが給料として支払われていた。古代エジプトでは銀と大麦が貨幣として利用されており、労働者は居酒屋での支払いを大麦ですませていた。これがいずれ銀貨や金貨に変わり、時代を経て紙幣が生み出されたのである。

■都市の誕生

  農耕による定住化が進み、人口の稠密化が進む地域は都市化した。非生産職である官僚が生まれ、農耕による余剰が彼らの報酬となった。そして余剰作物の流通や他の都市からの物資の流入が発生し、それが集中した地域が都市となった。自給自足社会では、物資の流通がほとんど発生しない。しかし余剰生産の輸出や他国や他の地域から食糧や特産品の輸入が盛んになると、物資の流通により貨幣経済が発生し、その地域は都市化した。報酬を産めるほどに文明化が進むと行商を産み、市場を産むのである。

■戦争の誕生

 小規模集団同士の利害をめぐる殺し合いが、農耕の発展による人口増加によって大規模な殺し合いへ発展し戦争を産んだ。戦争の発端は土地や水場などを含む資源争奪などであったと推測される。

■結論

  農耕社会の誕生が、現代文明を産むためには必須であった。長年にわたる食糧獲得課題への取り組みによって、狩猟漁撈採集社会から農耕社会が産まれた。農耕社会によって増えた人口が定住化を産み、報酬や戦争や都市を産んだ。つまり農耕社会の誕生が、現代社会を産んだ要因のひとつであると考えられるのである。

【参考文献】

葛野浩昭「25狩猟採集民——狩猟採集民の生業活動の多様性を知り、この現代に狩猟採集を続けることの文化・社会的意味についても考えよう」(2000)山下晋司・船曳健夫編『文化人類学キーワード』有斐閣,pp.52−53。

栗田博之「27農耕——農耕による食料生産の開始は人間の生存にどのような革命的変化をもたらしたのか」(2000)山下晋司・船曳健夫編『文化人類学キーワード』有斐閣,pp.56−57。

下田淳(2011)『居酒屋の世界史』講談社現代新書。

祖父江孝男編(2004)『文化人類学入門』中央公論新社,pp62—78。

ダイアモンド・ジャレド(2012)『銃・病原菌・鉄 (上)』 (倉骨彰 訳)草思社。

高平鳴海・愛甲えめたろう・銅大・草根胡丹・天宮華蓮(2012)『図解 食の歴史』新紀元社。

原田信男(2010)『日本人はなにを食べてきたか』角川ソフィア文庫。

米山俊直・谷泰編(1991)『文化人類学を学ぶ人のために』世界思想社。



レポートの実例は以上です。

レポートと参考文献は別紙にプリントアウトを行い提出しましょう。またWeb上で提出が可能な場合も、レポート本文と参考文献は改ページを行い、別々のページで表示しましょう。

本日はここまでです。次回はこれまで説明したレポートの書き方を踏まえて、このレポートの内容を分解・分析していきます。

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