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思想(哲学と宗教)

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価値観の学問そのものといって良い哲学、価値観そのものといってよい宗教を勉強する事で「価値観とは何か?」に迫りたいと思っています。
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2019年10月の記事一覧

超予測力 フィリップ・E・テトリック

珠玉のキーワードが、溢れるばかりです。 ◼️自らの意見とは死守すべき宝ではなく、検証すべき仮説に過ぎない(積極的柔軟性) 事実が変われば意見を変える。多様な視点を大切にし、それを自らの視点に取り込む。可能性を多段階評価する。自分の思考に認知的、感情的バイアスが影響していないか確認する。システム2(※)を動員し、意識的思考によってシステム1(※)のもたらす無意識的かつ瞬間的な判断の過ちに気付く。 ※1:システム1=我々が意識せずに反射的に判断する領域。自動的に働く知覚的、認

(自由な)個人の虚構の行き先

現代日本や西洋民主主義国家の住人たちの価値観を形成する「虚構」は近代市民社会としての原理を「社会の虚構」として共有しているが、はてさて自由になった個人の行き先としての「(自由な)個人の虚構」について、竹田青嗣先生の「人間の未来ーヘーゲル哲学と現代資本主義」をベースに考えてみました。 まずは「社会の虚構」として 西洋では、近代社会以前はキリスト教の価値観によって社会が形成されてきたが、近代社会は「近代哲学」という新しい世界観によって、新しい意味と価値の世界を生み出した。近代

平和が大事といいながら敵を作ってしまうのは?

第2次世界大戦の時もそうだと思うが、戦争を煽り立て、戦争をしたがるのは、政治家や軍人というよりも、いつも世論・国民の側だ。 ここ最近の安倍首相批判も韓国嫌いもみんな同じ原理。敵を作って敵を叩いても何も解決しない。 哲学の世界では以下のように言われている。 何が「正しいか」「正解か」の根拠はどこにもなく、ただ私たちの間の合意にしかない(平原卓著「自分で考える練習」より)。 この言葉は、リヴァイアサンで有名なホッブスというイギリス人の言葉だそうですが、カントもヘーゲルも当

現象学における最も大切なワード「間主観的確信」

所詮人間は自分の外に出ることはできないので、自分の視点から、個々の他の人がこう確信しているという確信を確信していく、これが間主観的確信で、普遍的確信につながっていくものだ。 例えば、キリスト教福音派の人々は、彼らの間で「人工中絶は悪」という間主観的確信を持っている。 阪神ファンの人たちは、阪神ファンの間で「阪神の勝利=喜び」という間主観的確信を持っている。 近代の最大の発見とも言える科学的思考に基づく仮説(例えば1+1=2など)は、この間主観的確信によって、普遍的確信と

専門家を安易に信用しないこと

超予測力(フィリップEテトリック著)を読んで「専門家の予想は当たらないことが多い」という疑いようのない事実が載っているが、その理由というのが専門家の陥りやすい罠としてなるほどと思わせる。 専門家たちは、結局最初に自分の信念を決めてしまうと、その信念に従ってその論理を強化する方向に向かう。哲学の世界ではこれを「信念補強」というらしい。 「人は科学が苦手」(三井誠著)という本では、キリスト教信者は、その信念を強化する方に理論武装するし、共和党支持者は環境問題は懐疑的という方向