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ザ・ノンフィクションの泊まらせて男を見て。

面白かった。
全国各地の駅前で「泊まらせてください」の看板を持っている32歳男性。人畜無害なベビーフェイスでおとなしい見た目。毎晩誰かのお家にお邪魔して家から家へ、都市から都市へ渡り歩いているのだそう。

ノンフィクションで前後編放送という。
所謂「レンタルなんもしない人」枠の人選であろう今回のこの人。もうアガリじゃん、とか思う。出版社から声もかかってて、本も来年出すのかな?くらいなイメージはできるけど。この枠の人で、ノンフィクションに出れたらアガリかな、と。

人と違う生き方をしてるので、人生観や仕事観の話なんかもよく出てきた。働きたくない、楽しくない仕事をしていて何の意味があるの?、人生1度きり、人と同じ人生なんてつまらない。
よく聞くワードだ。定型文として口から放っているだけで、彼の本心には聞こえなかった。
「まともに働きなよ」とか言われた時の為の切り返しのワードのように聞こえる。
思えばザ・ノンフィクションでこういう話をしてる若者はよく出る。みんな同じことを言う。
そういう煽り言葉の裏には隠された本心があるのだろうな、と思う。

働きたくない。
という言葉の裏にはもしかしたら、
「働くのはいいけど、面接が怖い。職場の人にイジメられるのが怖い。客に怒られるのが怖い。」とかそういった本心があったりするかも。
人と同じ人生なんてつまらない。も裏を返せば、
「そもそも恋愛に興味もなく子供も欲しくない。それをとやかく詮索されるのが嫌だ」
かもしれない。

話し相手がちゃんと聞いてくれて、否定せずその気持ちを尊重してくれないと、まず人って話さない。だから簡単な定型文が楽だし、何度もそれを口から言ってると自分はそう思ってるんだと錯覚する。だからノンフィクションに出ていた彼も、実際はどうなのだろうなと邪推した。(二年間のコンビニ店長時代の鬱屈、その発露としての今の活動があるのではないか、なんて悪い癖で考えたりした)

印象に残っているのは、彼をコミュニケーションの道具として完全に消費するのを目的として二度も泊まらせた女の子のシーン。
彼女は彼のことを「(寂しさを埋める道具として)コスパがいい」「質がいいぬいぐるみ」と評してあっけらかんとしている。
彼を性欲もあるかもしれない男性として捉えていないので同じベットで寝ることにも抵抗がない。
ここまであけすけに言う彼女に、泊まらせてくださいの彼は幸福そうなのだ。
僕を搾取してくれてありがとう、という風に見える。

泊まらせる側が本来隠している彼への搾取を、彼女だけがテレビカメラの前ですらあけっぴろげに見せる気持ちよさ。
きっと泊まっている方の彼も彼なりにそういった人間のせせこましい何かを垣間見て、それがない彼女が好きなのかもしれない。

泊まらせる側の「彼への哀れみがあって泊まらせた」という意見もあった。それもあるよな。

最後に善人としか言えないおばあちゃんが出てくる。いつか泊まらせて君が来るかもしれないと思い、ビールまで冷やしておく始末。
まぁおばあちゃんってそういうもんだよね…。
うちの亡くなったおばあちゃんも、子供の時の私のためにいつもはちみつレモンやヤクルトを冷蔵庫にいれておいてくれてたな…。
映画だとそういうおばあちゃんが一番に裏切られるので、ほんと現実ではそうならないことを祈ります。

Twitter(現X ←この表記クソうざい)で番組の感想を見ると、色々限界な人達の批判的な意見しか無いので、発火装置みたいな番組だから仕方ないなとは思いつつ。
個人的には凄い面白い回でした。