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剱岳平蔵谷

剱岳残雪期の入門ルートである平蔵谷を紹介したい。コロナ禍さえなければ、今現在(GW含む前後)が最も快適に登れる時期である。2020年春も数回のガイドを予定していたが現状、山を登る状況にはなく全て中止となった。

平蔵谷は隣の長次郎谷と同様に剱沢の支流で、名ガイド「佐伯平蔵」の名を残すべく、近藤茂吉により命名された。

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平蔵谷をアプローチするルートとして、源次郎尾根1峰平蔵谷側下部中谷ルート、中央ルンゼ、上部成城大ルート、名古屋大ルートは何度か登ったことがある。残念ながら私にはこれらのルートをガイドする力量はもうない。最近はクライマーが取り付いている姿はほとんど見ない。どこも素晴らしいルートだったが、このまま自然に還っていくのだろうか。再生されることを期待する。

平蔵谷から剱岳を目指す場合、平蔵谷出合(標高2082m)から平蔵ノ頭(標高2800m)まで約800m弱の標高差を登る。登れる適期は例年残雪期である4月中旬以降から夏の雪渓崩壊が始まる時期までである。長次郎谷と比較すれば距離も短く、特に大きな危険箇所もなく平蔵ノコルに達することができる。残雪期の別山尾根は積雪状況により非常に厳しくなることが多く、平蔵谷を登降した方が岩場と不安定な雪の客観的危険は避けることができる場合が多い。しかし、それもアイゼン&ピッケルの使用に長けていること、ルートをしっかり自分で判断できること、雪崩リスクに対する対応経験が豊富であることが前提だ。一般登山道ではなく、整備されていないバリエーションルートであることを理解して取り付いて欲しい。

今回は2017年4月30日の平蔵谷ガイドを紹介する。写真家で登山ガイドでもある檢見﨑誠氏(https://note.com/peak2peak)に同行撮影していただいた。掲載写真は全て同氏の撮影によるものである。私自身、平蔵谷ガイドは今まで相当な数を催行してきたが、その中でもこの山行は決して忘れることができないものとなったのである。

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