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『生存本能のバグ』(ウミガメのスープ)

悲しみが深いウミガメのスープが出来てしまった。
私、澤木恭介が実際に体験したことを基にしている。

どうぞ、御賞味あれ。


生存本能のバグ

雨あがり。

昨晩の嵐が嘘のように空は晴れわたり、
男は気持ちのよい朝を迎えた。
 
外へ散歩へ出かけると、路上の至る所でセッ◯スが行われており、それを見た男は悲しくなった。
 
一体、どういうことか?

  ◇  ◇  ◇

以下、スタミナラーメンさわき愛好会の面子に出題したときのやりとり。(ネタバレ注意!)

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セッ◯スをしていたのは、虫ですか?

──はい。

(さすが、カプリティオチャンネルとクイズノックで出題された問題のスクショを即座に引っ張ってこれるほどの生きたデータベース。質問が的確ぜよ。)


その虫は、軟体動物ですか?

──いいえ。


その虫は、昆虫ですか?

──はい。

その虫は、甲虫ですか?

──いいえ。


その虫は、夏の虫ですか?

──いいえ。


その虫は、秋の虫ですか?

──はい。


その虫は、童謡『虫の声』に出てきますか?

──いいえ。


その虫は、完全変態しますか?

──いいえ。不完全な変態です。


その虫は、「トンボ」ですか?

──はい。いい質問です。その虫は「トンボ」です。

  ◇  ◇  ◇


生存本能のバグ

雨あがり。

昨晩の嵐が嘘のように空は晴れわたり、
男は気持ちのよい朝を迎えた。
 
外へ散歩へ出かけると、路上の至る所でセッ◯スが行われており、それを見た男は悲しくなった。
 
一体、どういうことか?


男は、トンボの産卵を見て悲しくなりましたか?

──はい。トンボがつがいとなり産卵しています。


男は、トンボのつがいが離れ離れになったのを見て悲しくなった?

──いいえ。


男は、セッ◯スするトンボを見て、自分に対して悲しくなりましたか?

──いいえ。トンボに対して悲しんでいます。


男は、何か身の危険を感じましたか?

──いいえ。


男は、人間ですか?

──はい。男は私です。今朝の経験を基にしました。

(スタミナラーメンさわき愛好会のウミガメでは、非人や狂人がよく登場するので、この線を消すのは大事である。)


トンボは、水面ではないものに産卵していますか?

──いいえ。(違うかぁ、という声が漏れる。)


トンボは、水面に産卵していますか?

──はい。


男は、諸行無常的なものを感じましたか?

──はい。良い質問です。あと一息です!


  ◇  ◇  ◇


生存本能のバグ

雨あがり。

昨晩の嵐が嘘のように空は晴れわたり、
男は気持ちのよい朝を迎えた。
 
外へ散歩へ出かけると、路上の至る所でセッ◯スが行われており、それを見た男は悲しくなった。
 
一体、どういうことか?


「雨あがり。」であることが重要ですか?

──はい。「雨あがり」は重要な要素です!


散歩している路上には、水溜まりが出来ていますか?

──はい!あちこちに水溜まりが出来ています!


トンボは、水溜まりに産卵していますか?

──はい!


こたえがわかりました。回答いいですか?

──はい。お答えをどうぞ!


雨あがり。
男は散歩に出かけると、水溜まりにトンボが産卵していたのを見た。


空は晴れわたっており、この日差しで水溜まりは干上がってしまうだろう。
おそらく、トンボが産み落とした卵は、孵ることなく土に帰る。

一心不乱に水溜まりに産卵するトンボを見て、男は悲しい気持ちになったのであった。

──はい。正解です!!👏👏👏

──男は、独り言つ。『生存本能の"バグ"だな』と。

  ◇  ◇  ◇

今朝方、とうふの日(10月2日)なので、麻婆豆腐定食を食べに行く道中の出来事であった。

「虫の営みだけに、これが本当の「バグ」だな」なんて思いながら、「あ、ウミガメにできるな。これ」と、店に着くまでに仕上げた涙味のスープである。

実は、同じようにスタミナラーメンさわき愛好会の一人も、これよりも酷いものを見たのだという。

その会員が目撃したのは、「トンボが、工事現場などでよく見る敷鉄板に、ちょん、ちょん、と産卵し続ける」光景だったそうだ。

水なんか一滴もついていない、日光で熱々に熱せられた鉄板の上に、田植えのように、つがいのトンボが卵を産み付けていたのだという。
産んだそばから確実に死に絶えるじゃん。何をしているんだ?こいつらは?と不思議だったそうだ。

トンボは、水面ではないものに産卵していますか?

という質問が出たのは、そのためであった。

光の反射の具合なのだろうか。
熱々の鉄板に、卵を産み付けるとは諸行無常である。

前に、トンボは流水と静止水面とを光の波長の向きで見分けているというWeb記事を見かけた記憶がある。

流水は見分けられても、水面の大きさや深さを見分ける能力を持たないのは、端から見ると喜劇でもあり悲劇でもある。
そして、当事者のトンボには悲劇も喜劇もないのだろう。

  ◇  🍠  ◇

『ファーブル昆虫記』で有名なフランスの博物学者ジャン=アンリ・ファーブルは、フンコロガシをよく好み、研究をしたそうだ。

フンコロガシには、生まれてくる子供のために糞玉を拵え、巣に残して立ち去る、という習性がある。
糞玉を作るにはそれなりの時間がかかるため、作成途中の糞玉を土に隠し、またそれを掘り返して修復してを繰り返して、子供の栄養となる糞玉を作り上げるそうだ。

その様子を初めて観察したファーブルは、「素晴らしい母性本能だ!」と褒め称えたが、ちょっとシビアな指摘もしている。
彼は、糞玉を作り卵を産み付けて巣から去る母フンコロガシの目の前で、巣穴を掘り返し糞玉を外に出してみたそうだ。しかし、母フンコロガシは糞玉を守ろうとせず、そのまま無視して立ち去ってしまったそうだ。母性本能とはなんとやら。


この話の教訓としては、
「自分が何者であるか」を知ることが、自分がなりたい者、希望し実現したいもののために、そして、それを本当に実現するために、大事なんだねぃ、ということだろう。

人生の悲劇は、端から見ると喜劇である。
バグ取りをしながら、今日も生きていこう。

にんげんは、所詮おおきい、おちんちん。

サツマイモを咀嚼しながら思う、秋のひとときであった。

(終)

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