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思想(哲学と宗教)

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価値観の学問そのものといって良い哲学、価値観そのものといってよい宗教を勉強する事で「価値観とは何か?」に迫りたいと思っています。
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2022年11月の記事一覧

『イスラーム 生と死と聖戦』中田考著 書評

<概要>中東の専門家としての外から目線のイスラームではなく、イスラーム教信者(ムスリム)にしてイスラーム法学者としての内から目線の著者が、ジハードの解釈含め、この世界はどのように解釈すべきなのか、をイスラーム教を知らない人(異教徒や無神論者等)向けに、わかりやすく解説した著作。 <コメント>これまでずっとイスラム教関連の著作を読んできましたが、すべてイスラーム教専門家や中東・アラビア専門家による著作だったので、今回は信者、つまりムスリムのしかもイスラム法学者の方が著した著作

すべては知覚から始まる:ヒューム著「人性論」

受講中の講義の課題図書『人性論』。今回は「第一編 知性について」。 『人性論』(人生論ではない)を著したのは、デイヴィッド・ヒューム(1711ー1776)というスコットランド人で、ルソー(1712−1778)やカント(1724−1804)にも大きな影響を与えたという、哲学者。 確かにカントの「物自体」という主観客観問題とは違った独特の主観客観問題を設定しているのですが、個人的にはヒュームの考え方の方が説得力があるように感じます。 私たちは誰しも、自分の持っている感覚器官

『イスラーム帝国のジハード』小杉泰著 書評

<概要>ジハードはもちろん、ジハードだけでなくイスラーム教とイスラーム社会、イスラーム国家についての歴史の概要と現代につながるイスラーム教の思想的立ち位置を紹介するイスラーム思想史専門家による「興亡の世界史」シリーズの著作。 <コメント>こちらも国際政治学者の福富満久先生紹介の本。引き続き通読。 ■ジハードについて「ジハード」というと、「聖戦」ということで我々日本人から見ると「イスラームのためにテロリストが自爆テロでなくなって天国に行く」という程度のイメージだと思いますが

『イスラームから世界を見る』内藤正典著 私評

<概要>イスラームからの視点で現状の国際状況をみるとどうなるか、非常に分かりやすく、かつ説得力のある内容で解説してくれる本。 著者自身、トルコ語を話すということもあり、アフガニスタンのカルザイ大統領含め、イスラム圏の有力者たちの直接インタビューの経験が豊富で、彼らから見たアラブの春、シリア内戦、アフガン問題やトルコ人によるアルメニア人大量虐殺事件、ムスリムのヨーロッパ移民たちの見方なども非常に興味深い内容。 また、近代国家の概念、民族という概念の経緯等、知識人としての基本