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アートディレクターは撮影現場で文句を言ってる人に見えるという理由に目からウロコポロリ

見せ方が9割。


【1】在宅期間中に家のリビングでZOOM会議をする時のぼくの向こう側の空間の見せ方。

5月中旬、ZOOM会議でクライアントが入ってくるのが10分後くらいだったので時間潰しで数人のスタッフと話をしていました。いわゆる会議前の無駄話ってやつです。
コロナの感染者がまだけっこう多い時で、夜の接待を伴うお店での感染者が増えているんだってね〜という話をしていたら、Oプロデューサーが「具義さんが夜のお姉さんの店とか行ってるんじゃないかと心配してるんですよ〜」と言ってきたので、ぼくが「今、行ってるわけないじゃん。。。というか、パソコンの後ろにうちの奥さんいるんだから、そういう話やめてよ。。。」と言ったら、Oプロデューサーは「えっ! 家だったんですか⁈  すみません……」と焦ってました。妻は笑っていたので良かったのですが(笑)。 
ノートPCのディスプレイ側のカメラレンズからぼくを映していて、その時の背景は部屋の壁と窓なので、たしかに家にいるのかオフィスにいるのかわかりませんよね。
ノートPCのディスプレイの裏側の空間はリビングで、そこには妻がいました。ZOOMの背景で見える部分を本棚だったり家っぽいところを背景にして、ぼくは家にいるんだよ〜、同じ部屋に妻がいるよ〜、という見せ方をすればよかったんですね。難しい時代だ。


【2】大学1年の時にアイスクリーム屋でバイトした時にバイトのドンから教わったティッシュを配る人の見せ方。

1990年、僕が大学1年生の時に西麻布の行列のできるアイスクリーム屋の2号店である有楽町店のオープニングスタッフをやっていました。
ぼくは生まれて初めてのアルバイトだったのですが、オープニングスタッフの中に20代半ばの俳優を目指している男性で数々のバイトをやってきた人がいて、すぐにバイトメンバーのドン的存在になりました。その人がぼくにバイトのノウハウを教えてくれたんです。
JR有楽町駅の駅前でオープンをお知らせするティッシュをバイトが交代で配ることになって、そんなのやりたくないな〜、友だちが通ったら恥ずかしいな〜、そもそもティッシュもらってくれるのかな〜、と悶々としていたら、そのバイトのドンがこう教えてくれたのです。
「ティッシュを渡す時、道の端に立って自分の存在感を消す。そして、男性には股間に向けて、女性には胸元に向けてティッシュを差し出すんだ。そうすると手で防ごうとして受け取っちゃうから。」
たしかに都会を歩く人って、他の人のことなんて気にしてないですよね。これは、自分の見せ方というより、見せなさ方なのかもしれませんが。
男性の股間に、女性の胸元に(もちろん触れないようにけっこう手前に!)差し出すと無意識に手が出て受け取ってくれちゃうんです。
これは勉強になったな〜。今だとそういう方法自体を指導することがセクハラっぽいのでダメだと思いますが。


【3】2015年版ふなっしーカレンダーの撮影の時のふなっしーの天才な見せ方。

2014年、蜷川実花さんがふなっしーを撮影するカレンダーの撮影で、アートディレクターとして、ふなっしーに会える〜!とコーフンしながらスタジオに入りました。
ふなっしーは、撮影の空き時間も終始ぼくらを楽しませてくれて、サービスの天才だな〜、と感心していました。
3月4月のページの撮影のふなっしーの衣装は、黄色い帽子をかぶってランドセルを背負った新小学一年生。
カメラマンの蜷川実花さんがパシャパシャ撮影をしながら、「小一(しょういち)!」と言ったんです。カメラマンのかける声で、モデルの気持ちは盛り上がりますからね〜
その時ふなっしーは「小一(しょういち)!」とあの独特の高い声で返しました。
そして、その直後にスッと背を伸ばして「小三(しょうさん)!」と言ったんです。
スタジオの全員が大爆笑。
瞬時に「自分が背を伸ばした時には小学一年生から小学二年生よりも成長率が高いだろうから、小学三年生と言おう」と、自分の「見え方」が客観的に見えていたふなっしーは、天才だな〜、と思いました
その時にぼくが撮っていた動画がこちら↓


【4】有名CM監督が教えてくれたグラフィック広告の撮影の時のアートディレクターの見せ方。

2005年、化粧品会社のCMとグラフィックの撮影で、ぼくはアートディレクターとして入っていて主にグラフィックの担当でした。CMの演出は、おそらく日本で一番有名なCM監督の中島信也さん。
撮影の空き時間に、中島信也さんがグラフィックの撮影スタジオに来ていて、こんな話をしてくれました。
CMの撮影現場では、被写体のタレントやモデルは監督を見ているんや。監督が何をやりたいのか考えて演技をしているんやで。カメラマンじゃなくて監督を見ている。でも、グラフィックの撮影現場では、タレントやモデルはアートディレクターじゃなくて、カメラマンを見てポーズをとっているんや。アートディレクターは、撮影中はカメラマンの横で腕組みして見ていて、被写体が、もう撮れてるから撮影終了かな?と思っている時に、こういうポーズもやってもらえますか?と注文をつけてくる、文句つけてる人にしか見えないねん。」

目からウロコポロリ

この中島信也さんの言葉には、衝撃を受けました。

その場の中心人物が誰かということは、被写体から見るとCM撮影とグラフィック撮影の現場で違った見え方をしているんだということをこの時初めて理解しました。
たしかに、ようやく撮影が終わろうとしているところで文句つけてくるヤツに見えるのはよくないですよね。
それ以降は、撮影現場でのアートディレクターとしての自分の立ち位置、お願いの仕方など、被写体からどう見えるかを意識して気を付けるようにしています。

自分の見せ方って、大切ですね。



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