東京の秋は長く、原色の上着を着ても許されるということ
東京の秋は長い。
北国出身の私にとって未知の気候である。
北では、春や秋なんてそれぞれ二週間ずつしかないのだから。
したがって我々は春服秋服の必要性を感じず、ほとんど持っていない。
何を着ているかというと,春は冬服のインナーからヒートテックを抜き──真冬は極暖を着ているのでインナーなしの冬服は非常に防御力が低い──薄い冬服を着るし,秋はというと,夏服の上に冬服のカーディガンを羽織る.
それで充分事足りるので,秋服というものを意識したことがなかった.
雑誌やSNSで見る秋服のなんと儚いことよ。
北では意味をなさない服なので、いくら素敵だかわいいと思っても手を出さない。
血迷って買った古着の真っ赤なチロルウールのジャケットなんか3年も4年もただ部屋に彩りを加える装飾の一部でしかなかった。
冬に着るには寒いし、二週間しかない秋の間に着る機会なんてほとんどない。
ところで、東京ではほとんど何を着ても許される。
露出狂や全裸じゃない限りは。
上記の真っ赤なチロルウールのジャケットだが,このたびようやく日の目を見た。
何度も言うが東京は秋が長い。
急に寒くなったり、かと思えば夏が追いかけてきたりを繰り返しながら、いつの間にか日は短くなり空は高くなり空気は冴えて冷え込む。
そうして秋の輪郭がはっきりと浮かび上がってくる。
夏服にカーディガンを羽織るのでは少し寒い。
ヒートテックなんて着てたら暑くてしょうがない。
けれど冬服を着るのには、まだ早い。
真冬ほど冷え込まず、かと言って半袖では物足りない、そんな日が続いたある日気がつく──秋服が必要なのだ!
そして、東京では多少赤い服を着ていたからといって奇異の目で見られない。
そういうわけで、地元では奇異の目で見られ,友人にはそれは着てこないでとまで言われたほぼ原色の赤いチロルウールのジャケットが、ついに、ここ東京では気温にちょうどいい防寒具になった。
黒いタートルネックに真っ赤な上着を着て歩いているときの高揚感といったらない。
赤い上着に合わせて赤いパンプスを履いて歩くのも最高に気分がいい。
原色の服を着ても誰にも咎めらないし、何よりこのお気に入りのチロルウールのジャケットを活かしてあげられる。
秋服は、ここ東京の気候によって成り立つ楽しみなのである。
ほなまた
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