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【人狼論】強さについて

人狼の強さは比較しにくい?

人狼ゲームが強いという事は、なかなか単純明快にはいかない概念です。
昔から「どのプレイヤー(PL)が強いか」は5chやTwitterで議論されたり、上手い人のランキングが作成されたりしましたが、未だ万人が納得する結論は出ていません。

その理由の1つとして、人狼ゲームとは複数人によるコミュニケーションを主としたゲームであり、その特徴が強さの比較を難しくしていると考えられます。

コミュニケーションゲームと言うのは、例えば単純なもので伝言ゲームや質問ゲーム、旗上げゲームなどが挙げられます。こうしたコミュニケーションゲームでは、正確に他者の言いたい事を理解したり、伝えたりする力が勝敗を左右します。

しかし、コミュニケーション能力は、見た目や性格などの主観的要素、文化的背景が絡むため、正確な比較が難しいと言えます。故に、人狼ゲームの強さを説明することもまた困難なのです。
では仮に、コミュニケーション能力を完璧に数値化できたとしたならば、その高さによって人狼の強さが決まるのでしょうか?実はそう簡単でもありません。

何故ならば、人狼ゲームは非ラウンド制という、もう1つの大きな特徴を持つからです。
ラウンド制というのは、例えば麻雀やサッカーなどのように、同じ流れを1セットとして複数のセットを行い、総合的に勝ち敗けを決めるゲームを指します。そしてこのようなゲームでは、各PLは繰り返すセットの中で相手を分析し、次セットに活かしていく事ができます。
一方の非ラウンド制ゲームは、将棋やチェスなどが代表的です。こうしたゲームでは、各PLの出来る事やその影響が数学的に厳密に決められており、故にPLはお互いの行動を予想する事が出来ます。

上述したどのゲームも、このような設計によりゲームの核となる性質に客観性を持たせ、それが戦略性や心理戦と言った副次的なゲームの要素との間にフィードバックループを生んでいます。
例えば、麻雀には状況に応じた手作りと、他者の手配や行動を予測するという2つの要素があるとします。各PLは局を重ねるごとに対戦相手を分析しながら最適解を変化させるとともに、自身も同様に他者に影響を与えている事を念頭に勝ち筋を構築します。つまり、副次的要素として心理戦が生まれているわけです。
それらの要素は複雑に影響を及ぼし合いますが、独立した系として相互作用を考察する事も出来るのです。

対して、人狼ゲーム中に交わされるコミュニケーションは、誰がどんな意図で発言を行っているかという事が伏せられており、それは基本的にゲーム終了まで分かりません。

人狼ゲームも同様に戦略性や心理戦などの副次的要素を含みますが、このような特徴が系の境目を曖昧にし、ゲームに予測不可能性をもたらしてしまうのです。
つまり人狼ゲームの強さを測る資質というものは存在せず、仮にどれだけコミュニケーション能力に優れていても、ゲームの勝利を保証しないのです。

また、人狼ゲームの強さを勝率で測るというアプローチもありますが、その有効性には疑問が残ります。
実際に調べてみると、人狼ゲームは配役や鯖の種類に関わらず、勝率は同じ環境内のPLで同程度に収束していく事が分かります。事実、人狼ゲームの歴史上、スタープレイヤーと一般プレイヤーの勝率に大きな差が生まれた事はありません。差があってもせいぜいで平均から±5%ほどです。

更に、東京大学の実験では、最初の10試合までは試合数と勝率が比例して伸びますが、10試合以降では横ばいとなり、その後の勝率に個人差は殆どないという結果が出ています。
つまり、経験の多寡とPLの組み合わせによって多少の誤差は生じても、勝率で強さを表現することは不適切であると言えます。

このように人狼ゲームの強さとは、分かりやすい能力があるわけでもなく、また客観的にも測りがたいものなのです。

”それでも人狼が上手い人”は存在する

しかし、人狼民であれば一度は「このPLは人狼ゲームが強いな」と感じた事があるでしょう。
そこで本稿では、あくまでオレの主観で、しかしその中でも出来るだけ客観性を持たせる努力をしながら、『強さ』について論じたいと思います。

まず、オレが思う人狼ゲームの強さとは段階的に表現されるものです。
例えば100m走であれば、AさんとBさんどちらが速いのか?はタイムを測って簡単に比較する事ができます。速さはコンマ単位で計測出来ますし、10回も繰り返せば11回目にどちらが速い結果を出すか、高精度な予測が成り立つでしょう。
しかし、人狼ゲームにおける強さを、同じように…例えば100点満点のような細かい数値で表現する事が適切とは思えません。何故ならば、仮に85点のPLと86点のPLが同村したとして、何かしら有意な予測をし得るとは思えないからです(この事は勝率で評価する場合も同じ事が言えます)。

前述の通り、人狼の強さは比較が難しく、細かな能力で表現が出来ないものです。そこで、ゲーム展開を左右するよりマクロな要素、すなわちゲームを攻略する知識に立って評価すべき、というのがオレの論です。
ここではそのような観点から、強さを5段階のレベルにわけてみました。

🔰レベル1:ルールを知る
ルールや役職ごとに出来る事など、ゲームの基本的な流れを把握している段階です。

🎓レベル2:進行論を理解する
初心者とその次段階を分ける最初の一歩は、進行論を理解しているか否かではないでしょうか。
進行論とは、確率的に村陣営が勝つ可能性を最も高める方法、例えば今日はどの役職にCOして貰うか、どこから吊るすか、といった進行方針の事です。進行論を知らなければ不利な戦いを強いられるばかりか、下手をすれば詰み盤面を作ってしまったりします。
決め打ちの概念や盤面理解を深め、様々なケースを想定しながら効率よく詰められるようにしましょう。

⚔️レベル3:要素を使いこなす
その人がなんの役職であるか?という推理を要素と言います。黒要素、白要素、役職要素など様々な取り方が存在し、PLは要素を拾い集めながら戦い、そして決断していくことになります。
例えば、良くある色透けという要素の取り方は、「Aは理由もなくBの白を前提に話しており、色が透けている人外。よってAが黒の時にBは白」といった黒要素です。
もちろん、黒要素を持つ人が必ずしも黒とは限りません。しかし、要素の取り方を理解している事は判定役を説得したり、他者が何を言っているかの理解を手助けし、精査の精度を上げてくれるなど、大いに役立ちます。

🚩レベル4:環境に適応する
人狼ゲームは、長期か短期なのか?対面なのかビデオ通話なのかチャットなのか?など様々なやり方があり、更にその中から膨大な種類の配役に分かれます。
”環境”とは、この様々な種類によって規定される、落ちやすい要素や望まれる定石を指します。
そして”適応”とは、自分の得意不得意を知り、その環境中で自身の強みを最大化する事を言います。

👑レベル5:確実に勝つための武器を持つ
確実に勝つという発想の有無は、とてつもない差を生みます。
例えば貴方が進行役職を引いたとします。貴方はロジカルな視点から人外を捕捉する事が得意であるかもしれません。しかし、村であっても矛盾した事を言うような人がいる場合もあります。そのような村が1人ならまだしも、2人いたらどうでしょうか?あるいは人外がみな洗練された隙のない論理展開を行う猛者であったなら?
どれだけ熟練しても、1つの方法だけで確実に勝てるという事はまずあり得ません。確実に勝つという事は、自身の動きや精査を客観的に評価し、洗練された複数の方法を組み合わせていくという事です。そのようにして初めて、勝つための武器が生まれます。

…以上、5つのレベルについて解説しました。
このレベルという概念は、ゲームを振り返った時にそれがどういう試合だったのか?という解像度の高さとも言えるでしょう。そしてレベルが高い人ほど、配役や同村したPL等の環境が変わっても、そこから新たな知見を得て、ブラッシュアップしていく事ができます。

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