italkiでフルタイム日本語教師を1年やってみて
※この記事は有料記事となっていますが、無料でも最後まで読めます。駄文まみれの記事ですが、100円くらいなら払ってやってもいいという心の優しい方がいらっしゃったら、超ウェルカムです!
こんにちは。私は大学卒業後、日本語教師をやって、普通の会社に転職して、また日本語教師をやっています。
国内の日本語学校で働く日本語教師は多くいますが、オンラインでフルタイムで教えている人は私が始めた時はあまりいませんでした。手探りで試行錯誤を繰り返し、とりあえず1年間はフリーランスの日本語教師として生活できた経験があるので、同じような境遇にいる方や、これからフリーランス日本語教師を始めようとしている方に情報提供ができたらなと思います。
前提
フリーランス日本語教師である
私はitalkiというプラットフォームで日本語を教えているフリーランスです。italkiについては、他の方がブログやnoteでよく説明されているので今回は割愛いたします。
フリーランスといっても、日本国内の企業と契約を結んで外国人従業員に日本語を教えている方もいれば、国外の日本語学校の会話のみをオンラインで教えている方もいたりと、千差万別です。そもそもフリーランスの定義も曖昧なので、とりあえず今回はitalkiでの日本語レッスンのみで生計を立てていた時の私の話をします。
最近日本語教育に戻ってきた人間である
軽く私の経歴を話します。2020年に大学を卒業してから、海外でインターンシップをする予定だったのですが、コロナウィルスの影響で中止となり、同年秋に日本語教育能力検定試験を受験し、2021年の1月からitalkiで教え始めました。当初は父親の仕事を手伝う傍らでitalkiで教えていたのですが、ある程度レッスン数が安定してきたので父親の手伝いをやめ、italkiのみで生活していくようになりました。最終的には1年ほどフルタイム日本語教師をやっていたのですが、なぜか突発的に日本の会社で働いてみたくなり、一般企業に入社しました。職場の人間関係は良好で、仕事自体も割と楽しかったのですが、毎日同じ時間に出社して仕事をする生活が思っていたほど辛く、半年ほどで辞めてしまいました。職場の人たちは本当にいい人達ばかりだったので、今でも申し訳ないと思っています。
そして現在またitalkiでフルタイム日本語教師として頑張っている次第です。本格的に日本語教育に戻ってからまだ数週間しか経っていないので、これからどうなっていくかもここで共有していきたいと思います。
胸を張っておすすめできる働き方ではない
いきなり核心に迫ったような内容ですが、フリーランス日本語教師は客観的に見て良い働き方ではないというのが個人の意見です。
そもそも日本語教育業界自体、給与の低さや労働環境の劣悪さに関する噂が後を絶たないのに加え、フリーランスという不安定の働き方になると、相当のモノ好きじゃないとやっていけないと思います。
ただ、今この記事を読んでくださっている方は、そんなネガティブな情報を知った上でも私のような働き方に興味を持っている猛者たちだと思います。なので、「オンライン日本語教師は最高!!」みたいなことを伝える気はさらさらありません。むしろ、オンライン日本語教師の現実をここで伝えて、私と同じような働き方をするか迷っている人を引き留めようと思っています。それでもこの働き方に興味があるのであれば、それは適正があると思うので迷わず初めていいと思います。
働き方について思うこと
時間的柔軟性
フリーランス日本語教師という言葉を聞くと、割と時間に融通が利きそうという印象を持つかと思いますが、実際は思っているほどフレキシブルじゃないです。
フリーランスといっても様々な職種がありますが、日本語教師はフリーランスの職種の中では時間的柔軟性が低いです。例えば、プログラマーや動画編集者のような期日までに成果物を納品するような仕事は、締め切りさえ守れば、いつ・どれくらい働くかは個人の自由です。もちろんクライアントとの打ち合わせやチームミーティングのように、他者に労働時間を縛られるケースもありますが、割合としては低いです。
一方日本語教師はお客さんである生徒さんにレッスンをしている時間に対して対価が支払われる仕組みなので、労働時間が縛られるケースがほとんどです。よくYouTubeでフリーランスエンジニアが「やる気がない日はもう思いっきり休んで、次の日に大目に働いて帳尻を合わせることができます!」みたいなことを言っていますが、日本語教師の場合はそれができません。当日や前日キャンセルは信頼の低下につながりますし、収入もその分低くなります。
また、生徒さんは外国に住んでいる場合がほとんどなので、時差にも大きく影響されます。汚い話ですが、裕福な国を相手にした方が効率よく稼げます。そうなるとその国の活動時間に合わせてレッスンをする必要があるので、自ずと一日の中で働く時間が決められてしまいます。
しかし、やはり腐ってもフリーランスなので、正社員よりかは遥かに時間的柔軟性が高いです。生徒さんの合意が得られれば、レッスンのリスケジュールもできますし、長期休暇も取ることができます。働く曜日も自由なので予定も立てやすいです。
「一般的な会社員よりはフレキシブルだけど、あんまり期待しない方がいいよ」って感じです。
拘束時間
italkiのようなプラットフォームで活動するフリーランス日本語教師は、レッスンをした時間に応じて収入が決まるのですが、レッスンの時間数が実際に労働として拘束される時間と一致するとは限りません。
文法レッスンであれば、事前に文法について予習する必要がありますし、教材の準備もあります。また日程調整などの生徒さんとのやり取りもするので、1日1時間くらいは「無給労働」が発生します。ただ、フリーランスの場合、そのレッスン外の雑務を含んだ価格設定ができるので、捉え方は人次第です。
参考として、私のレッスン外の作業とそれぞれの一日当たりの必要時間はこんな感じです。基本的に週5日で働いており、休日は生徒さんとのやり取り以外の作業はしません。
生徒さんとのやり取り(日程調整、文法についての質問等): 5分
教材・教案のストック作成(※1): 20分
宿題の作成・配布: 10分
日本語について勉強(※2): 15分
※1
私は文法レッスンでは「まるごと」を使っており、他の教科書に比べ準備時間は少なく済むと思います。教科書をレッスンで使う場合は、一度教材・教案を作ると使いまわしができるので、一番進んでいる生徒さんに合わせて準備するだけです。1週間のどこか1日で、一番進んでいる生徒さん向けの教材をまとめて作るのですが、その作業時間を1日に均すと大体20分くらいです。
※2
「まるごと」に登場する単語や文法はなじみがあるのですが、それ以外の中級・上級文法は完全にノータッチなので、自主的に勉強するようにしています。特に会話レッスンだと上級の生徒さんが上級文法の質問をしてくることがあるので、それに対応できるように準備しています。
マニュアルがない
フリーランスで教える場合、教材や進め方などを決める裁量が100%あるので、教えるのが好きな人にとっては嬉しい環境です。
私は大学生時代、家庭教師や塾講師などの教育関連のバイトをしていたのですが、やはり基本的に会社が用意した教材やマニュアルがあり、完全に従う必要はなかったものの、あまり裁量はありませんでした。もちろん、企業が作ったマニュアルを見るのは勉強になりますし、先輩にアドバイスをもらうのもとてもためになったのですが、やはり自分のやり方でやりたいという気持ちもありました。
こんな私にとってはフリーランスで何かを他人に教えるのは楽しくてしょうがないです。ただ、逆に言えば同業者に自分の指導を見せる機会や情報共有の場がないので、意識して交流会やセミナーに参加しないと、鎖国状態になってしまうので気を付けたいところです。
お金について思うこと
不安定な収入
フリーランスの収入は安定しないなんてことは、耳にタコができるほど聞いてきたと思いますが、あえてここで私の方からも言っておきます。特に日本語教師の場合はそれが顕著だと思います。多くの場合フリーランスの契約は月単位や年単位、プロジェクト単位のように長期的なスパンで結ばれますが、italkiでフリーランスをやる場合は極端の話1時間の契約です。生徒さんが1時間のレッスンを予約し、レッスンに実際に参加、その後そのレッスンを「confirm」したらようやく1時間分の対価が支払われます。レッスンの予約数は1日8件ある場合もあれば1件しかない時もあり、また数日前にレッスンをキャンセルされる場合もあります。さらに、次回のレッスン予約をもらえる確約もありません。
ある程度軌道に乗ってきたら予約数の振れ幅も小さくなりますが、それでも月の収入は平気で数万円単位で変動します。なので、仮に毎月30万円稼ぎたいなら、33万円分くらいは働くつもりでないと、安定して希望の収入は見込めません。
会社勤めの恩恵
会社勤めであれば、税金、保険等の支払いに関する煩雑な処理は全て会社がやってくれますし、なんなら会社側が多少負担してくれます。しかし、フリーランスとして働くなら税金等の支払いは全額自分で済ませる必要があります。
また、ボーナスなんてないので、ボーナスシーズンになるといつも肩身が狭い思いをします。福利厚生ももちろんありませんし、社会的信用度も低いので賃貸契約やクレカ審査も難易度が上がります。
「フリーランスは会社員の2倍稼いでやっとトントン」なんて話を聞きますが、実際にフリーランスと会社員を経験して、会社勤めのありがたさを痛感しました。「会社に行くのが面倒くさいからフリーランスになる」みたいな生半可な気持ちでこっち側に来ると痛い目を見ます。
日本語教師なんて特にフリーランスの中でも大変だと思うので、茨の道を進む覚悟と、会社員の2倍稼ぐ自信が無いのであれば絶対にやめた方がいいです。
米ドル決済
これはitalkiなどの特定のプラットフォームに限られた話ですが、収入が米ドル建てであることはメリットの1つだと思います。米ドルは事実上の世界共通通貨ですし、当分は米ドルの価値が大きく下落することはないと思うので、日本円を稼ぐよりも安全な気がします。もちろん日本で生活している場合は稼いだ米ドルを日本円に換金する必要があり、その際に手数料が発生してしまうのですが、それを上回るメリットがあると個人的には思っています。
私は2021年にフルタイムの仕事としてitalkiで教えており、その時稼いだお金の40%ほどは米ドルのまま保持していました。2022年に一端Italkiを離れ普通の会社員になったのですが、その間にアメリカのインフレと円安が発生し、保持していたドルが数十万円ほど価値が上がりました。もちろんこれは私がラッキーだけであっただけで、今後も円安前提で計算するのはナンセンスですが、外貨収入があるとこのような臨時収入があるのが面白いです。もちろんマイナスに働くこともあると思いますが、米ドルの場合はその確率が低いということです。
昨今のアメリカの状況を見ていると一概に米ドルが良いとは言い切れなさそうですが…
手数料を払うか、自分で営業するか
生徒さんの集め方にもいろいろありますが、大別すると以下の3つがあると思います。
自分のウェブサイトやSNSで集客し、完全に個人でやる
italkiのようなプラットフォームを利用する
日本語学校、会社と契約を結ぶ
「フリーランス日本語教師」と名乗っている方は、2つ目のプラットフォームでの活動がメインであることが多いのではないでしょうか。名の知れたプラットフォームだと利用者も多く、レッスン料の決済や、トラブルがあった時の対処もしてくれるので、個人で活動している方にとってはありがたいです。
しかし、幾分か手数料を取られてしまうので、それを避けるために仲介の仕組みを一切使わず完全に個人でやってらっしゃる方もいますね。手数料はない代わりに、プラットフォームがやってくれることも全部自分でやらなければいけないというデメリットがありますが。プラットフォームに頼らずとも自分でやりくりできる能力やブランドがあれば、完全個人で活動した方がよいのですが、私は現状プラットフォームの恩恵をありがたく賜っている状況なので、涙を流しながら手数料をitalkiに払っています。
italkiの手数料は設定した料金に関わらず15%と決められています。一般的な感覚からすると15%は多いように感じるかもしれませんが、他のプラットフォームを見てみると30%、40%みたいなところもあるので、15%という数字は意外と良心的。しかし、これは飽くまで相対的な評価であって、単純に自分の収入から15%無条件で引かれるのは痛いです。仮に1か月で20万円分のレッスンをしたら、3万は手数料として払っていることになるので、だったらもう全部自分でやりくりした方がよいのではと思うこともあります。毎日こんな葛藤を抱えながら生きているのがフリーランス日本語教師です。
フリーランス日本語教師の将来性
飽和状態の日本語教師
これもitalkiに限った話になってしまいますが、italkiには日本語教師(チューター含む)が溢れかえっており、結果として行き過ぎた価格競争が発生しています。他の言語の料金相場を調べて統計的に分析したわけではありませんが、体感値として日本語レッスンの相場は低い印象があります。もともと「たくさんのお金を取ることは悪である」のようなマインドが日本にはあり(完全に個人の見解です)、それがさらに料金相場の低下を招いているのでしょうか。
そもそも言語教師は大金を稼げるような職種ではないかと思いますが、さらにそれがitalkiのような参入障壁が低い場だと、高い収入はもっと見込めなくなります。とりあえず日本語教師を始めてみるためや、日本語教師としての独立の第1歩としてやるのであれば良いのですが、長期的に働くためにはあまりにも不安定なので、お勧めできません。
つぶしが利かない
個人的な意見ですが、日本語教育大好き人間として言わせてもらうと、日本語教師はほかの業界や業種への転職が厳しい職種で、本当につぶしが利かない職だと思います。日本語教師であれば母語を教える難しさが分かるかと思いますが、世間一般の感覚だと、「日本人なら誰でも話せる日本語を外国人に教えている人」程度ですし、仕事上相手にするのは学習者という個人なので、法人相手に役立つスキルを習得しにくい環境です。
またフリーランスとして働いている場合は、会社という組織で働く経験を得にくく、また職務経験として見なされない場合が多くあると思います。特に私のような、会社と雇用契約を結んで仕事をするような形式ではないフリーランスは正式な職歴としては見なされず、VISAの申請時などに困ることが多々あります。
私が正社員に転職したときは25歳と比較的若かったので、難なく職を得ることができましたが、これから30歳、40歳と年を重ねていけばいくほど転職が難しくなるので、明確な出口戦略を準備しておく必要があります。
日本語の需要
日本語の需要が我々日本語教師の収入に直結しているので、日本という国に魅力がなければ日本語教師という職はなくなってしまいます。数十年前までは世界経済でも存在感がある国でしたが、平成以降は経済状況は右肩下がりで、とてもじゃありませんが明るい未来が待っているとは言えません。つまり日本語教育業界も衰退していく一方かと思います。
アニメやゲームのような経済とは関係ない部分もありますが、これもいつまで続くか分かりません。なので今10代~20代で日本語教師を志している方は一度考え直した方がいいかもしれません。かくいう私は26歳なのですが。
それでもフリーランス日本語教師を続ける理由
日本語教育が面白い
そもそも私は学生時代に塾や家庭教師をやるくらい教えることが好きでしたし、ボランティアで日本語を教えていた経験もあります。外国語にも興味があるので、日本語教育はとても魅力的な仕事です。
1人で全部やる面白さ
言語が好き、教育が好き、外国人に日本を伝えるのが好きというだけであれば、絶対に日本語学校や教育機関で働いた方がいいと思います。収入も安定しますし、社会的信用度も比べ物にならないほどあります。
それでもフリーランスという働き方を続ける理由は、1から100まですべて自分でできるからです。作業時間の管理から税金に関する雑務など、フリーランサーはやることが死ぬほどあります。フリーランスは努力が収入に直接繋がりやすいですが、何か問題があった時は誰も守ってくれません。なのに収入は安定しないなんて本当に馬鹿げています。でも全てが自分で完結するのは本当にやっていて楽しいですし、気が楽です(今はitalkiというプラットフォームにお世話になっているので完全に個人でやっている訳ではありませんが)。
この不便さや苦労を楽しめる人であればフリーランス日本語教師を1度でもいいのでやってみるべきです。
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