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あらゆるものが0円の方向へ引っ張られる流れ


娯楽、散髪、食料品、雑貨。
周囲を見渡せばいろんなものの値段がずーっと下がりっぱなしだけれど、これってデフレなんだろうか。
デフレというのはインフレの対になる概念で、つまり「また上がるかもしれない」という意味合いを含む言葉だけど、今の値段が下がり続ける現象ってそう捉えていいのかな。
たとえば何か、私たちの生活に決定的に「足りない」ものが見つかって、その需要が長期にわたって継続し、それに従い供給され続けるならば、物価は上がるでしょう。
いや、「足りない」ものはたくさんあるんです。
助けを必要としている人と、その人を助けられる人は、まだまだ、ぜんぜん、出会えていません。
でも「足りない」ものが見つかって、それが「足りる」ようになるまでのスピードは、おそろしく速いです。なぜかというと、みんなの手の中にスマホがあるからですね。。
需要が長期にわたって継続することはもうありません。

“あらゆるものが、少しずつ0円へ向かって近づいていく”。

この流れは、未来の姿を決定づける、ひとつの重要なシグナルになるんじゃなかろうかと思いました。

 ※

10年ほど前、インターネットの普及によって真っ先に産業構造を変えられたのはエンターテイメント業界でしたね。
なので今、0円へ向かう流れがいちばん加速しているのはエンターテイメント業界だと思います。
まず最初は、違法アップロードが横行しました。
コンテンツ商品が違法でタダで手に入るようになりました。
それに対し、法律を整備し規制を強化しました。
その次に、コンテンツを作るハードルが下がり、多くの人が自分でコンテンツを作って発表できるようになりました。
コンテンツ商品が合法でタダで手に入るようになりました。
それに対し、「入り口はタダ。でもある一定ライン以上は有料だよ」という戦略を取るようになりました。
↑今ココですね。
今はこの段階です。
ここに至って、何が起きるかというと、「どうやって儲けを出すか」という発想自体が、だんだんと端っこへ追いやられ、むしろ邪魔になってきます。
だって戦う相手はネットにタダでコンテンツを発表している「儲けを出すことを考えてない、あるいは出さなくていい」相手ですからね。コンテンツ制作者の誰もが「儲けを出さなくていいならどれだけラクか」と考えているはずです。
儲けを出さなくていいなら、もっとシンプルに、コンパクトに、何よりスピーディにできるのに。
ところが、「ちょっとでも多くの儲けを出そう」なんてグダグダやっているうちに、あっという間に十歩も二十歩もおくれを取ってしまう。
タダのものにスピードで勝てない。

“儲かる仕組みを組み込もうとすると不便になる”。
DVDの不便さってスゴいでしょ?

儲けを出そうと思ったら、どうしてもユーザー側に余計な手間・余計な負担をかける構造にするしかありません。そもそもからして、「お金を払う」という手続き自体が手間だし、負担だし、煩わしいことです。
結局「タダの部分は快適。有料の部分は煩わしい」ということになってしまいます。
つまり原理的に、手続きが不要な0円のものに、快適さにおいて勝ち目がありません。

 ※

エンターテイメント業界はこんな感じですが、ほかの業界はどうだろう。
たとえば、技術。
でも技術の対価だって、コンテンツ作品の対価と同じく、すごい勢いで安く、安く引っ張られている気がします。理容業界なんて典型的ですね。
さらに、この技術を代替できてしまうのが、将来台頭してくるであろうAIロボットです。AIロボットがタダで技術を提供し始めたら、まさにエンターテイメント業界と同様のことが起こりそうです。
では、物質は?
ですが、ガジェットや生活用品などの物質に対価を支払うという習慣も、メルカリなどのリサイクル、あるいは“シェア”という新しい価値観によって侵食されかけています。ミニマリズムという考え方も出てきて、要は人びとが「物質、こんなに要らない」ってことに気づき始めたんですよね。
今はまだ、おカネを払うよりシェアするほうが手続き的に煩わしいから、あんまり浸透してないけれども、こんなの、テクノロジーでいくらでも逆転可能です。シェアするほうがおカネを払うより快適になってしまった瞬間、この流れも急加速する。
じゃあ、食べ物は?
実は農業は、最も早くAIロボットが導入される分野だろうと言われています。技術よりも先に食べ物のほうに来ます。
彼らが導入されれば、真っ先に人件費がカットされる。いっぽうで、企業間の競争というのは相変わらず続くでしょうから、価格競争も継続し、結局カットした人件費のぶんだけすごい勢いで値段は下がることになります。

 ※

原因をまとめると、以下の3点です。

・私たちが0円の快適さを知ってしまったから。
・0円より快適なものを原理的に作れないから。
・この先AIロボットが導入され始めるから。

しかしながらこうして、すべてのものが0円の方向へ力強く引っ張られているのに、私たちは未だに儲けを出さないと(=働いて稼がないと)生活できません。

矛盾していますよね。
だから、苦しいのは当然です。

このねじれを解消する方法として考えられるのは、次の三択。

①モノの値段を上げる。
②海外へ目を向ける。
③0円に近づく世界でも生きていけるようにする。

私は、①の選択はムリがあるように思います。流れに逆らうのは賢いやり方とは言えません。
②は妥当な手ですね。でも、できる人はまだそんなに多くない。
ゆえに、③のスタンスを選択するのが、おそらく最も合理的だと思います。賢いやり方だと思います。

現段階でできることといえば、流れに逆らわないようにして、やたら高いものは買わないよう気をつける感じですね。
あと、「質素な生活になるのは仕方ない」って受け入れてしまったほうが、おそらく心理的にラクじゃないかと思います。
たぶん、それがいちばん合理的な選択でしょうからね。


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