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【人狼論】思考リソースの効率化


思考リソースとはなにか

本稿では、人狼ゲームを『思考リソース』という観点から論じてみたいと思います。思考リソースとは、読んで字のごとく、ゲーム中に割ける思考力を指します。

人狼ゲームでは、「誰が人狼なのか」、「どうやって吊るされないようにするか」など様々な思考を行う必要があります。しかし、一度に使える思考力には上限があります。少なくとも短期村において、それらを十全に行う事は難しい事が多いでしょう。

学力テストでは、時間配分を上手くできる事が得点に大きく影響します。同様に、思考リソースを効率的に扱えるPLは、人狼ゲームにおいて高いパフォーマンスを発揮する事が出来るのです。

役職によって視点の強さが変わるのは何故か

よく、9スタ(市×3、霊、占、狩、狂、狼×2)配役において、「狂人の時は内訳が当たりやすい」という声をよく耳にします。何故でしょうか?

こう言われるのは大抵、占と狂が占い師COする2-1盤面です。ここではそれぞれの占い師COがグレーにラン白(COしていない人に占いがランダム白結果だった)を主張する初日を想定し、思考リソースという点から論じたいと思います。

まず完全グレー位置(占われていない人)は、人狼を探しながら、同時に自身が吊るされないよう、己が村であると主張せねばなりません。逆に、霊能は縄がかかる心配はありませんが、自身以外の8名のうち誰が人外なのか分からないという点では情報量は最も少ないとも言えます。

この【精査が必要な情報量】【縄抜けにかかる労力】という2つの軸が、まさに思考リソースを割く主な対象となります。

半グレ位置では、村主張はグレー位置より少なく済みますが、情報量としては変わりません。そして占い師は、更に村主張が少なく済む(盤面上、初日に吊るす必要がないため)上、対抗が人外である事、誰が白であるかを知っています。
しかし、対抗の人外が狂人なのか人狼なのかは分かりませんし、自身のラン白が狂人である懸念は消えません。そして、占い師のラン白を知った上で盤面を知っている狂人は、占い師より多くの情報を持っていると言えます。

つまり、狂人は一番【精査が必要な情報量】が少なく、【縄抜けにかかる労力】も霊能に次いで、占い師とともに少ないポジションと言えます。故に、狂人は全役職の中で最も効率的に思考リソースを使い、より正確に内訳を知る事が出来るのです。

思考リソースを効率化する事は、いかに考察へより多くの思考リソースを割けるか?という事の裏返しであり、そのまま視点の強さに直結するのです。

頭の良さは人狼の強さか

では、より多くの思考リソースを持っている…例えばIQが高いとか高学歴であるなど、一般に言う”頭の良い人”ほど人狼ゲームが強いのでしょうか。

実は殆どの場合において、頭の良さは人狼ゲームの強さと無関係です。
この事は、話を単純にするため、2陣営配役における市民と人狼の場合についてそれぞれ説明すると分かりやすいでしょう。

まず市民は、その議論においてお互いの主張を正確に理解する事が重要となります。しかし、それぞれのPLが異なった思考や性格・判断軸を持つ事がそれを難しくします。
そして思考力の差異は、PLの差異に色濃く影響を与えます。つまり、思考力が周囲より高すぎる事は、そのまま相互理解のコストの高さとなり、結局は思考リソースをより多く消費してしまうのです。これは現実でも、IQの高い人が、かえって周囲とのコミュニケーションにストレスを感じてしまうのと同じと言えます。

では人狼の場合はどうでしょうか。仮に思考力が10使えるPLがいて、人狼を引いたとしましょう。
人狼は、自身が村陣営だった際の思考を再現する事が、勝つために重要となります。このため、人狼は常に「自分が村の時どうするか」という仮定を挟みながら思考をする必要があります。
しかし、このPLは最大で10の出力しかできないため、挟まれる仮定によって思考リソースは圧迫されるでしょう。そうすると10の出力は部分的になり、殆どは7や8、という形で表れます。その差異やばらつきが、違和感として浮上してしまうのです。

このように、人狼ゲームにおける思考リソースの多さは、ゲームの強さには結びつかないと言えます。リソース量よりも、いかにそれを効率化するか?という術の方が重要なのです。

しかし、例外的に頭の良さが大きく発揮される場面もあります。特に、複雑な配役を初見のPLたちで行う場合がそれです。適切な進行論や盤面の提示などは純粋な思考力が要求されるため、不慣れな人が多い中では大きな強みとなります。
また、いわゆるマルチタスクが出来る人は、思考リソースをどのような場面でも均一に使用し、かつ並行して他の事を考えることができるため、人狼ゲームに強くなる可能性が高いでしょう。

効率化のための3つの方法

それでは思考リソースを効率的に使うにはどうすればよいのでしょうか?主に3つの方法があります。

1、やる事を絞る
2、知識化する
3、鍛錬を繰り返す


それぞれ順に解説していきましょう。

1、やる事を絞る
大人数が参加する村では、初日に全員を精査することはできないかもしれません。また、複数の方法で精査を行おうとしてパンクしてしまった経験のある人も多いのではないでしょうか。
そこで、まずはやる事を増やすより減らしていきましょう。無理に広く見るより、狭くとも着実に精査する方が良いのです。見切れない分は他者の視点を借りる、決め打ちで済ますなどの技術でカバーしていきましょう。
また、特に人狼陣営は先述の通り、村陣営に比べ思考リソースを多く消費してしまいます。人狼の際は意識的に行動を絞ると、村の時を再現しやすくなるでしょう。

2、知識化する
この盤面の時はどこを優先して精査すべきか、どう詰めるのが効率的かなどは、進行論を理解していればより素早く判断できます。また、客観的に「AとBの関係性から、AとBの両方が人狼はない」と判断できるのであれば、精査を効率的に行えるでしょう。このように、知識化とはあらかじめ判断や行動を決めておくことを指します。
ただし、「Xという状況でYという趣旨の発言をした人は人狼である」というような知識化は、Aの指す範囲が狭ければ狭いほど汎用性を失う一方、広ければ広いほど精度が落ちたり、逆に人外に利用されてしまうので注意が必要です。

3、鍛錬を繰り返す
経験を積む事で、どういう状況の時に誰が人狼なのか、自分が人狼の時にどう村を再現するのかなど、細かな状況へ対応したり、沢山の事を感覚的に処理できるようになります。
これらは筋肉のようなもので、試合経験を積めば積むほど、より精密に、よりパワフルになっていきます。ただし期間が空くと衰えてしまう点や、配役など環境を変えると通用しづらくなる点には注意しましょう。

人狼ゲームに師匠は必要か

人狼ゲームでは、他のゲーム界隈と同様に師弟関係を結ぶことが流行っています。誰かから個人的に教えて貰うという事は、実際どのくらい効果があるのでしょうか。

思考リソースという観点から見ると、逆効果になる危険性も十分にあると思われます。何故ならば、他人の思考を自身に受け入れていくというのは本来難しい行為であり、特に感覚的な見方や汎用性の低い知識を導入する場合、思考リソースへの負荷は大きくなってしまうからです。
よって、進行論や基本的な要素を教えて貰うのは良いですが、それ以上の学びについては、自分の得意・不得意を見極めながら取捨選択していくことが重要です。

人狼ゲームは、鍛錬を繰り返す事で誰でもある程度は強くなれるゲームだと思います。一方で、多くのPvPがそうであるように、必ず勝てる知識や技術というのは存在しません。
基礎的な知識と鍛錬による経験を通して、自分に合った知見を身に着け、”考え続ける”事が重要なのです。

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