プレミアリーグ第32節 ブライトンvsマンチェスターユナイテッド

攻撃に変化を加える守備陣

前節パーフェクトゲームを見せたユナイテッド。CL出場権を争うチェルシーも好調であり、順位を離されないためにもどうしても連勝を飾りたい試合だった。
ブライトンは立ち上がりから4-4-2のブロックを作る。前節のシェフィールドはサイドバックにあまりプレッシャーに来なかったが、それとは対照的にブライトンはユナイテッドのサイドバックがボールを持つと激しくプレッシャーをかけてきた。特に左サイドバックのショーに対してのプレッシャーが激しく、思うようにビルドアップができていない状況が続いた。そこで、マティッチは気を利かせ、ショーとマグワイアの間に降りボールを受けるなど、バックラインでのビルドアップに優位性を作る。それにより、スムーズにボールを回すことができるようになり、徐々に敵陣でプレーする時間が増えはじめた。しかし、ブライトンの守備もコンパクトなブロックを保ち続けるため、なかなかブルーノなどの前線の選手に効果的なボールが入らない。ポグバも激しいマークを受け、前節ほど余裕を持ってのプレーができている印象はあまり無い。そこで、攻撃にアクセントを加えたのが2センターバックのマグワイアとリンデロフである。両選手はボールを持つと果敢にボールを運び、サイドチェンジをするなど積極的に攻撃参加していく。これによりコンパクトなブロックを保ち続けていたブライトン守備陣にも綻びが見え始める。前半16分、リンデロフの攻撃参加を起点に待望の先制点が生まれる。マティッチからボールを受けたリンデロフは右サイドにスペースがあることを把握し、ボールを持ち運ぶ。リンデロフはワンビサカにボールを預けるとそのまま右サイドの高い位置に走りこむ。これにより、ややブライトンのマークがずれ、ワンビサカからグリーンウッドにパスが入る。グリーンウッドはスペースができたことをすぐに察知し前向きにボールを持つ。グリーンウッドはフェイントから得意の左足を振り抜きゴール左下に沈めた。このゴールはグリーンウッドの技術だけでなく、ゴール至るまでの一連の流れも素晴らしいものがあった。また、リンデロフが攻撃参加したシーンでは、ポグバがセンターバックをポジションをカバーするなど、選手たち自身が状況に応じてやるべきことを理解していた。
このゴールを機によりユナイテッドペースになると、前半29分には、ショーのクロスが流れてきたボールをポグバがペナルティエリアの付近で拾うと、サポートに来たブルーノにパス。これをブルーノが決め追加点。このシーンもマグワイアの精度の高いサイドチェンジからチームを押し上げることに成功したところから始まった。
ピッチにいる全員のゴールを意識した積極的な姿勢がブライトンの硬い壁を破った。
その後の後半50分には見事なカウンターからブルーノがしっかり決め、3-0でブライトンに勝利を納めた。

中盤の番人

この試合では改めてマティッチの偉大さに気付かされた。現在、ユナイテッドが好調である要因も、このマティッチの安定したプレーがあってこそである。
チームはポグバ、ブルーノの共存に成功し、最近の試合では高いボールポゼッション率を誇る。また、攻守の切り替えが早く、ボールを奪われればすぐに高い位置でプレッシャーをかける。しかし、そこには危険が潜む。高い位置で激しくプレッシャーをかけるということは、チーム全体がバランスを崩すことも考えられ、そこでプレッシャーをかわされれば一気に危険なシーンが作られてしまう。そんなリスクをカバーしてくれるのがマティッチである。チームが高い位置でプレッシャーに行けば、マティッチは的確なポジショニングでチーム全体のバランスを保つ。もしプレッシャーをかわされても危険な位置を把握しているマティッチは敵の攻撃を遅らせ、機があればしっかりとボールを奪い切る。194cm、83kgのフィジカルを活かし、敵のロングボールも2センターバックとマティッチの3枚で難無く回収。まさに、中盤の番人である。ポグバが高い位置でプレーすることができるのは紛れもなくマティッチの存在があってこそ。守備だけでなく、ビルドアップ時には、臨機応変にポジションを変えボールを受ければ、鋭い縦パスやサイドにボールを散らす。ここ最近はボランチのお手本とも言えるようなプレーぶりだ。
シーズン前半戦では、チームの状態も悪く、マティッチ自身のプレーに対する評価も厳しかった。しかし、移籍も噂された中でもチームに残留。不可欠な存在になった。

ユナイテッドの宝 

この試合でMVPは誰かと聞かれてグリーンウッドと答える人は少なくないだろう。そのくらいこの日の彼のプレーは素晴らしいものだった。一応、言っておくが彼は18歳だ。そのグリーンウッドは今日のゴールで今シーズン13得点目をマーク。ユナイテッドの宝だ。しかし、ウッドはこれまで途中出場という限られた時間で結果を残し続けてきたものの、スタメン確保には至らなかった。その理由として、スールシャールがダニエル・ジェームズに強い信頼を寄せていたことが大きな要因だと考える。ジェームズは今季スウォンジーから加入した22歳。爆発的なスピードを活かした突破とハードワークが魅力である。彼は開幕戦でチェルシー相手にゴールを奪い、衝撃デビュー。そのプレースタイルに沢山のユナイテッドファンは心を奪われた。スールシャールもその1人だろう。しかし、そんな彼にも課題がある。それはスペースがあまり無い中でのプレーだ。彼のプレースタイルはチームが押し込まれている試合展開など、カウンターに転じる場合が多い状況では活きてくるものの、リトリートしてくる相手に対してのアイディアが豊富ではない。また、狭いスペースの中、激しいプレッシャーを受け、ボールをロストする場面も多かった。そのため、ブロックを敷いてスペースを消しにくるチームとの試合ではあまり良さを出すことができなかった。30節のトッテナム戦などがいい例だ。
それに変わって、ウッドは両利きと言われるほど、両足を高いレベルで使うことができるため、ディフェンスの間でボールを受け、相手からの激しいプレッシャーを受けてもそつなくプレーすることができる。そして何より、シュートが上手く、得点力がある。今節の先制点のシーンは圧巻だった。13得点も納得の数字である。最近の試合ではポグバ、ブルーノの共存により、ボールを支配している時間が長いゲームが多い。そんな試合展開ではウッドの方が適任であることは誰にでもわかるはずだ。そして、前節、今節と2戦連続で先発。コンパクトな敵のブロックでも、ディフェンスの間でボールを受け、ピッチの中央で、パスを散らすなどアタッカー、ゲームメーカーどちらの役割もこなせることを証明した。今節の3得点目はウッドのピンポイントクロスからの得点。1ゴール1アシストという素晴らしい結果を残した。
このウッドの活躍がジェームズの刺激になることは間違いない。リーグ戦7試合+カップ戦と過密日程ということもあり、両選手にチャンスが回ってくる。ジェームズも黙ってはいないだろう。これからのユナイテッドを引っ張っていくであろう2人のアタッカーがノリに乗ったチームをより加速させる。

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