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(女の子に飲みの誘いを花粉症を理由に断られ)逃げる(ように風俗に駆け込むの)は恥だが役に立つ

役に立ちません。
花粉症つらいよね。わかるわかる。
仕方ないよね、本当に仕方ない、うんうんうん、、うん、、、
こんにちは、ぱにおです。

大好評『ぱにお逃げ恥ストーリー』シリーズも後編です。
前回はドラマならエンディング曲が流れ出しグワ〜っと盛り上がりを見せ、次回はどうなるんや!?と期待つのる感じで終わっていましたが、続きはいかに…

『ぱにお逃げ恥ストーリー 後編』

YちゃんからのLINEに気持ちを抑えられず、ネカフェを飛び出した僕。
勢いでYちゃんのマンションに向かって歩いたものの、夜風に冷まされ、LINEが返ってこなくなったこともあり、途中で引き返したのだった。
現実はそうそうドラマのようにはならない。

次会う約束もある。
何も焦る必要はない。
なにより過去一番の手応えがある。
それから数日間は無敵状態であった。
街中でカップルがイチャついているのを見ても「もうすぐ俺も…ふふふ」と余裕あふれていた。

2回目はスイーツバイキングへ行くことに。
向こうから「海遊館にも行きません?」と言われた。
女の子側から水族館誘われるのなんて初めて…!
これはいけるとこまでいったるからな…
まあ童貞はどこにもいけないのだが。

LINEのやり取りもこれまでにないほど流暢なやり取り。
これだよ、これ。これに憧れていたのだよ。
アラサーにもなって女子との良い感じのLINEに憧れを抱いていたことは置いといて。しまい込んで。封をして。

さて当日。
舞い上がる気持ちを抑え、平静を装う。
なんせ今日は2回目のデート。
マッチングアプリで知り合った女の子とは大抵、2回目のデートまでは漕ぎ着けるものの3回目に繋がらないことが多々あった。いや、多々々々々々々あった。
「々」って「クマ」を一文字にした感じで可愛くない?
つまりは2回目のデートは超大事。僕にとっては鬼門なのだ。

そんな不安をよそに移動時もスイーツバイキングでも超順調。
海遊館も超順調。
この雰囲気なら手をつないでもええやんね?ええね?いや、ええんかな?と手が何度も空を切る。
すぐそこにあるのに果てしなく遠く感じるYちゃんの手。

なんやかんやあり、いや特段大したことはなく、海遊館をスムーズに周り終わる。
海遊館前では大道芸をしていたので、足を止めて見ることに。
大道芸を見てはしゃぐ小さな子どもたちを微笑ましく眺めるYちゃん。を微笑ましく眺める僕。
微笑ましく眺めの無限ループに囚われた僕は、普段なら絶対にしないが、大道芸人に千円のチップも渡した。
「いつもはそんなことしないくせに〜」と言ってくる脳内の誰かに「エンタメにはお金を落としていかないと…」と弁明していると…
「観覧車乗りません?」とYちゃん。
え?童貞界では頂点でキスする乗り物と知られる観覧車?
観覧車乗りません?=キスしません?でしょ?
などと浮かれるも、アイドルのバスツアーで推しメンと観覧車と乗れたのにめちゃくちゃに盛り上がらなかったことが頭をよぎり、我に返る。
良い経験をしており本当によかった…本当に……

観覧車の苦い思い出との決別を果たすべく観覧車に乗り込む。
緊張が高度と共に上がる。
ここで行動しなければ廃れきった男が更に廃れ散らかす。
向かい合って座っていたので、まずは横に座る僕。
向かいの席に逃げるYちゃん。
避けられた…!?
しかし、この程度で折れてはいられないのが僕である。
…と言いたいところだが、この程度でポッキリ折れるのが僕である。
すっかり戦意を喪失してしまったのだ。
もう一押し、二押しの足りなさ。
結局、観覧車では良い雰囲気になることもなく、新たな苦々しい観覧車エピソードを作り上げるに終わった。

帰りの電車では「今度は花火とかできたらいいよね〜!」と憧れに憧れていた好きな人と二人きりで花火の現実味も帯びた。
なら告白は花火の時がベストでは…?

一夏の思い出に彩りを添える線香花火
自然と近づく距離
静かに消える線香花火
目と目が合う
熱く見つめ合う二人
そっと重ねる唇
もうそこに言葉はいらない

視えた。これだ。
次回、『ぱにお、漢になる』。
信頼度80%オーバーの次回予告(パチンコ)である。
神様、ありがとう。

「今日しちゃいます?」

…!!夢想に溺れかけていた僕は現実に引き戻された。
今日…!?
これってゴール前で目の前にボール転がってきた状況だよね?
経験値0の僕でも流石に分かる。
後はゴールに蹴り入れるのみ。

「いいね!しようしよう!」
…とは言ったものの、告白って何て言えばいいんだ?
「付き合ってください」…?いや、固いか…?
「付き合っちゃう?」…?いや、軽いか…?
間をとって「付き合わへん?」…?こ、これか!いや、本当にこれか…?

大差ない言い方に迷っている間に晩飯も食べ終え、花火も買い、気付けば河原に着いてしまった。
花火を選ぶ時とかめちゃくちゃ楽しい時間だったはずがほとんど記憶にない…
付き合わへん?付き合わへん?付き合わへん?付き合わへん?
脳内で何度も何度も声のトーン、抑揚、ボリュームを入念に確認して練習を繰り返す。

まずはロウソクを立て、風避けの厚紙をセッティング。
風でなかなか上手くいかないが、二人で和気藹々と作業する。
はっ!?これはもしかして初めての共同作業…!?え?結婚?告白の言葉は「付き合わへん?」ではなく「結婚してください」では?参った…参ったぞ…あんなに「付き合わへん?」を練習したのに…
夢にまで見た好きな子との花火を心から楽しめずに時間は過ぎていく。
ただ、花火の煌めきごしに見えるYちゃんは花火よりも眩しく輝いていたことだけは脳裏に焼き付いている。

あっという間に花火を消化し、線香花火の時が訪れる。
あとは次回予告をなぞるのみ。

一夏の思い出に彩りを添える線香花火
自然と近づ……かない距離
静かに消える線香花火
目と目が合……わない
熱く見つめ合う……ことなく片付け始める二人
そっと重ねる……はずが重なりようのない焦りに震える唇
もうそこに言葉はい……るいるいるいるいるめちゃくちゃ言葉いるぞ、おい何しとんねん、ぱにお


神様、話が違うじゃないか…
完全にタイミングを逃してしまっていた。
だ、だ、だが、、ま、まだだ。
アディショナルタイム(帰り道)がある。

「ちょっとあの公園で話さへん…?」
「暗くて怖いからちょっと、、」


何とか絞り出した一言が涼やか初夏の夜の空を切った。
空振りどころか、暗がりで何か変なことしようと企んでると思われた疑惑浮上。
やばいやばいやばい。
もうYちゃんのマンションに着いてしまう。
やばいやばいやばいやばい。
道端だが、もう言うしかない。
場所もシチュエーションも知ったこっちゃない。
今言え。すぐ言え。これで言えんかったらもうおしまいだ。早く言うんだ、僕。

「あのさ………つ、付き合わへん…?」
「……うん、いいよ。」


エンダアアアアアアアアアアアアアアイアアアアアアアアアアアアウィルァアルウェイズラァァァァビュウウウウウアアアアアアアアアアアアア
大人の余裕皆無の軽く詰まりながらの告白、アラサー童貞の弾ける初々しさにむず痒さが催される趣き深さがありますね(寸評)。
いや、告白の寸評など今は不要。

僕に彼女ができたんだ。

この日のことは一生忘れないだろう。
駅の改札で別れ際、調子に乗って抱き締めよう(今まで最も嫌悪していたカップルの所作)とするも断固拒否されたことは早く忘れたい。

これからラブラブキャッキャッウフフな青春ストーリーが始まるわけだ。
「30歳で童貞?ww魔法使いじゃんwww魔法使ってみてよwww」と煽られる未来の惨劇も回避できるわけだ。
と、まあそんな順風満帆な恋物語は僕の専門外なわけで…
青くない春、むしろ青すぎて真っ青な春のストーリーがこれから紡がれていく。


続く

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