見出し画像

外国人向けツアーガイド、4年の経験と案内のコツをまとめてみた

前置き

こんにちは。たにぐちです。4〜5年ほど日本に来た外国人を観光地に案内する仕事をしてます。

これまでだいたい40回くらいガイドしたですが、その経験を振り返りたいなと、このnoteを書いています。

これからガイドになりたい人、インバウンド業界に関わりたい人、もしくは知り合いや友人に僕がどんなことをしてきたかを知ってもらいたいという意識で書いています。


もしかしたら、観光業界の方、ガイドの方にとっては当たり前のことばかりかもしれません。

外国人向けのツアーガイドって?

ざっくりに言うと、観光名所を外国語を使って案内する仕事です。京都だと修学旅行みたく金閣寺、二条城、清水寺を案内したり、東京だと寺社仏閣もあれば、渋谷とか原宿とか現代的な文化を紹介することも。

みなさんが海外旅行するときをイメージしてもらうとわかりやすいかもです。

自分たちで飛行機やホテルは予約するけど、現地での観光はガイドブックやSNSを参考にしながら決めることも多いのではないでしょうか。
そこにお金を払って現地の人に同行してもらうのがガイドツアーです。道案内もしてくれて、おすすめの観光地や飲食店も教えてくれる。

それを日本に来る外国人を対象にやっているのが、私の仕事ってわけです。

案内する期間もいろいろ。空港でお出迎えして、富士山やら北海道やら九州やら、2週間くらいずっと全部一緒について回るガイドもあれば、皇居周辺で数時間だけ案内する人もいます。

国家資格の全国通訳案内士に合格して、専業にしている人もいれば、平日は会社員をしていて、土日の空き時間に副業としてガイドをする人もいます。

そんな自由度の高い仕事ではあります。

ただ、安定して仕事を受注するには時間がかかる、年収300万以上稼げる人が1割も満たないなど業界として課題もあったりします。このnoteでは面白さや魅力を語りたいので割愛。

僕の場合なんですが、ツアー会社に所属し、会社の案件でガイドをしてました。なので、純粋なガイド業とは異なります。

日帰りのツアーだけを扱っていたので、京都市内とか神戸の三宮周辺とか、関西の特定エリアを案内していました。

あと、20〜30名を引率する団体ツアーとは違って、2〜3人に付き添うプライベートツアーのガイドをしてました。

はい、前置きが長くなりました。ここからは、こんなことがありましたというお話です。

手探りのガイドデビュー

外国人向けのツアー会社に入社してすぐのことでした。ある程度英語も話せたこともあり、さっそくガイドとしてデビューすることになりました。

たまたま東京の来ていたタイミングだったこともあり、案内したのは東京駅から皇居周辺を数時間で巡るツアーでした。お客様はアメリカから来た母と息子の2名を案内しました。

どんなガイドをすれば良いかは、あまり想像はついていませんでした。3日くらいしか時間はありませんでした。下見をして、わからないなりに準備して、当日を迎えました。


予習した江戸城としての歴史や自然豊かなの公園としての側面など、関連情報を紹介したりはしましたが、どうもしっくり来ませんでした。

「楽しい」と感じてもらえたのかわからなかったですし、東京の街全体について質問された際には、土地勘もなかったのでうまく答えることができませんでした。

最後には、ほかの都内の観光スポットやおすすめのラーメン店などを紹介してほしいと一定の信頼は獲得と思いますが、大満足とは程遠いものでした。

早く経験を積ませてもらえたともいえますが、なかなか危ない橋を渡ったと思います。

一般的にデビューする時は、先輩ガイドと同行できる仕組みを活用したり、ボランティアガイド団体に入って、慣れてから有償ガイドに挑戦するのが良いと思います。

慣れるまではひたすら試行錯誤

外国人は日本を見る視点が違うというのは知っていましたが、実際に体験してみると、知識以上の多くのことを理解しました。反省を活かして、いろいろと手を打ちました。

疑問に思いそうなことは調べておくこと、どこが楽しんでもらえるポイントなのか予想すること。そういう準備する中で、少しずつ感覚的にわかっていきました。

あとは英語も、ネイティブと1日中過ごすにはまだまだ力が足りませんでした。話すことは単語など表現をある程度準備すれば対応ができましたが、聞き取りは、早すぎて難しかったですね。

TOEICのスコアは800くらいあったのですが、最初は半分くらいしか聞き取れませんでした。NetflixやPodcastを活用して、脳をスピード感に慣れさせる必要がありました。

ある程度パターンをつかんで、慣れるまでにはツアー数で4〜5件、期間で1〜2ヶ月が必要でした。その頃にはツアーが終わる頃にはお客様と仲良くなったり、最高レベルのレビューをもらったり、これが一つの正解なんだと自信が持てました。

こんなツアーを案内しました

ここでは、これまでのツアーでの経験の一部を紹介します。

京都市街地

京都は東京とセットで圧倒的な人気があります。成田か羽田inで、関空outもしくはその逆の人たちが多いです。

そのルートでくる人たちは、初来日の確率も高いため、ザ・定番、ザ・王道な京都な場所を訪れたい傾向があります。

なので、金閣〜二条城〜清水寺のような有名どころを案内したり、超絶人気の伏見稲荷大社を軸に、東福寺や清水寺など京阪電車沿いを北上していくツアーに予約がよく入ってました。

ほかにも、着物で古い街並みを散策するツアーや夜の居酒屋巡りだったり、テーマや時間帯がはっきりしているものは好まれてましたね。着物体験ツアーでリッツカールトンに泊まっていた富裕層の方を案内した時はものすごく緊張しましたね。

嵐山

嵐山でもよく案内しました。竹林の小径、渡月橋、天龍寺を中心に巡るのですが、嵐山モンキーパークいわたやまを目的にツアーを予約する方がけっこういたのは意外でしたね。

なにせ人混みがすごいので、京都駅方面からの電車に乗るのと、昼食場所を確保するのが一苦労です。

大阪

大阪は全体的な傾向としてはたこ焼き、お好み焼き、串カツなどフード系のツアーが人気です。ただ私の経験としては大阪城を案内することが多かったです。

大坂の陣や秀吉の生涯など歴史も紹介するのですが、どちらかというと、堀や石垣などの城の建築的な特徴を紹介する方がウケが良かったりします。

あと、大阪歴史博物館も訪問して、大阪が東京より栄えていた時期があったとか、難波京という都があった時代があったとか、大阪の街全体の時代背景を伝えるのもポイントかなと。

印象に残っているのは、中国系アメリカ人を案内した時に、「日本の古代の歴史はあなたのルーツである中国の影響を受けていますよ」と漢字、ひらがな、カタカナの成り立ちを話したら、めちゃくちゃ感動してくれたこと。

神戸

神戸では、全体的なお客様の動向を聞いていると、京都と大阪に行った後のプラスアルファという印象があります。そのため、京都と大阪ではできない体験を求めているかと。

日本人に人気の、北野や旧居留地などの異国情緒あふれる街並みよりは、有馬温泉、灘の酒蔵、六甲山など一味違った神戸の方が外国人には人気が高いですね。

印象に残っているのは、有馬温泉の芸妓さんと会えるカフェで、ほかの行程そっちのけで、1時間くらいずっとお客様との会話を通訳したこと。

それと、灘の酒蔵を案内した時は、グループの皆さんが日本酒マニアで、どの製造工程で味に違いが生まれるなど細かい質問をされたことですかね。「とにかく辛口の日本酒が飲みたいんだ」と爆買いされていましたね。

失敗しないためのコツ、うまくいくためのコツ

ここでは、これまでのガイド経験を通じて、一定の押さえるべきポイントを紹介します。まだまだ経験も足りないですし、プライベートツアーの考え方なので、事例の一つと思っていただけると。

原則としては、事前準備をしっかりやること、ツアー当日はできるだけ早く信頼を獲得すること、この2点に尽きると思います。

準備:下見で現地確認+説明資料の作成

下見、訪問スポットやルートの確認は絶対に必要ですね。例えば、神社の場合は、鳥居の解説、境内のどこがグループが集まりやすいか、どの建物を紹介するかなど、観光地の中での案内を設計しておきます。

それに沿って、話す内容を考えて、文章を英語化したり、わからない単語を覚えたりします。特に宗教用語、植物や動物に関する単語はガイドを始めてから学んだものが多いですね。

あとは、日本語でも、知らないことを理解する必要がありますね。神仏習合とか、石垣の種類とか、醤油の作りかたとか、実は勉強したことないことを、伝えられるレベルになる必要があります。

写真や図だとわかりやすいものは、タブレットに保存したり、印刷してファイルに保存したります。

ツアー開始時:重要項目や注意点を説明する

集合場所でお客様と合流した時には、その日のツアーの内容を確認して、重要な事項は認識してもらう必要があります。ガイドはあくまで旅行の一部なので、けっこう予約内容を忘れてる方もいます。

ツアールート、ツアー時間、入場料や飲食店での支払いは必要か、雨天時に体験は中止するなど、全体像を把握してもらうように説明します。できれば5分以内、長くても10分以内。

説明しすぎると、途中から話を聞いてくれなくなりますし、説明量が多いと覚えてくれません。金銭やアレルギーの有無の確認など、ツアーにおける最重要事項に絞ったりして、残りは移動中に都度聞いたりします。


序盤:求めていること+プロフィールを確認

集合時に合わせて聞く時もありますが、序盤でツアーで提供できることと、お客様のニーズが合っているのか確認します。

なぜこのツアーを予約したのか、何を楽しみにしているのか、どこのスポットに期待しているのかを質問します。全部を直接的に聞くと、機械的な印象を与えてしまうので、あくまで自然な会話の流れで聞きます。

答えから、このツアーの内容がマッチしているのか、スポットの滞在時間を調整するのか、あるいは、一部スケジュールを変えた方がいいのか判断します。

判断した内容を提案するのですが、そこでもう一つ大切なのが、プロフィールをヒアリングすることです。具体的には以下の情報を、ある程度揃えて、提案の材料にします。

  • どこの国・地域出身か

  • ツアーの参加者の関係性(家族、カップル、仕事仲間など)

  • これまでの日本への訪問回数

  • 旅行のおおまかな旅程(日数、滞在期間の何日目、今後の流れなど)

例えば、イギリス人なら日本の歴史文化に興味が強いが、中国人ならそうでもないことが多い。
日本滞在の初日なら、時差ボケもあるので、体調に配慮した方がいい。最終日ならお土産屋の時間は長くするなどの対応が考えられます。

ヒアリングした情報から想像して、こうじゃないかという予想を立てて行動する。その反応に応じて、人物像を組み立てて、旅程や説明内容を少しずつ修正・調整していきます。

ここまで書いた、ツアー序盤までのポイントは、守りで、失敗しないためにやるべきことです。


中盤:関係性を構築する

ツアーには、守りと攻め、減点と加点を感じる場面があります。中盤以降はツアーの流れは確定するので、お客様を満足を高めるために、加点を意識します。

例えば、フレンドリーな人には、ちょっとふざけたり、冗談を言ったり仲良くなってもらえるような会話のスタイルにします。逆に、かっちりとした雰囲気のグループであれば、距離感を詰めすぎると馴れなれしいと思われるので、丁寧で誠実な説明を心がけます。

ツアーがうまくいっている時は、中盤からはツアーとは関係ない雑談が増えたり、ガイド個人の考えや意見を聞かれたり、人と人としての関係性へと変わっていくが多いです。経験的にそういう方が評価も満足度も高いです。

逆に、うまくいっていない時は、「ああ、これはよくない雰囲気だ」と感覚的にわかります笑 
相性がわるいだけなら、減点となりそうな事項をクリアにして問題なくツアーを終えるようにします。

もっと悪い場合にはお客様から理不尽な要求されたり、どうしようもないこともあります。 
こんな時は評価は低くなるので、旅行会社やエージェントにきちんと理由を説明できるようにします。

終盤:ツアー後の予定の確認+感想を聞く

終盤になると、ツアーが終わるまで目の前のお客様のことはもちろん大事にしつつ、ツアー後の評価にも意識が向かいます。

予約した旅行サイトに良い口コミが載るかどうかで、今後のツアーの予約数、そして私の仕事への評価に直結します。なので、ツアーの感想や印象に残っている場所を聞いて、満足度が高さを確認します。

良い反応をくれた方々には「ツアー後にお手隙の際にレビューを書いていただくことは可能でしょうか」と聞いたり、

関係性が完全に確立した場合には「申し訳ないんだけど、わたしの評価、給料のためにレビュー書いてくれない?」とざっくばらんにお願いします笑

まとめ:ガイドとしてこれからやりたいこと

またまた、かなり長くなってしまいました。これでも取材ツアーやテストツアーなど本筋とズレるものは削ったのですが、どうしても経験を振り返ると文量がかさんできますね。

私は、これまでは会社のツアーでガイドをしてきました。あくまで業務の一部として、たまに案内する程度でしたので、ガイドとしてはまだまだ経験値が足りないです。

これからは立場も少し変わるので、もっと自分の興味を活かしたツアーを企画したり、日帰りだけじゃなくて数日やロングツアーにも挑戦したいですね。

読んでいただきありがとうございました。また、お会いしましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?